「世界若者農業サミット」にて農業リーダー3名選出 プロジェクトに奨学金も

「世界若者農業サミット」(Youth Ag Summit)の「Thrive for Change賞」(変革に向けた前進)の受賞者として、持続可能な世界の農業に積極的に取り組む3人の若きリーダーが選出された。

今回の選出者は、ボリビアのブルーノ・フェレイラ氏、ナイジェリアのチディンマ・エゼ氏、アルゼンチンのエミリアーノ・バルベロ氏の3名。彼らにはThrive for Changeプロジェクトのアイデアを実行に移すための支援として、5000ユーロの奨学金が授与される。

農業問題を解決するためのアイデアを交流


世界若者農業サミットは、持続可能な農業と食糧安全保障を支え、生産者と消費者との相互理解をサポートする若きグローバルリーダーのコミュニティ。2年に1度、100名の代表団が選出され、サミットに参加している。


今年で5回目となっており、過去の開催国はカナダ、オーストラリア、ベルギー、ブラジル。今回のサミットは、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する規制の影響により、初の完全なバーチャルプログラムとして開催された。2021・2022年版のプログラムパートナーは、国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)と、そのデジタルプラットフォームおよびネットワークプロバイダーのBabele社が務め、YASとそのアイデアインキュベーターであるYAS大学が実施、ドイツ・バイエル社もサポートしている。

2021年秋にオンラインで開催されたグローバルサミットでは、全大陸の45カ国から18歳から25歳までの代表者100人が選出され、世界中で先進的な取り組みを行っているソートリーダーから学んだり、地球上で直面している問題を解決するためのアイデアを交換した。

今回の参加者100人は2000人を超える応募者から選出され、YAS大学のプログラムとして一人ひとりに、Thrive for Changeプロジェクトのアイデアを実現するためのトレーニングやメンタリングも実施。この100人の中には日本からも1名選出されている。


ドイツ・バイエル社の経営委員会委員にしてクロップサイエンス部門代表のロドリゴ・サントスは、「この若きリーダーたちは、地域社会や世界全体の食糧安全保障の課題に取り組むにあたって大きな変化をもたらすために必要な情熱を持って、私たちのプログラムに参加しました。彼らは、農業を変革し、何百万人もの人々の生活を向上させるための具体的な計画を手にして、今、出発するのです」と述べた。

受賞した3名のプロジェクト概要



エミリアーノ・バルベロ氏が受賞したThrive for Changeプロジェクトは、生命に最も重要な要素の1つである「水」の改善に取り組むもの。

「BluTechは、有用な微細藻類を利用して、人々の生活を危険にさらす水域の栄養素汚染を除去するものです。そうすることで、水質の改善に貢献すると同時に、飢えに苦しむ地球により多くの、そしてより良質な食糧を供給することができます」とバルベロ氏は述べた。

チディンマ・エゼ氏のプロジェクトは、アフリカでの農業生産者の格差を是正する取り組みだ。

「特にアフリカにおける農業従事者の不平等は、農業生産に関する知識の大きな格差から生まれています。奨学金は、農業従事者に野菜の生産に必要なツールと技能のトレーニングを提供する私のプロジェクト、FarmCASの拡大に使われます」

そして、ブルーノ・フェレイラ氏のプロジェクト「Probá」は、Food Bank of Bolivia(ボリビアフードバンク)のブランチプロジェクト。ボリビアの食品廃棄、栄養不良、農業従事者の貧困という問題を解決する、3つのインパクトをもたらすアップサイクリング生産工場だ。

「栄養価の高い食品を必要としている人たちのために、この工場が動き出すのが楽しみです」と述べている


2022年の受賞プログラムでは、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて変化をもたらそうとする参加者の情熱を共有する講演者も登場した。Borlaug財団の会長ジュリー・ボーローグ氏とThirst財団のCEO ミナ・グリ氏は、彼ら新世代のチェンジメーカーたちがより良い持続可能な世界を築き上げていく上で、どのような行動が必要なのかについて、それぞれの見識を語った。

なお、最終候補者となった12人にはノートパソコンまたはタブレットが贈呈された。これらは「すべての人に健康を、飢餓をゼロに」が実現する世界の構築に向けて、12人のインパクトプロジェクトを創造する能力をさらに高めるために役立てられるという。



世界若者農業サミット
https://www.bayer.com/en/agriculture/about-youth-ag-summit-0
選抜メンバー100名の紹介
https://www.bayer.com/en/agriculture/youth-ag-summit-2021


SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
パックごはん定期便