スマート農業の「ガラパゴス化」を回避せよ──データプラットフォーム「AgGateway Asia」が始動
農林水産省系の研究機関である農研機構が2019年4月から本格的な運用を始めた、農業のデータプラットフォーム「WAGRI」(ワグリ)。同じような目的を持った組織としては、2005年に「AgGateway」(アグゲートウェイ)が北米で設立されている。
それから13年後の昨年10月、そのアジア版である「AgGateway Asia」が国内でひそかに誕生していた。WAGRIが始動する裏でなぜ同じような狙いを持つ組織をつくったのか。
ただし、問題はシステム間の相互連携がほとんどないことだ。メーカーによってデータの形式が異なり、それらがバラバラに存在しているような状況にある。このため利用者にとってみれば、データを収集し、管理や分析して、営農に役立てるのに時間も手間もかかる。
この悩みを解消することを目指すのがWAGRIだ。会員となる民間企業や官公庁などが持っている気象や土壌、農地、市況など営農に関するあらゆるデータを整備。同じく会員となる農機メーカーやICTベンダーは、一連のデータをWAGRIから取り出して、利用者である農家らに役立つサービスを提供する。
そしてようやく昨年10月、日本の研究者らが中心となってAgGateway Asiaを設立した。とはいえ、当時すでに国内ではWAGRIが試行的に始動していた。それなのにAgGateway Asiaを設立したのは、日本のガラパゴス化を避け、国際標準化に対応することが狙いにある。
たとえば、トラクターと作業機の接続互換性を高めるため欧米を中心に広がっている国際標準に「ISOBUS(イソバス)」がある。最近になってトラクターと作業機は相互にデータを交換するようになった。代表的なのは、地力に応じて肥料の散布量を変えていく可変施肥。その緻密な調整をするうえで、トラクターの速度と散布量は密接にかかわっているので、作業中のデータ連携が欠かせない。
ただ、トラクターと散布機のメーカーが異なると、それが叶わない。そこでデータ連携するために定めた国際標準が「ISOBUS(イソバス)」である。
AgGatewayは国際標準があれば取り入れるし、なければ自らつくっていくつもりでいる。そういう意味では、まずは国内標準化を進めるWAGRIとは異なる。こうした観点からすると両者は対立しているように見受けられるが、それは正しくない。4月半ばに都内で開催されたAgGateway Asiaの設立イベントで理事の二宮正士氏(東京大学名誉教授)は「どちらか一つを選ぶという話ではない」「使える方をどんどん使っていく。そういう発想が大事」としている。
AgGateway Asiaをつくったもう一つの理由としては、国際標準に日本の意見を反映してもらうことがある。二宮氏はこう語った。
「まだまだ策定されていない標準がいっぱいある。とくにアジアのモンスーン地域での水稲がそうだ。AgGatewayに参加することでどんどん意見を反映させることができるだろう」
<参考URL>
AgGateway
農業データ連携基盤協議会 -WAGRI協議会-
それから13年後の昨年10月、そのアジア版である「AgGateway Asia」が国内でひそかに誕生していた。WAGRIが始動する裏でなぜ同じような狙いを持つ組織をつくったのか。
データの相互連携を促進
農業でもここにきてICTやロボットで商品が続々と販売され、さまざまなデータの収集ができるようになった。農水省が今年度からスマート農業の開発や普及の事業を予算化したことで、これからその動きは加速するとみられる。ただし、問題はシステム間の相互連携がほとんどないことだ。メーカーによってデータの形式が異なり、それらがバラバラに存在しているような状況にある。このため利用者にとってみれば、データを収集し、管理や分析して、営農に役立てるのに時間も手間もかかる。
この悩みを解消することを目指すのがWAGRIだ。会員となる民間企業や官公庁などが持っている気象や土壌、農地、市況など営農に関するあらゆるデータを整備。同じく会員となる農機メーカーやICTベンダーは、一連のデータをWAGRIから取り出して、利用者である農家らに役立つサービスを提供する。
狙うは国際標準化
AgGatewayも目的とするところはほぼ同じだ。会員には農機や農薬、肥料などのメーカーに加え、物流やソフトウェア、プロバイダー関連の民間企業が名を連ねる。2005年に北米で誕生して以降、欧州やラテンアメリカ、ニュージーランド/オーストラリアなどでも地域支部的な組織が発足。世界で200社以上が会員となっている。そしてようやく昨年10月、日本の研究者らが中心となってAgGateway Asiaを設立した。とはいえ、当時すでに国内ではWAGRIが試行的に始動していた。それなのにAgGateway Asiaを設立したのは、日本のガラパゴス化を避け、国際標準化に対応することが狙いにある。
たとえば、トラクターと作業機の接続互換性を高めるため欧米を中心に広がっている国際標準に「ISOBUS(イソバス)」がある。最近になってトラクターと作業機は相互にデータを交換するようになった。代表的なのは、地力に応じて肥料の散布量を変えていく可変施肥。その緻密な調整をするうえで、トラクターの速度と散布量は密接にかかわっているので、作業中のデータ連携が欠かせない。
ただ、トラクターと散布機のメーカーが異なると、それが叶わない。そこでデータ連携するために定めた国際標準が「ISOBUS(イソバス)」である。
AgGatewayは国際標準があれば取り入れるし、なければ自らつくっていくつもりでいる。そういう意味では、まずは国内標準化を進めるWAGRIとは異なる。こうした観点からすると両者は対立しているように見受けられるが、それは正しくない。4月半ばに都内で開催されたAgGateway Asiaの設立イベントで理事の二宮正士氏(東京大学名誉教授)は「どちらか一つを選ぶという話ではない」「使える方をどんどん使っていく。そういう発想が大事」としている。
AgGateway Asiaをつくったもう一つの理由としては、国際標準に日本の意見を反映してもらうことがある。二宮氏はこう語った。
「まだまだ策定されていない標準がいっぱいある。とくにアジアのモンスーン地域での水稲がそうだ。AgGatewayに参加することでどんどん意見を反映させることができるだろう」
<参考URL>
AgGateway
農業データ連携基盤協議会 -WAGRI協議会-
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