AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」からエントリーモデルとハイエンドモデルが登場

株式会社ルートレック・ネットワークスは、エントリーモデルとしてリモートで潅水施肥を行える「ゼロアグリLite」と、ハイエンドモデルとして統合環境制御が可能な「ゼロアグリPlus」をリリースした。より多くの農業生産者の要望に応えることができるようになり、気候変動に適応した農業の生産性向上に貢献するという。


生産者の要望に応えた2つの新モデル


株式会社ルートレック・ネットワークスは、2010年に総務省広域連携事業の「ICTを利活用した食の安心安全構築事業」に採択されたことを契機に、明治大学黒川農場との共同研究を開始し、スマート農業事業に参入。2013年にはAI潅水施肥システム「ゼロアグリ」の販売を開始した。

ゼロアグリは、土壌センサーや日射情報から作物にとって最適な潅水、施肥量をAIが算出し、最適なタイミングで実施するスマート農業システム。生産者の省力化だけでなく、作物にストレスのない潅水施肥により、収量や品質の向上が期待できる。

また、AIが最適な量の潅水施肥を行うことで気候変動に適応できるほか、多施肥を防ぐことによって、化学肥料による地下水汚染やCO2排出削減にもつながるという。

これまでに全国46都道府県の農家・農業試験場にて累計400台以上導入され、多くの農業生産者の作業効率化や生産安定に貢献してきた。一方で、生産者からは「もっと安価に、手軽に導入できるものが欲しい」「地上部の制御まで1つのシステムで管理したい」といった要望があり、ゼロアグリLiteとゼロアグリPlusのリリースに至ったという。

それぞれの特徴は以下の通りだ。

ゼロアグリLite


ゼロアグリのエントリーモデルであるゼロアグリLiteは、センサーレスで自動制御可能な潅水施肥システム。従来のモデルと比較して、土壌センサーによる制御機能がなくなり、より安価に抑えられているため、まずはリモートによる自動潅水を試してみたいという人におすすめだという。

ハウス栽培だけでなく、露地栽培での利用も可能で、土壌センサーや気象センサー、地上部センサーもオプションで付けることが可能。

1.センサーが不要な予報日射比例制御による潅水

晴天時に供給したい潅水量を設定することで、予報日射量に応じて潅水量の自動調整が行える。センサーレスでありながら、タイマー潅水よりも精密な潅水を実施できるほか、必要に応じてマニュアルで設定することも可能。

予報日射比例の仕組み

2.スマホで簡単に設定変更・確認可能

ゼロアグリの動作はすべてクラウドから制御しているため、潅水施肥量の調整や栽培情報などはすべてスマホで確認でき、農繁期や出張時なども安心して栽培管理が行える。


3.ゼロアグリへのアップグレードが可能

より高度な制御を行いたい場合は、AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」に有償でアップグレード可能。その際、新しく制御盤を入れ替える必要はなく、土壌センサーを追加するだけで対応できる。

システム全体図

ゼロアグリPlus


ゼロアグリのハイエンドモデルであるゼロアグリPlusは、潅水施肥の管理のみならず、天窓・側窓の開閉やカーテン・循環扇・加温機・CO2施用機といった、地上部の環境制御まで行える統合環境制御システム。

また、既に導入されている既存の環境制御機器と連動することも可能で、最小限のコストで導入できる拡張性の高い製品となっている。

1.管理画面を1つに統合し利便性を向上

従来のモデルでは、地上部と地下部で別々の管理画面を見なければならず、設定の手間がかかるなどの声があったという。この課題を解決するため、1つの画面上で環境制御を行えるようになった。

管理画面イメージ

2.複数の制御盤を統合し、コスト削減

施設園芸で環境制御機器を導入する場合、導入している環境制御機器ごとに、それぞれ制御盤が必要となるため、機器ごとのコストと通信費用がかかっていた。

ゼロアグリPlusでは、各種制御盤を1つのシステムにまとめ、コスト削減と設置スペースの最小化を実現し、経営資源の効率化を図ることが可能になった。

なお、接続対象の環境制御機器の仕様によっては、制御盤が必要となるケースもあるという。


3.スマホで遠隔管理が可能

潅水施肥管理のみならず、地上部の環境制御についても、スマホで遠隔管理が行える。

現状管理が可能な環境項目

4.対応機器や機能の継続的なアップデート

対応可能な環境制御機器は、現状実績のあるものから、ニーズに合わせて順次アップデートを実施する。また、制御可能な環境項目や機能についても、継続して研究開発を行うことで、利用者は常に最新のソフトを使えるという。

システム全体図

比較表

今回のリリースにより、生産者は経営状況や課題、実現したいことに合わせて、必要なモデルを選ぶことが可能になった。

さらなるデータ活用型精密農業への移行や栽培規模の拡大など、営農状況が変わった場合にも、導入した制御盤はそのまま使用できるという。また、ソフトウェアのバージョンアップとセンサーや接点ボックスを追加するだけで機能アップグレードも可能だ。


株式会社ルートレック・ネットワークス
https://www.routrek.co.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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