衛星データ活用による農業行政DXの推進に向け、LAND INSIGHTと福島・南相馬市再生協が業務委託契約を締結

LAND INSIGHT株式会社は、福島県の南相馬市地域農業再生協議会と業務委託契約を締結した。衛星データを活用したデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)による農業行政の業務効率化を実現していくとしている。


衛星データを活用した現地調査などをサポート


LAND INSIGHT株式会社は、衛星データを活用して第一次産業などにおける地域課題を解決する事業を開発することを目的に、2022年4月に設立されたINCLUSIVE株式会社の子会社だ。同社と福島県南相馬市は、2023年度に実証実験を行っており、その成果を基に南相馬市再生協と業務委託契約を締結した。

衛星データを活用した現地調査の負担軽減支援や、GIS(地理情報システム)で使用するデジタルデータの作成、南相馬市再生協が利用する各システム等とのデータ連携のサポートを行っていく。

現地調査とは、農業者が提出する営農計画書に基づき、水田で主食用米以外の作物が作付けされているかを現地で確認する転作確認業務のことで、南相馬市では毎年8月に約3万筆の農地を目視で確認し、調査結果を集計していた。

このように、農業行政では、自治体や関連機関が農地に関する独自の台帳情報を持ち、目視による現地調査を実施しており、これらの台帳の多くは紙で管理されているという。

こうした調査業務は人的稼働の負担が大きく、デジタル庁による試算では、関連台帳の更新や紙地図の準備、調査員の実施調査、データ集計等を含めて、1地方公共団体で年間約4900万円、国全体で年間約820億円のコストが発生しているとされている。

同社は、2023年度の実証実験の結果から、衛星データの活用や台帳情報等のデジタル化を推進することで、コストを半分まで圧縮することが可能であると試算している。また、夏に行われる現地調査の実稼働が軽減されることで、調査員の熱中症リスクの低減も見込まれ、自治体関連職員の労働環境の改善につながることが期待される。

2024年3月に実施された衛星リモートセンシングデータ利用タスクフォース大臣会合では、2024年度からの3年間を各府省の業務における「民間衛星の活用拡大期間」と定める方針が決定された。全国的な人口減少・少子高齢化の進行に伴い、生産年齢人口が急減することが予想されるため、行政業務への衛星データの活用は今後さらに進むと予想される。

LAND INSIGHTは、今回の南相馬市での取り組みを起点として、東北や北関東などの近隣地域、そして全国での農業行政業務への衛星データ活用の取り組みを広げていくとしている。


LAND INSIGHT株式会社
https://landinsight.space/
INCLUSIVE株式会社
https://inclusive.co.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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