「みかんのドローン防除委託で収益アップ」の理由 【アグリポン 柑橘ドローン防除事例2026・前編】

2025年、和歌山県有田市の早和果樹園が、株式会社オプティムと連携して、ドローンによる防除作業を委託。労力軽減・作業時間の大幅短縮に加えて、ある園地では大幅な収益アップにつながったという結果が明らかになりました。


今回は再び早和果樹園 生産部の方々に、2025年のドローン防除の具体的な成果と手応え、現場で感じた課題などを後追い取材しました。

特に気にされていたのは、ドローン防除と手散布の効果の違いと、みかんの品質への影響です。果たしてどのような結果になったのか、1年間の実践で見えたポイントを前後編にわたってご紹介します。

お話をうかがった、早和果樹園 生産部の楠さん(写真右。当時は山中さん)と仲さん(写真提供:東林真以)

「農薬散布が楽になる」ことの大きなメリット


夏場のみかん栽培において、農薬散布は欠かせない作業のひとつ。30度をこえる気温のなか、防護服(カッパ)を着て、ホースを片手に園地を歩き回る作業は、身体的な負担も小さくありません。

いま、こうした作業を農業用ドローンで行う動きが全国で増えています。しかも、自社でドローンを購入したりパイロットを用意せず、専門のドローンパイロットに任せる「農作業委託サービス」として実現する例が出てきました。

そんなドローン防除委託サービスを実施した早和果樹園が、最大のメリットとして挙げたのは、農薬散布にかかる作業員の労力の削減です。

ドローン防除で働くのはドローンとパイロットのみ。早和果樹園の職員は立ち会いも必要ありません。作業を委託することによって、社員に時間的・肉体的負担をかけずに済むことが現場にとって大きなメリットだと、早和果樹園の楠さんは語ります。

「2025年は、6カ所200aの園地に、場所によって2〜3回ずつドローン散布を実施してもらいました。例年よりも環境的に過熟による傷みや病害虫被害が少なく、単純にドローン防除の成果だけとは言えませんが、ドローン散布を行った園地では一定の効果が見られました」

楠さんが最も気にしていたのは、手散布とドローン散布の違い。手散布では希釈した薬剤がしっかりかかるようにチェックしながら散布しますが、ドローン散布では一定の高さから撒くだけで完了。18時間かかっていたものが1時間で完了と、拍子抜けするほどの時間だったことが、かえって不安にもなっていましたが……。

効果としては手散布と同等かそれ以上と言っていいと思います。手散布より効果が落ちると思っていたのですが、フタを開けてみればいい結果が出ました」

写真提供:早和果樹園
散布した6カ所の中で、公平に比較できそうな4つの園地の加工柑率(収穫した中でみかんとしてそのまま出荷できなかった率)は前年と比べていずれも改善が認められました。そして、削減できた時間で、例年よりも丁寧な摘果の作業を行いました。

「果実を間引いていいみかんを育てるための摘果は、みかんの品質に大きく関わる作業のひとつです。防除にかけていた時間をこれまで以上に摘果に割けるようになったことは、売上アップにもつながったと思います」

ドローンによる防除委託に切り替えることは、農薬散布を省力化するだけでなく、品質を高めるための作業に時間を振り向ける手段にもなり得たようです。
 
なお、2025年の取り組みの具体的な導入効果・分析結果が気になる方は、株式会社オプティムのウェブサイトから参照可能です。
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「雨の前に散布したい」という適期防除にも手応え


写真提供:早和果樹園
作業を委託する側に立つと、気になるのは散布のタイミング。みかんの防除では、「いつ散布するか」が非常に重要です。雨が降る前、病害虫の発生が予測された時期などの“適期”は園地ごとでも異なります。総面積1000aを管理する早和果樹園ともなると、手散布で回るにはどう考えても時間的に限界があります。

実際、これまでもスプリンクラーなどを活用しつつも、適期に回り切れないこともあったそうですが、ドローン防除を効率的に散布できる園地の分担がしやすくなったといいます。

「ドローン防除を委託したことで、ドローンでできない園地でも適期に散布できたのもよかったですね」

1園地あたりの作業時間は、18時間かかっていたものが1時間で完了するという時間短縮も可能に。適期の中でのスケジュールにも、柔軟に対応できた点も評価されていました。


急斜面の園地で見えた、ドローン防除の大きなメリット


写真提供:早和果樹園
今回の取り組みの中で、特にドローン防除の恩恵を感じたのが、仲さんが栽培を担当した急斜面の園地での手応えでした。

急傾斜地は、作業者が園地内を移動するだけでも大きな負担になるため、ドローン防除に切り替える価値がより見えやすくなります。仲さんとしても、当初のドローン防除への不安を上回る結果が得られたと語っています。

「最初は自分もドローンに懐疑的だったんです。ですが、担当した園地では、思っていた以上にきれいなみかんができて、正直ドローンのことを見直しました」

60aのこの園地の収益だけで、昨年と比べ、約200万円の売上増加を達成したとのこと。こうした手散布の負担が大きい園地ほど、ドローン防除は有力な選択肢になると言えそうです。


ドローン防除委託の拡大に向けた課題とは?


ドローン防除に際して早和果樹園が行うのは、事前に散布する農薬をドローンパイロットに渡すことのみ。あとはオプティムとパイロットだけで作業を行い、散布が終了すると、いつどれくらいの量を散布したかの終了報告を受けます。

では、こうしたドローン防除を地域へ広げていくために、どのような課題があるのでしょうか。

後編では、日程調整、パイロット不足、コスト、園地条件、そして農作業代行サービス「アグリポン」によるドローン防除を委託する前に知っておきたい現実的なポイントをうかがいます。

後編の記事はこちら。

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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