ISOBUSの普及により、これからは作業機がトラクターを制御する時代へ【特集・北の大地の挑戦 第11回】

ISOBUS仕様の農機は、トラクターが積載している作業機を電子制御しているのが現状だ。


「ですが、2019年11月10日(日)~16日(土)にドイツ・ハノーバーで開催される世界最大の農機展『アグリテクニカ2019』では、トラクターと作業機の双方向の制御を可能にする基準『TIM』をクリアした機械が大々的に披露されると聞いています」

こう語るのは、ISOBUS普及推進会の事務局・とかち財団ものづくり支援部の田村知久課長。作業機がトラクターを電子制御すると何ができるのか、「アグリテクニカ」の様子とは――。

前回に続いて、田村課長へのインタビューを紹介する。


人の作業ペースに合わせてトラクターの車速を変更

――作業機からトラクターを制御すると何ができるのでしょう。

作業機からトラクターの前進速度や油圧弁などの操作を、自動で制御できるようになります。北海道でこの機能に特に注目しているのは、ばれいしょと畜産の関係者です。

まず、ばれいしょについて説明しましょう。ポテトハーベスターで収穫していると、人が機上で選別する場所まで、不良品の芋や石などの夾雑物(きょうざつぶつ)が一緒に上がってきます。夾雑物が多いと選別に時間がかかるので、走行速度を遅くしたい。逆に少なければ速くしたい。そのためには夾雑物の量に関するデータをつかむ必要がありますが、トラクターではそれができません。だから収穫機のほうでそのデータを把握しながら、必要に応じてトラクターに走行速度を変えたり止めたりするよう指示しなくてはいけません。


これはポテト・長いもプランター(種まき機)でも同じです。人が種芋をプランターに供給する速度には、個人差があります。それに配慮しながらトラクターの走行速度を変えるよう、プランター側から指示できるようになるわけです。

――畜産で開発が期待されるのは?

牧草のロールベーラーですね。牧草を刈り取り、ある一定の量になったらロール状にして自動で搬出できるようになるでしょう。

現状は牧草を満載したらセンサーが検知してオペレーターに伝えます。オペレーターはいったん停車し、ロールベーラーを排出するようタッチパネルを使って手動で指示します。これを何度も繰り返すので、手間がかかるんですね。作業機からトラクターに直接指示できるようになれば、オペレーターは楽になります。


作業機からトラクターを制御する時代に

――作業機に合わせてトラクターを動かすという、逆の発想が必要なのですね。

作業機からの電子制御は農作業の自動化にとって欠かせないことだと考えています。

これまで自動化や無人化はロボットトラクター(通称、ロボトラ)の開発ばかりが話題になってきました。しかし、ロボトラが登場しても、あらゆる作業を自動化することはじつはできない。トラクターだけ自動化されても、作業は自動化できないことは、いま説明した通りです。

あくまでも作業ベースでトラクターをコントロールしないといけないので、やはりコントロールのマスターになるのは作業機なのではないかと思います。

――「アグリテクニカ2019」で、TIM仕様の機械は披露されましたか。


それが、残念ながらTIMの解禁が2019年12月だったので、今回(11月開催)の「アグリテクニカ2019」では公開しないようお達しがあったようで、大々的に披露されることはありませんでした。

ただ、展示場を回ると「TIMReady」という札が張られた、つまり“TIMの基準をクリアする準備が整った商品”がありましたね。搬送用の機械やロールベーラーなどです。おそらく、次の国際農機展で大々的に披露されるでしょう。

※ ※ ※

スマート農業は一枚の田畑や作物の状態に応じた栽培管理を目指している。そのためには、ISOBUSは当然ながら無視できない大きな課題である。

国内で先駆を切ってその普及や対応する機械の開発に乗り出したISOBUS普及推進会の動向は、これからも随時紹介していきたい。

<参考URL>
ISOBUS普及推進会|公益財団法人とかち財団
アグリテクニカ2019(英語サイト)
【特集】北の大地の挑戦~スマート農業の先進地にみる可能性と課題
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WRITER LIST

  1. 川島礼二郎
    川島礼二郎(かわしまれいじろう)。1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  2. 蒼井ネコ
    農学系の兼業ライター。某大学農学部、某農業レストラン、某飲料会社商品企画を経て、現在は某マルシェアプリでwebマガジン編集として働きながら、猫様のお世話をしている。
  3. 杉山直生
    すぎやまなおき。1988年生まれ。愛知県で有機農業を本業として営む。「伝えられる農家」を目指して執筆業を勉強中。目標は、ひとりでも多くの人に「畑にあそびに行く」という選択肢を持ってもらうこと。「とるたべる」という屋号で、日々畑と奮闘中。
  4. 柴田真希
    管理栄養士。㈱エミッシュ代表取締役。Love Table Labo.代表。27年間悩み続けた便秘を3日で治した雑穀や米食の素晴らしさを広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メー カーや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。『私は「炭水化物」を食べてキレイにやせました。』(世界文化社)、『はじめての酵素玄米』(キラジェンヌ)など著書多数。
  5. 大城実結
    おおしろ みゆう。フリーランス編集ライター、大城文筆事務所所長。一次産業ほか地域文化、アウトドアなどお天道様系分野を専門に編集・執筆している。自転車で鍛えた脚力を活かし、農家さんのお手伝いをしながらインタビュー取材を積極的に行う。玉掛け免許と床上式操作クレーン免許所持。