国連食糧農業機関(FAO)、 「世界農業白書2019」を公開 食料ロス削減にインセンティブ活用も

国際連合食糧農業機関(FAO)は、食料ロスの効果的削減に向けた適切な対策の特定に役立つ、収穫後から小売の前段階までの食料ロスの新しい推定値を示した「2019年度世界食料農業白書」を発表した。

シエラレオネ・カバラでキャベツを栽培する農家。シエラレオネ・カバラでキャベツを栽培する農家(写真:FAO)

FAOは、すべての人々が栄養ある安全な食べ物を手に入れ、健康的な生活を送ることができる世界を目指して活動する国連機関のひとつだ。

  1. 飢餓、食料不安及び栄養失調の撲滅
  2. 貧困の削減とすべての人々の経済・社会発展
  3. 現在及び将来の世代の利益のための天然資源の持続的管理と利用
の3つを主要なゴールと定め、現在約3400人の職員がイタリアのローマ本部を含む130カ国以上の国や地域で活動をしている。

「2019年版世界食料農業白書」の概要


2019年10月14日に発行した2019年版世界食料農業白書では、サプライチェーンのさまざまな段階において「どれだけの食料が、どこで、なぜ無駄にされたか」を明らかにすると同時に、効果的な削減のための呼びかけや、進捗を測定する新しい方法が示されている。

報告書にはこれらの新たな情報を活用することで、
食料ロスや廃棄を削減するという重要なターゲットの達成に役立つだけでなく、食料の安全保障と環境の持続可能性に関連する数多くの持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献する。
と記載されている。

食料ロスの決定的な箇所を特定


報告書では、食品間やサプライチェーンの各段階、地域など、ロスや廃棄の割合には大きなばらつきがあると指摘。一般的には穀物や豆類よりも果物や野菜に多く、農場や東アジア、東南アジアにおける輸送・収穫段階で発生している。

原因には、不十分な貯蔵施設や処理方法が挙げられており、果物や根茎・塊茎作物においては包装や輸送もロス発生の決定的な起因のひとつだとしている。

さらに現在では、インフラや貯蔵施設に不安を抱える低所得国のみならず、先進・高所得国でも技術的な故障や温度・湿度の管理不備、過剰在庫等によるロスも増加の傾向にあり、収穫してから小売に達するまでの段階で世界の食料の約14%が失われているとも報告されている。

インセンティブによる食料ロス・廃棄の改善案も


利害関係者はロスや廃棄削減の利点を認識していても、実行に移すことを妨げる制約に直面することが多く、特に小規模農家は財政的支援がなければ高価な初期費用を負担できないのが現状だ。

報告書では、サプライチェーン上のさまざまな利害関係者へのインセンティブ(ここでは「追加報酬」や「報奨金」といった意味)による改善案や選択肢を講じる必要性が指摘されており、供給者と消費者の意識啓発や行動、政策などに影響を与えていく考えが示されている。

各国には、あらゆる段階での根本的原因に取り組む努力や、食料ロス・廃棄を減らすための政策と介入のための指針も提示。「政策措置には一貫性が必要であり、既存の行動や取り組みの説明責任を果たすために、介入策に対する効果的なモニタリングと評価が組み込まれるべき」と述べられている。

FAO事務局長 屈冬玉氏コメント
「8億2000万人が空腹な中でどうして食べ物を捨てられるだろうか」


報告書の序文ではFAO事務局長である屈冬玉氏が、
「食料ロス・廃棄削減への前進の努力は、その取り組みが問題の確固たる理解に基づいている場合にのみ、真に効果的です」
と述べている。

また、
「世界中で8億2000万人以上が空腹をかかえている時に、どうして我々は食べ物を捨てることができるのでしょうか?」
と問いかけている。

FAOでは今回の報告を踏まえ、国際的な食料ロス削減のためにどのような介入が可能かを特定し、今後も各国に対し貴重な指針を提供していく構えだ。


<参考URL>
国際連合食糧農業機関(FAO)
2019年版世界食料農業白書(英語版)
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WRITER LIST

  1. 川島礼二郎
    川島礼二郎(かわしまれいじろう)。1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  2. 蒼井ネコ
    農学系の兼業ライター。某大学農学部、某農業レストラン、某飲料会社商品企画を経て、現在は某マルシェアプリでwebマガジン編集として働きながら、猫様のお世話をしている。
  3. 大坪雅喜
    おおつぼまさのぶ。1973年長崎県佐世保市生まれ。FARM DOI 21代表(農業者)・アグリアーティスト。 早稲田大学第一文学部史学科考古学専修卒業。学生時代に考古学、水中写真、自然農という世界を覗き込む。2006年9月、義父が営む農業の後継者として福岡県大川の地で就農。農業に誇りを持ち、未来には普通となるような農業の仕組みやサービス(カタチ)を創造していくイノベーションを巻き起こしたいと考える。縁のある大切な人たち(家族)と過ごす物心ともに満たされた暮らしの実現こそが農業経営の最終的な目的。現在、佐賀大学大学院 農学研究科 特別の課程 農業版MOT 在籍中。
  4. 柴田真希
    管理栄養士。㈱エミッシュ代表取締役。Love Table Labo.代表。27年間悩み続けた便秘を3日で治した雑穀や米食の素晴らしさを広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メー カーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。『私は「炭水化物」を食べてキレイにやせました。』(世界文化社)、『はじめての酵素玄米』(キラジェンヌ)など著書多数。
  5. 大城実結
    おおしろ みゆう。フリーランス編集ライター、大城文筆事務所所長。一次産業ほか地域文化、アウトドアなどお天道様系分野を専門に編集・執筆している。自転車で鍛えた脚力を活かし、農家さんのお手伝いをしながらインタビュー取材を積極的に行う。玉掛け免許と床上式操作クレーン免許所持。