農機具へ「後付け」で自動運転が可能に 準天頂衛星みちびきを活用したユニット開発スタート

ドローンなど無人機の自動運転プログラムを手がけるイームズロボティクス株式会社と、多彩かつ高度な衛星測位技術で位置情報を得る受信機を開発するマゼランシステムズジャパン株式会社は、準天頂衛星みちびきを活用した自律走行ユニットの共同開発をスタートさせた。

ユニットの「後付け」で農機具の自動化を実現

両社が開発を進める自律走行ユニットは、「後付け」による自動運転を可能にしたシステム。既存の電子制御がなされていれば、新たな自動運転のシステム開発を必要とせず、大小関わらずどんな走行車両にも搭載できることが最大の特長という。

マゼランシステムズジャパンの多周波対応GNSSアンテナ

草刈り機や除雪機、小型耕運機など、あらゆる農機具への活用が期待されており、エンジン駆動タイプ、バッテリー駆動タイプなど動力源が異なる場合でも、操作系が電子制御化されていれば搭載できる。

自動運転プログラム×準天頂衛星「みちびき」



運転は、準天頂衛星「みちびき」のL6信号を受信し、タブレット(Windows対応)でルートを構築。走行モードのほか、指定した範囲のジグザグ走行や、特定のポジションでの停止、旋回などのアクションが可能になっている。

自律走行ユニット参考動画

中小農機具メーカーへの提供


電子制御化された農機具はメーカーごとに制御方法が異なるため、自動運転を実現するためのサービスメニューも用意している。エンジニア立ち会いのもと、搭載方法の検討や電気信号の受け渡し方法など十分な協議をしたうえで実装を進める構えだ。

生産は福島県にあるイームズロボティクス本社で予定されており、 2020年には量産体制を整え農機具メーカー各社へ専用品として販売していく方針だ。

農林水産省が定める自動運転技術の水準レベル

農林水産省では、農業用機械の自動運転における技術水準をレベルによって定義している。

レベル0:走行や作業、非常時の緊急操作などすべての操作をオペレーターが手動で実施する手動操作。
レベル1:慣性計測やGPSなどを備え、直進走行など操作の一部を自動化した搭乗状態での自動操舵
レベル2:有人監視下での自動化・無人化。
レベル3:オペレーターがモニターなどで遠隔監視し自律制御を行う完全無人化。

自動運転機能を搭載したトラクターなど、大手の農機具メーカーではレベル2程度までの自動運転を実現しているが、中小の農機具メーカーのほとんどは、開発力や資金力の課題からレベル1にも到達できていない現状にある。

両社は今後も双方の親和性と強みを生かし、中小メーカーでも搭載できる高精度で正確な自動運転システムの開発を進めていく考えを示している。


両社の自律走行ユニットは、2019年10月9日~10月11日に催された「第9回農業Week」イームズロボティクスブース内でもプレス発表された。

<参考リンク>
イームズロボティクス株式会社
マゼランシステムズジャパン株式会社
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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