研修先で感じた農福連携を始めて良かったこと、壁になりそうなこと【目指せレモン農家! 槇紗加の農業奮闘記 第6回】

こんにちは! レモン農家を目指し、神奈川県小田原市の矢郷農園で農業研修中の槇 紗加(まき さやか)です。

近年、農業従事者の高齢化・担い手不足が深刻化しています。そんな中、注目されているのが「農福連携」です。農家側の人手不足の解決だけでなく、障がいを持つ方が自然の中で働くことで精神面・身体面の状況が改善したという声も上がっています。

私が研修を行っている矢郷農園では、障がいを持つ方の就労支援を行う施設の方に来ていただいています。今回は、実体験も踏まえて農福連携の現状についてご紹介します。


農福連携とは?


農林水産省によると、農福連携とは「障害者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組」のことです。

農家にとっては高齢化が進み人手不足が深刻化している中で貴重な労働力になり、障がいを持つ方にとっては自然の中でいきいきと仕事ができることから、お互いにwin-winな関係を築くことができると考えられています。

また、農業は収穫、除草、選定、摘果、選果、出荷、加工など、多種多様な仕事がある職種です。そのため、1人ひとりの特性に合わせて仕事をお願いすることができ、適材適所を意識した作業を行うことができます。

矢郷農園が農福連携をはじめたきっかけ


私が研修をしている矢郷農園では、小田原市内にある就労支援通所型施設の「ありんこホーム」さんと農福連携を行い、所属している障がいを持つ方に来ていただいています。

農福連携をはじめたのは、とあるマルシェでの出会いがきっかけでした。農園代表の矢郷さんと施設の方が話しているうちに、一度お試しで農作業を手伝いに来ていただけることになり、結果的に農福連携の取り組みを開始することになったのです。

矢郷さんによると、いきなり長期的な取り組みをはじめるのではなくお互いの状況をすり合わせるためのお試しの機会をいただけたことが良かったとおっしゃっていました。

実際に農作業をしてくださる方は、いろいろな障がいを持っていらっしゃいます。コミュニケーションを取るのが苦手な方や、耳の聞こえない方など、それぞれが持つ特性は本当にさまざまです。中には、複数のことを一度に考えるのが苦手な方もいらっしゃるので、手で簡単にもぐことができるキウイフルーツの収穫など、なるべくシンプルな作業をお願いするようにしています。

実際に農福連携をはじめて良かったこと


農園代表の矢郷さんに、農福連携をはじめて良かったことを聞いてみたところ、こんな答えが返って来ました。

「受け入れる前は、来てくださる方と農園側がしていただきたい作業にミスマッチが起きないか不安でしたが、施設側と入念にコミュニケーションを取ることでお互いのニーズにあった連携ができています。利用者さんともしっかりとコミュニケーションが取れているため、来てくださったときは農園が賑わって楽しいです。また、人手が必要なタイミングに合わせて来ていただけるので、とても助かっており、人手不足の解消にもつながっています」

農福連携を行う施設にもよりますが、矢郷農園が連携している「ありんこホーム」では、頻繁にコミュニケーションを取り農園側の状況と施設側の状況をすり合わせることで障がいを持つ方に合ったお仕事をしていただくことができています。

また、私自身も矢郷農園が農福連携をはじめて良かったと感じることがあります。それは、これまであまり関わる機会のなかった障がいを持つ方と関わることで持っていたイメージ・印象が変わったことです。

今までは施設の利用者さんはうまくコミュニケーションが取れない方が多い印象を抱いていましたが、実際に関わってみるとそうではなく、コミュニケーションを十分に取り合いながら農作業をすることができました。耳の聞こえない方とジェスチャーでやり取りしたり、年齢が離れている方とワールドカップの話題で盛り上がったりと、とても楽しくコミュニケーションを取ることができています。誕生日に色紙のプレゼントをサプライズでいただいたことが特に印象に残っています。

▲誕生日をお祝いしてもらった時の写真

農福連携の壁、改善の余地がある部分


農福連携の壁について矢郷さんは、以下のように話していました。

「農福連携には、農家と施設の対話がとても重要。利用者さんによって障がいの種類や特性はバラバラなので、適材適所を意識して1人ひとりに合った仕事を与えることが必要になってきます。そのため、利用者さんの特性をあらかじめ理解してからどんな仕事をお願いするか決めています」

実際に、外での収穫作業が得意な方もいれば、中での選果作業が得意な方もいるなどさまざまな利用者さんがいらっしゃいます。農園が必要としている作業と、利用者さんの得意なことをうまく組み合わせながら仕事をお願いすることで、互いにミスマッチなく農福連携を行うことができるのです。

今後の展望として、適材適所をしっかりと判断しながら、刈払機など専門的な技術を教えていくことで、利用者が1人で社会に出ても生きていけるような取り組みを行っていきたいそうです。

まとめ


今回は、私の研修先である矢郷農園が取り組んでいる農福連携についてご紹介しました。今後、独立して農園を開いた際にも適材適所を意識しながら農福連携の取り組みを行ってみたいなと感じています。

残り3カ月で独立となるため、緊張と不安の日々ですが、少しずつ準備を進めておりますのでこのコラムを読んでくださっている方も応援してくださると嬉しいです。

次回もおたのしみに!

※文中の「障害」の記述については、ありんこホームさんの表記を大切にし、個人を示す表現としては「障がい」、法律等の正式名称については「障害」を使い分けています。

槇 紗加Twitter
@maru_nougyo

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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  3. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。