農業未経験の女子大生がなぜ農業の道に?【目指せレモン農家! 槇紗加の農業奮闘記 第1回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、はじめまして。レモン農家研修生の槇 紗加(まき さやか)と申します。

レモン農家になるため、神奈川県小田原市の矢郷農園で修行中の23歳です。普段は、レモンだけでなくオレンジやみかんなどの柑橘類、キウイフルーツ、オリーブ、梅などを育てています。

今回、私が新規就農するまでの道のりや日頃の農作業の様子をみなさんに届けるため、コラムを執筆することになりました!

第1回目は、農業未経験の女子大生だった私がなぜ農業の道に進んだか、その理由をご紹介します。


農業は、遠い存在だった


現在レモン農家を目指して修行中の私ですが、元々農業には縁がなく、農家さんは関わる機会のない遠い存在でした。

非農家のサラリーマン家庭に生まれ、大学時代は教育学科で幼児・児童教育を専攻。大学3年生から就職活動を始め、一般企業に内定をいただきそのまま就職をする予定でした。

しかし、内定先で実際にインターン生として働いてみるうちに、段々と「自分にはこの働き方は合わないかも」と感じ始め、内定を辞退させていただくことになりました。

そうして、将来どうしていくか路頭に迷っているときに、偶然「農業」に出会うことに。この経験が、私の人生を大きく変えました。

農業の研究をしている知人の紹介で農家さんの元に遊びに行く機会があり、人生で初めてプロの農家さんにお話をうかがったのです。

おうかがいしたのは新潟のお米農家さん。自然と向き合いながら生き生きと働く姿に、非常に心を打たれました。

また、高齢の農家さんが次々に引退する中での担い手不足・耕作放棄地の増加などの現状を知り、農業は若者にとってチャンスの多い業界なのではないかと考えるようになりました。

農業と聞くと、「肉体労働でしんどい」「休みがない」「稼げない」などあまり良くない印象を持つ方も多いと思います。特に、私と同じ世代の若者がポジティブな理由で就農するケースを聞く機会も非常に少ないのが現状。

それを逆手にとり、ライバルの少ない環境でみんながやりたがらないことをあえてやることで活躍できると確信しました。

「農業」という仕事に惹かれた私は、農家になるには何をすればいいのか必死に調べ始めました。

まず、農家になるための手順を調べ、就農までに何を調べるべきなのか整理。

整理した結果、農家になるためには、まず
1.何を育てるか
2.どこで育てるのか
3.どこで学ぶか
の3点が重要であるという結論に至りました。

大学4年の秋、矢郷農園に出会う前に農家さんめぐりをしていたときの写真

農業を始めるには、ロマンだけでなく「そろばん」も必要


上で述べた3点のうち、まずはじめに「1.何を育てるか」を考えました。

新潟で出会ったお米農家さんの影響で耕作放棄地の分野に興味があったため、耕作放棄地が多いと言われている中山間地域で農業をしたいという思いが強く、山で多く育てられている果樹を中心に調べ始めました。

生まれ育った土地である神奈川県を離れたくないという思いが強く、神奈川県内で育てられる果樹をすべて洗い出し、その中から選ぶことに。まず、選んだ品目のなかで、金銭面での比較を行いました。

私が大事にしている言葉のひとつに「ロマンとそろばん」という言葉があります。耕作放棄地で農業をしたいというロマンだけでなく、持続的な農業を行うためにそろばん(金銭面)の部分を徹底的に考え抜こうと決めました。

そこで調べたのが、洗い出した品目の「農業経営指標」です。

農業経営指標とは、各県が提示している経営面積当たりの売上高や収量等の目安のこと。経営指標をもとにそれぞれの収支計画を比較していった結果、最終的にレモンに絞ることができました。

その後、レモンについて徹底的に調査した結果、産地の割合や適切な土壌、販路の状況などの情報から、レモン農家として新規就農を目指すという結論に至りました。

次に考えたのが「2.どこで育てるか」です。

レモンについて調べているうちに、神奈川県内でおいしくレモンを育てられる土地として小田原を見つけ、小田原の属する西湘地域で農業をすることに決めました。

「農地法」という壁


最後に、「3.どこで学ぶのか」についてです。

農業について調べる前まで、農家はすぐになれる職業だと思っていました。しかし、農家にとっての基礎である農地を手に入れるには、最低1年の農業研修が必要だったのです。この決まりを「農地法」と呼びます。

私が就農する予定である神奈川県小田原市では、

  • 農業または農業法人等で最低2年間、農作業(研修)に従事した実績が証明できること。
  • 神奈川県立かながわ農業アカデミーの学生である場合は、研修期間は1年間で就農が可能。

という条件があります。

この条件を見た私は、短い期間で農家になれる方がよいと思い、神奈川県にある農業大学校「かながわ農業アカデミー」に進学して勉強することを視野に入れました。

実際に研修を始めるまでにした2つのこと


農業研修先を決めた私は、残りの数カ月をどう過ごすか考えました。その結果、2021年4月から農業研修を行うまでにしたことは2つ。それは、生産と販売の現場に足を踏み入れることです。

生産の現場を知るために、小田原の矢郷農園をつないでいただき、何度かお手伝いをさせていただきました。収穫や剪定のお手伝いをしながら、矢郷さんに新規就農に関する質問をし、たくさんのアドバイスをいただきました。

また、農産物に関する販売に携わるため、生産者と消費者をつなぐ産直通販サイト「食べチョク」でインターンを開始。マーケティングチームに所属し、消費者に生産者の商品を届けるために考え抜く機会をいただきました。

矢郷農園での農作業風景

直前で研修先の変更を決断! 師匠に直談判


2021年4月からかながわ農業アカデミーで勉強をする予定でしたが、3月に研修先を変えることに! 元々お手伝いをさせていただいていた矢郷農園の矢郷さんに電話をかけ、「矢郷さんのもとで修行させてください!!」とダメ元でお願いしました。

すると快く受け入れてくださり、4月から研修生として雇ってくださることに。本当に感謝しています。

変更を決めた理由は、地域に入り込むことの重要性。小田原と離れた土地にある学校に通うよりも、実際に就農予定の地域に入り込み、ベテランの農家さんたちから学ぶことで現場でしか学べない農業のいろはを知ることができると思い決断しました。

矢郷農園の3人(左:私、真ん中:師匠の矢郷史郎さん、右:一緒に働いている高橋和幸さん)
こうして新規就農への一歩を踏み出し、研修が始まってから1年弱の月日が経ちました。このコラムでは、私が新規就農するまでの道のりや日頃の農作業の様子、今まで調べた補助金や法律などさまざまな情報をお届けする予定です!

ぜひ次回のコラムもご覧ください♪

小田原市 | 新規就農者に対する支援事業について
https://www.city.odawara.kanagawa.jp/municipality/industry/agricult/topics/p21247.html

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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。