農水省と農研機構、2021年度の「スマート農業実証プロジェクト」31地区を採択

農林水産省農研機構は、「2021年度スマート農業実証プロジェクト」の委託予定先事業を決定し、31件の委託予定地区とその概要を公開した。2019年度は69件、2020年度は52件だった。

スマート農業実証プロジェクトは、これまで全国148地区で展開。2021年度(令和3年度)は、農政上の重要課題に対応した5つの実証テーマに基づいた取り組みを公募し、応募総数85地区のうち31地区を採択した。

栽培技術から農政上の実証テーマへ取り組みが変化


「スマート農業実証プロジェクト」 は、農林水産省と農研機構が2019年に開始したスマート農業に関する実証プログラム。

2020年度までは具体的な栽培品目がテーマとなっていたが、2021年度は「輸出」「新サービス」「スマート商流」「リモート化」「強靭な地域農業」という5テーマが挙げられ、栽培技術よりも農業で収益を上げるための販売や新たな取り組みを重視したかたちだ。



「輸出」は海外ニーズに合わせた輸出重点品目等の生産・出荷体制の構築がターゲット。山形県の柿、山梨県の桃、静岡県の抹茶、熊本県のいちごの収穫や流通にスマート農業を導入する取り組みが採択された。

「新サービス」ではシェアリング等の新たな農業支援サービスの活用をテーマに、イオンアグリ創造株式会社による広域スマート農機シェアリングや、広島県での多品目広域連携で実現させる「AaaS(農業版 MaaS)」によるAI農機シェアリングのほか、岐阜県でのクリから始まる果樹産地発展モデルなど、リソースの共有によるコスト削減などが注目されている。

需要変化対応や、生産・消費の連携等で実現する「スマート商流」は、長崎県でのwithコロナ対応型地域内新流通の構築とカンキツの計画出荷によるスマートフードチェーンの実証、ぐるなび株式会社が取り組む産地・実需データを活用した生産・出荷体系といった、データを活用してロスの少ない商流に関するプロジェクトがある。

「リモート化」は、コロナ禍による「新しい生活様式」に対応したリモート化・超省力化に関するテーマ。ドローンロボットトラクターを活用した遠隔監視や制御などが特徴で、丹波地域における有機野菜栽培のリモート化など。

そして、持続可能な地域農業を構築するたーめの「強靭な地域農業」では、通年対応のスマート水管理や、自動走行ロボットによる鳥獣害対策、中山間地向けの技術体系の確立などがテーマとなっている。

なお、2021年から始まる委託予定先31地区のうち、「輸出」は3地区、「新サービス」は9地区、「スマート商流」は6地区、「リモート化」は8地区、「強靭な地域農業」は5地区となっている。


令和3年度「スマート農業実証プロジェクト」の採択について|農研機構
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/naro/046430.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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