立命館ら、土壌分析と地域資源を活用した有機農業の促進に向け共同研究をスタート

学校法人立命館、株式会社SOFIX、NTT西日本グループ、ナガセケムテックス株式会社、シン・エナジー株式会社、株式会社タックジャパンの6者は共同で、地域資源を活用した有機農業の促進モデルを確立して、持続可能な食と農の地域循環システムを構築する実証研究を滋賀県で開始した。研究期間は2022年10月18日~ 2023年3月31日まで。

地域資源を活用した有機農業の促進モデルの概要図

SOFIX分析技術を活用


今回の実証研究は、6者が締結したコンソーシアム型共同研究契約に基づき開始したもの。

研究では、土壌肥沃度指標(Soil Fertile Index)を用いた土壌分析方法であるSOFIX分析技術を活用して、地域経済の活性化や脱炭素に寄与する食と農の地域循環システムの実現に必要なバリューチェーンの各課題を検討していく。

実証研究の範囲

実証研究の内容と各者の役割は以下の通り。

実証研究の内容

1.SOFIX分析技術による土壌分析・施肥設計
目標
・SOFIX分析技術を活用して、土壌や堆肥の状態を数値で見える化することで、勘や経験に頼らない再現性のある農業を実現する。
実施内容
・土壌の情報や環境関連データを蓄積し、分析の高度化・高速化を行うことで、分析精度の向上を図ると同時に、農家にとって最適な施肥設計を提供できるか検証していく。
ICTを活用した分析業務の効率化を行うことで、みどりの食料システム戦略の分析需要に対応した体制を構築できるか検討していく。

2.地域資源を活用した農業資材の製造・販売
目標
水草・畜産排出物等の地域資源を活用した、高機能な有機資材を提供することで、有機作物栽培における収量と品質の安定を実現する。
実施内容
・SOFIX分析技術による土壌診断・施肥設計に基づいた高機能な有機資材の製造方法の確立を進めると同時に、有機資材の元となる地域資源の持続的な供給方法を検討していく。
・有機資材を用いた場合の生産量や食味、堆肥コストを慣行農業と比較することで、農家単位での有用性や収益性の向上が図られているか検証していく。

3.地域資源を活用した農作物の流通・販売支援
目標
化学肥料や農薬の影響が少ない「安全性」や土壌の品質を担保した「信頼度」を付与した農作物の高付加価値化を図ることで、生産者と消費者の最適なマッチングを促す有機農業市場の発展を実現する。
実施内容
・「地域資源を活用した」という認証やトレサビリティ、生産工程追跡技術等の活用検討を進めることで、農作物の高付加価値化が実現可能か検証していく。
・地域のホテル、学校、事業者等を対象に、具体的な意向調査等(作物品種・物量・供給時期など)を実施することで、地域資源を活用して栽培した農作物の流通・販売が可能か検証していく。

4.地域循環型社会で活躍する有機農業人材の育成
目標
SOFIX技術や営農データを用いたデジタルコンテンツによる農業教育を通して、新規就農者の増加や既存農家の生産性向上を図り、持続可能な産業を実現する。
実施内容
・持続可能な食と農の地域循環システムに寄与する教育・育成プログラムを作成することで、新規就農者および非慣行農業への転換拡大に向けた効果と影響を検討していく。
・有機農業指導員や既存の有機農業従事者を対象にした現地指導や研修を実施することで、儲かる農業体質への転換サポートが実現可能か検証していく。

5.有機農業バリューチェーンにおけるデジタルトランスフォーメーション
目標
・地域資源を活用した土づくりから農作物の流通、販売までのバリューチェーンをICTの力で効果的、効率的に結び付け、食農分野に多彩な価値を創出する。
実施内容
・ICTを活用した食と農の地域循環システムの構築と全国展開に必要な手法を検討することで、具体的な社会実装が可能か、有機農業面積の拡大・化学肥料低減にどの程度寄与できるか検証していく。
・今回の実証実験で検討した仕組みやモデルにスマート農業など先端技術を活用した新たなサービスを複合することで、バリューチェーンを一貫させたサービスモデルの創出を検討していく。

各者の役割

学校法人立命館
・地域資源を活用した農業資材の研究環境の整備、有機農業人材の育成プログラム検討。
SOFIX
・SOFIX分析技術の提供、土壌分析・施肥設計のデータベース構築。
NTT西日本グループ
・土壌分析・施肥設計のデジタル化による分析の高度化・高速化の検証、バリューチェーン構築におけるDX推進化の検討、有機農作物の流通・販売方法の検討。
ナガセケムテックス
・微生物系資材の提供および微生物資材を用いた有機資材の高度化検証、微生物資材と組み合わせた有機資材の製造・流通・販売方法の検討。
シン・エナジー
・バイオマス資材の提供およびバイオマス資材を用いた有機資材の高度化実証、有機資材の製造・流通・販売方法の検討。
タックジャパン
・畜産系資材の提供および畜産系資材を用いた有機肥料の高度化実証、有機資材に必要な畜産系資材の効率的な調達方法の検討、有機資材の流通・販売方法の検討。

実証研究のフォーメーション

6者は、今回の実証研究を通じ、みどりの食料システム戦略の実現に向けた取り組みに貢献したい考えだ。


学校法人立命館
https://www.ritsumeikan-trust.jp/
株式会社SOFIX
http://www.sofix.co.jp/
NTT西日本グループ
https://www.ntt-west.co.jp/
ナガセケムテックス株式会社
https://www.nagasechemtex.co.jp/
シン・エナジー株式会社
https://www.symenergy.co.jp/
株式会社タックジャパン
https://tacjapan.co.jp/
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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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