東京理科大学、ローズ精油を利用したトマトの害虫防御技術を開発

東京理科大学先進工学部生命システム工学科の有村源一郎教授らの研究グループは、ローズ精油がトマトの葉の防御遺伝子の発現量を増加させ、害虫抵抗性を向上させることを明らかにした。また、ローズ精油には害虫の捕食性天敵を誘引する効果があることも見出した。

植物の病害抵抗性につながるバイオスティミュラントや、新たな有機農法システム開発への貢献が期待される。

図 本研究の概要

トマト害虫の捕食性天敵を誘引する効果も


精油は植物由来の芳香性成分を含む天然素材で、化粧品や食品などさまざまな分野で活用されている。

精油は人体への影響がほとんどなく、さまざまな生物活性を通じて人間の健康に良い効果を発揮することが報告されていて、ペパーミントから精製した精油には抗炎症作用などの効果があり、これらは精油に含まれるテルペノイドの効果であることが知られている。

また、精油は、害虫に対する忌避剤としても有用で、植物の防御反応活性化を通じた害虫防除効果が期待できる。

ダイズと小松菜をミントの近くで栽培すると、葉の防御特性が大幅に増加し、pathgenesis-related gene 1と呼ばれる防御遺伝子転写が誘導される。これらの反応は植物間のコミュニケーションとして知られていて、ミントが放出する揮発性有機化合物(VOC)に植物が反応することで生じ、その影響を受けることで病原体や害虫に対する防御メカニズムを強化できるというものだ。

これらの現象を農業の害虫対策として活用するため、同研究グループは精油に含まれるテルペノイドがトマト栽培に及ぼす影響についての調査を行った。

11種類の異なる植物精油の希釈溶液を鉢植えのトマト土壌に施用したところ、β-シトロネロールを豊富に含むローズ精油がトマトの葉の防御遺伝子PR1の活性化に重要な役割を果たすことが確認された。

ローズ精油処理を行うことによって、ハスモンヨトウによる葉の食害、ナミハダニによる葉への産卵が大きく減少することも確認。

さらに、ローズ精油溶液はチリカブリダニなどの害虫の捕食性天敵を誘引する生理活性を有することが示唆された。

野外研究にて3日ごとにトマト栽培の土壌をローズ精油で処理すると、対照溶液と比較して自然発生する害虫による被害が54.5%にまで減少することも実証されたという。

なお、研究では1×10 5倍希釈したローズ精油を利用したことから、低濃度での使用が可能であることも示された。

研究を主導した有村教授のコメント
植物は害虫によって傷つけられると、大気中にVOC、つまり匂いを放出し、周囲の未食害植物の病害虫抵抗性を高める、植物間コミュニケーションを図ります。私たちはこの現象を農業の害虫対策につなげる研究に取り組んできました。今回発見したローズ精油は低濃度での使用が可能であり、一般的な農薬とは異なり、植物の潜在的な防御力を高める資材であることから、環境に配慮された新素材として期待されます。


論文情報

雑誌名:Journal of Agricultural and Food Chemistry
論文タイトル:Novel potential of rose essential oil as a powerful plant defense potentiator
著者:Eiki Kaneko, Kenji Matsui, Ruka Nakahara, Gen-ichiro Arimura
DOI:10.1021/acs.jafc.3c08905
URL:https://doi.org/10.1021/acs.jafc.3c08905


東京理科大学
https://www.tus.ac.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    さとうまちこ
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    北島芙有子
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    川島礼二郎
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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