どんな人が果樹農家に向いてる? 研修先の師匠に聞いてみた【目指せレモン農家! 槇紗加の農業奮闘記 第5回】


こんにちは! レモン農家を目指し、神奈川県小田原市の矢郷農園で農業研修中の槇 紗加(まき さやか)です。

このコラムを読んでいる方のなかには、新規就農を目指している、あるいは具体的な研修先を探しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

農作物を売って生活をするには、販売面だけでなく安定的な生産を行うことが重要です。そのために、プロの農家さんから技術を学ぶことはとっても大切。研修をせずにいきなりチャレンジして、うまく育てることができずに挫折してしまったという話もよく聞きます。

実際に私は小田原市の矢郷農園に研修生として受け入れていただき、農業の勉強をしていますが、研修を開始する前までは「研修先の選び方がわからない」「研修生として受け入れてもらうには何をすればいいのか」など多くの悩みを抱えていました。

そこで、第5回目となる今回のコラムでは、実際に研修生を受け入れている側の意見を知るため、私の師匠である矢郷農園の矢郷 史郎(やごう しろう)さんにお話をうかがい、新規就農を志す人におすすめの方法や、研修生を受け入れる際の条件などをお聞きしました。

▲矢郷農園の矢郷史郎さん

どうやったら果樹農家として新規就農できる? おすすめの方法は?


まずおうかがいしたのは、果樹農家として新規就農する方法について。新規就農をするには、農業大学校に通って勉強してから現地で就農する方法や、現地の農園に研修生として受け入れてもらう方法などがあります。

矢郷さんのおすすめは、「現地の農園で研修を受けながら地域の農家さんとの関わりを増やし、既存で木が植わっている園を継ぐ方法」だそう。

果樹農家の場合、まっさらな農地に苗木を植えたとしても実を収穫できるのは3~4年後。また、技術がなかったり手入れする時間を確保できなかったりすると、うまく苗が育たないこともあります。

こうしたリスクを踏まえると、「就農したい土地に入り込み、技術を叩き込んでもらったあとに既存の農地を継いだ方がいい」のだそうです。

研修生を受け入れる際の条件は?


次に聞いてみたのは、私自身受け入れてもらった身として気になっていた「研修生を受け入れる際の条件」について。

特に具体的な条件を定めているわけではないとのことですが、振り返ってみると無意識に判断している基準があったそうです。

その基準は、「独立した先でうまくやっていける人材かどうか」。例えば、コミュニケーション能力があり人に愛される人、自分の頭で考えて行動できる人など、総合的に見て判断しているとのこと。

農家とひとくくりにされがちですが、農家として独立する=経営者になるということです。矢郷さんは、経営者としての素質があるかどうかを無意識に判断しているのかもしれないな、と聞いていて感じました。

女性1人で果樹農家として新規就農する際の壁


2023年度に独立予定の私も気になっているのが、女性1人で果樹農家として新規就農する際の壁。

私自身は、重いものを持ち上げることができないなど肉体面が壁になると思っていました。しかし、矢郷さんは肉体面の心配はしていないそうです。その理由は、もし持ち上げられないものがあったとしても、人に頼る力があれば問題ないから。

むしろ、「人に頼ることのできる『愛され力』や『コミュニケーション能力』の方が壁になりうるかもしれない」とおっしゃっていました。

▲たくさんの人がお手伝いに来てくれている様子

果樹の新規就農に向いている人、向いていない人ってどんな人?


最後に聞いてみたのが、ズバリ新規就農に向いている人・向いていない人の違いについてです。

矢郷農園のある小田原市など広大な平地がない場所では、トラクターなどの機械が入らないため大規模生産が難しいとされています。そのため、生産量だけで勝負するのではなくいかに農作物の付加価値を上げて販売するかが鍵となってきます。

「農作物の付加価値を上げるには、生産力だけでなく営業力・マーケティング力などさまざまな力が求められるため、総合的な力を持っている人が新規就農には向いていると思う」と矢郷さんは感じているそうです。

もし、人とコミュニケーションを取るのが苦手で黙々と農作業をするのが好きという方がいたら、「独立ではなく農業法人に就職するのも手かもしれないね」とおっしゃっていました。

【おまけ】スマート農業を取り入れるなら?


SMART AGRIはスマート農業に関する情報を届けるメディアということもあり、矢郷さんに「もしスマート農業を取り入れるなら何を取り入れたいか?」と聞いてみました。

矢郷さんが興味を持っているのはドローン。実際に、矢郷農園ではドローンの実証実験を受け入れており、収穫物の運搬実験などをしています。

これから期待しているのは、果樹用の農薬・除草剤散布ドローンだそうです。特に除草剤の場合、果樹の葉っぱにかからないように雑草のみを見分けて散布するのが難しいため、私自身も期待しています。


今回は、師匠である矢郷さんにインタビューをしてみました。私自身、もともと農業学校に通って研修する予定だったところを、矢郷さんのお話を聞いて矢郷農園で研修させていただく道に変更した身です。

研修開始から約1年半が経ちましたが、実際に地元の人と関われたり、農地を貸してもらえることになったりと、矢郷農園で研修して良かったと感じています。

それぞれが望む研修方法があるとは思いますが、就農前に地域に入り込んで農家さんたちとの信頼関係を築いておくことはおすすめしたいです。これから果樹農家として新規就農を目指している方、一緒に頑張りましょう!

次回もお楽しみに♪

矢郷農園 ホームページ
https://www.yagou-nouen.com/
槇 紗加Twitter
@maru_nougyo

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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。