土壌微生物活性による手法「八百結び農法」でサツマイモ基腐病を克服、実施圃場拡大へ

壌結(つちむすび)合同会社は、錦フロンティアコーポレート株式会社共同で、土壌微生物を活性させる環境再生型農法である「八百結び農法®(やおむすびのうほう)」によって、鹿児島県南大隅町の圃場におけるサツマイモ基腐病を克服したと発表した。この成果を受け、2024年度は実施圃場を拡大するという。


土壌微生物を活かす環境再生型農法で基腐病克服を実現


壌結は、土着微生物の活性によって土を発酵させる新しい土づくりの方法を実践する企業で、「八百結び農法」という環境再生型の農法ブランドを展開している。

錦フロンティアコーポレートは、鹿児島県内で地方創生に取り組む企業だ。

鹿児島県が全国生産量1位を誇るサツマイモは、近年、カビの一種である糸状菌により引き起こされる「サツマイモ基腐病」による深刻な被害が報告されていた。

サツマイモ基腐病は、感染するとサツマイモの地際部の茎が黒変し、病徴が進んで葉や茎が枯死した後、芋が腐敗する病害だ。他の病害に比べて感染力が強く、短期間で被害が拡大し、多発した圃場では大幅な減収が見られるなど重大な被害をもたらすという。

対策としては、病原菌を「持ち込まない」「増やさない」「残さない」の3つが柱となっており、総合的な取り組みが重要とされ、「種芋圃場は栽培終了時まで徹底的に薬剤で防除する」ために、各県において防除対策をまとめた「防除暦」などが整備されてきた。

薬剤による消毒・防除は、少なからず土壌微生物にもダメージを与えるが、八百結び農法は消毒を行わず、土壌微生物を活性させる環境再生型の農法だ。

今回、土壌微生物を活性させる方法を用いて、サツマイモ栽培を実行した結果、土壌微生物の活性によって生物多様性を取り戻した土壌において、サツマイモ基腐病の発生を防ぐことができたという。


同日撮影の両圃場の様子

慣行栽培区では、防除をしたものの一部基腐病が発生し、発病株の抜取りを行ったためマルチが見える状態となった。

一方八百結び農法区では、定植日や株間などの条件は同じものの、葉は青々とした色を保つなど生育における違いが確認できた。

収穫されたサツマイモの様子(1株分)

なお、収穫されたサツマイモは一定期間貯蔵されるが、栽培協力した生産者からは、収穫から半年が経過しても「八百結び農法区で収穫されたサツマイモは、他の圃場で収穫されたサツマイモと比較して、腐れが出ることなく良質な状態を保っている」との報告が上がっているという。

2023年度の実証栽培の結果を受け、2024年度は八百結び農法区を約3haに拡大し、再現性の確認に入る予定だ。地元大隅エリアでは「八百結びの産土®」の増産が完了していて、対象圃場への散布を開始した。


八百結びプロジェクトでは、地域の畜産農家が排出する糞尿や家庭用生ゴミなど、本来廃棄される有機物を独自のバイオスティミュラントと掛け合わせて付加価値の高い農業用資材を生成し、地域土壌の微生物活性量の見える化を行うことで、地域農家の無農薬栽培、減農薬栽培をサポートしている。

今後は、農林水産省の「みどりの食料システム戦略」内で掲げられている「土壌微生物機能の完全解明とフル活用による減農薬・肥料栽培の拡大」「耕畜連携による環境負荷軽減技術の導入」「バイオスティミュラントを活用した革新的作物保護技術の開発」への貢献を目指していくとしている。


壌結合同会社
https://yaomusubi.com/
錦フロンティアコーポレート株式会社
https://ykubo1785.wixsite.com/nishiki
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
パックごはん定期便