サカタのタネとアリスタが協業、海藻由来のバイオスティミュラントを販売開始

株式会社サカタのタネは、農薬大手のUPL社のグループ会社であるアリスタ ライフサイエンス株式会社と協業を開始し、UPL社が開発した海藻由来のバイオスティミュラント「GAXY(ギャクシー)」を2024年6月6日に販売開始した。価格は1リットル2万6400円(税込)。全国の種苗店、農業資材店、JAなどを通じて営利生産者向けに発売する。


粘度が低く、少量で効果を発揮し、農薬との混用も可能


バイオスティミュラントとは、植物生理に作用し、高温乾燥・低温などの環境ストレス耐性、栄養吸収、代謝の促進、光合成活性化などに寄与する農業資材。近年、異常気象による農作物の収量低下などを背景に、世界的に利用が拡大している。

化学肥料や農薬削減への潮流もあり、従来の栽培方法とは異なるアプローチが求められる中で、日本でも農林水産省みどりの食料システム戦略」に明記されるなど、認知が広がっている。

バイオスティミュラントは、農業の現場では古くからその考え方や資材が経験的に使われており、サカタのタネでは1988年に発売の「バイテクバイオエース®」、2011年に発売の「サカタGB」など、今ではバイオスティミュラント資材とされる資材を30年以上前から販売している。

バイオスティミュラントは、農薬や肥料と比べて現場の優先度が低いという課題があるが、GAXYは他社商品と比べて薬剤費、作業コストを軽減でき、気軽に生産者が利用できるという。

特に、現在日本でも活用が広がっているドローンで散布できる点は大きなメリット。一般的な海藻系バイオスティミュラントは粘度が高いため、ドローンの機体によっては詰まりやすく、散布に向かないとされている。

一方、GAXYの原料である海藻抽出物GA142は、不純物の除去に成功したことによりゲル化沈殿の問題が生じにくく、海藻系のバイオスティミュラントの中では粘度が低いためドローンでも活用できる。ドローンによる散布が可能となったことで、広い面積で栽培していることの多いコムギなど穀類への活用も期待されている。

また、多くの農薬と混用できることが確認されている。

GAXYは、環境ストレスの緩和、肥料要素の吸収促進、光合成能力のサポートなど、多くの品目の課題に寄与するという。通常行っている農薬散布の際に混用散布するだけでも、天候不順などへの備えになり、収量低下のリスク低減が可能だ。


アリスタ社が大玉トマトの栽培試験を行った結果では、GAXY施用により、上図のように肥料要素吸収を改善できることが示された。特に、高温環境で吸収が阻害されやすいホウ素やカルシウムの吸収効率改善が期待でき、肥料と併せて施用することで、高温障害改善への寄与が期待される。

白ブドウに対する果実肥大効果の比較試験では、果実サイズの均一化に寄与し、市場評価につながることが期待されている。



サカタのタネは、毎年全国各地で品種の栽培に関する講習会を行う中で、バイオスティミュラント活用についても現場の課題に即した提案を行っている。また、バイオスティミュラント商材販売実績があるため、各品目への活用方法や会社内での人材など、多くの蓄積があるという。

世界的な農薬大手であるUPLグループは、バイオスティミュラント開発においても優れた製品・技術開発力と普及推進力がある。

今後は、サカタから同社に生産現場のニーズや活用方法などの情報を提供し、それらを基に日本の農業の課題解決につながる新しいバイオスティミュラント商品の共同開発を計画している。

アリスタ ライフサイエンス株式会社 マーケティング本部 本部長 田中 栄嗣氏のコメント
UPLグループは、世界中に5拠点の研究開発施設、研究開発や取り組みを発信する拠点、7拠点の実証試験圃場、9拠点の専用生産施設を持ち、製品紹介や現地実証試験をサポートする専門技術者を世界に派遣し、バイオスティミュラントの普及推進に向け、販売パートナーと農業生産者へのサポートを充実させ、ビジネスをリードして参ります。環境ストレス対策でご利用いただけるバイオスティミュラント剤を含め日本農業に貢献できる資材開発を引き続き注力して参ります。
株式会社サカタのタネ 上席執行役員 国内営業本部長 齋藤 弘佳氏のコメント
当社はバイオエースや高機能液肥 サカタマモルシリーズなど、BSの名称が世界に広まる前から数十年にわたって生産現場の課題解決に取り組んでまいりました。今後アリスタ社との協業により、従来から蓄積したノウハウを駆使した解決策の提案が可能になります。また、さらなるバイオスティミュラント資材の共同開発にも取り組み、生産現場の課題解決につながるものと確信しております。

両者は、GAXYをバイオスティミュラント活用の入り口とし、国内生産現場での利用拡大を目指すとしている。


アリスタライフサイエンス株式会社
https://www.arystalifescience.jp
株式会社サカタのタネ
https://www.sakataseed.co.jp
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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