お米はどうやって作られている? 米作りの1年の流れと作業内容

私たちが毎日主食として食べているお米は、農家の方たちが1年がかりで丹精込めて作っています。

米作りといえば田植えや稲刈りをイメージする方も多いと思いますが、実はそれ以外にもたくさんの工程があるのをご存じでしょうか。そこで今回は、普段何気なく食べているお米がどのように作られているのか、私たちの食卓に届くまでの1年の流れを紹介します。

日本ではどんな米作りが行われているのか


日本で栽培されているお米は大きく分けて、水を入れた田んぼで育てる「水稲」と畑で育てる「陸稲」の2種類です。

さらに、主食などでよく食べられている「うるち米」や「もち米」、日本酒造りに使用される「酒米」や畜産動物の餌となる「飼料用米」などに分けられ、それぞれの用途に合わせたお米の品種が全国各地で栽培されています。

陸稲は「りくとう」や「おかぼ」と呼ばれていて、茨城県や栃木県を中心にもち米用の品種が栽培されています。

栽培方法は水を入れた田んぼに苗を植え付ける「移植栽培」もしくは、直接種をまく「直播栽培」があります。稲作では移植栽培が一般的ですが、最近では省力化や低コスト化につながるとして直播栽培が注目されつつあります。

米作りの各工程を紹介


ここからは、日本で一般的に行われている「水稲」の「うるち米」を「移植栽培」で行う作り方を紹介します。お米がどのように作られているのか、6つの工程に分けて詳しく見ていきましょう。

田んぼの準備 1月~5月中旬



田起こし
田起こしは稲わらなどの有機物や肥料を入れて田んぼを耕す作業のことで、収穫後すぐに行われる「秋耕」と春になってから行う「春耕」があります。この作業を行うことで、地力を向上させ収穫量を増やすことができます。

昔は牛や馬などに犂(すき)という道具をけん引させて行っていましたが、現在ではトラクターを使用して行われています。

畔塗り
畔塗りは田んぼを囲む土の壁を補修する作業です。自然にできた割れ目やモグラなどの生物によって開けられた穴から水が漏れるのを防ぎます。

基肥
稲の生育に必要な肥料を田植え前の田んぼに施す作業です。窒素・リン酸・カリを中心に、品種や地域に適した施肥量を施します。

入水
入水は代掻きという作業の準備として田んぼに水を入れる作業です。農業用水路などから引いた水を利用します。

代掻き
代掻きは土をやわらかくしたり表面を平らにすることで、植え付け作業をしやすくするための作業です。他にも苗の活着をよくしたり、雑草の発生や田んぼの水漏れを防ぐといった効果も。植え付けまでに1~2回行われます。


種籾(たねもみ)の準備 3月~4月



種籾の入手
苗づくりに使用する種籾は、栽培する地域に適した奨励品種から選ぶのが一般的です。この場合、地元のJA等で販売されている種籾を購入します。また、条件が合えば他県の奨励品種を選ぶことも可能です。

奨励品種以外の品種から選ぶ際は、栽培する地域にあった品種を選び「のうけん」や「特定非営利活動法人新形質米普及会」といった団体から種を購入します。

種籾は購入する以外にも、自分で収穫した稲から自家採種することも可能です。この作業は手間がかかるのであまり一般的ではないですが、農薬や化学肥料を使用せずに行っている米農家では自家採種している場合もあります。

種籾の処理
種籾の処理では、充実した種籾を選ぶための「塩水選」という作業を行います。塩水に種籾を入れてかき回し、底に沈んだ種籾のみを苗づくりに使用します。

種籾の選別が完了したら、病原菌を取り除くための消毒を行います。薬剤を使用するのが一般的ですが、湯温消毒といって60℃のお湯に10分間浸して消毒することも可能です。

浸種
浸種は種籾の発芽をそろえるために行われる作業です。消毒が終わり一晩陰干ししておいた種籾を水に浸し、含水率が25%になるよう7〜12日間程度吸水させます。


苗づくり 4月~6月



苗代の準備
苗づくりを始める前に苗を育てるための「苗代」を準備します。苗代には田んぼや畑を利用したり、ビニールハウスを利用することもあります。

種まき
種籾の下処理と苗代の準備が終わったら、種まきの作業です。土を詰めておいた育苗箱にまんべんなく種籾をまきます。種まきが完了した育苗箱は苗代に並べて、トンネルを設置して苗を育てていきます。

現在は機械を利用して移植するのが一般的なため上記の方法を紹介しましたが、苗代に直接種をまいて育苗する方法もあります。

育苗管理
種まき後は日を当てないようにして出芽を促します。出芽したら弱い光に3日程度当てて「緑化」させ、その後はトンネル内で徐々に自然環境に慣らす「硬化」の工程を行います。

育苗の作業では、上記の作業のほかに適切な温度や水の管理を行うことも重要です。これらの作業を行い、約1カ月の期間を経て田植えに適した苗に育てていきます。


田植え・管理 5月~8月



田植え
代掻き作業が完了した田んぼに育てた苗を植え付けていきます。昔は手でひとつひとつ植えていましたが、現在では田植機を利用した方法が一般的です。田植機に苗をセットし、田んぼの中を通ることで等間隔に植え付けられていきます。

水管理
田植え後は、稲の生育に合わせて田んぼの水を調節する「深水・浅水・中干し・間断かんがい」と呼ばれる工程を行います。

深水管理:植え付け後すぐの苗を寒さから守るため、田んぼの水深を5~7cmにして管理する方法です。田植え直後から活着するまでに行います。

浅水管理:活着後は水を2~4cm程度にします。水を浅くして地温を上昇させることで生育を促すことができます。

中干し:稲の生長を調節するため、田んぼの水を抜き7日~10日間かけて土を乾燥させる作業です。生育のピークを迎えるころに行います。

間断かんがい:中干し後、水を入れたり抜いたりするのを数日ごとに繰り返す作業です。酸素と水分の供給を交互に行うことで健全な根を育てることができます。

追肥
稲の生育に必要な栄養分を補うために追肥を行います。追肥の回数や施肥量は地域や育てる品種によっても違いがあるため、農家は生育状況や天候などを見ながら肥料を施します。

除草作業
稲の生長の促進や害虫の発生を抑えるため、水管理と並行して除草作業も行います。除草剤を使用するのが一般的ですが、アイガモなどの生物を利用する方法や除草機で土をかくはんして雑草を浮かせるといった方法もあります。


病気や害虫について



注意したい病気
稲作で最も恐れられている病気は「いもち病」です。気温が低く、雨が多いときに発生しやすいのが特徴で、この病気にかかると穂が白くなったりして品質の低下が起こります。その他にも高温多湿で起こりやすい「紋枯病(もんがれびょう)」などもあります。

稲を食べる害虫
稲に発生しやすい害虫はウンカをはじめ、カメムシやイナゴなどにも注意が必要です。これらが大量発生してしまうと稲が食害されて大きな被害になることもあります。

倒伏
稲作では収穫間近の時期になると稲が倒れてしまうことがあります。これは「倒伏」と呼ばれ、収穫量や品質の低下につながります。


収穫~食卓へ 10月



落水
稲刈りの約10日前には田んぼの水を抜く「落水」を行います。この作業は早すぎても遅すぎてもお米の品質に影響してくるので、農家はその年の天候などによって最適な時期を見極めています。

刈り取り
落水が終わり田んぼが乾いたら、いよいよ収穫です。刈り取りの時期は出穂から約40日頃で、稲穂が黄金色になり垂れ下がったら収穫の合図となります。

収穫作業はコンバインと呼ばれる農業機械を使用して行うのが一般的です。コンバインは稲刈りだけでなく、稲穂から籾を分離する脱穀、籾の選別、藁の処理を同時に行うことができます。

乾燥
脱穀作業が完了したばかりの籾は水分を多く含んでいます。このままでは貯蔵性がよくないため、機械を使用して水分が14~15%になるよう籾を乾燥させます。

調整作業
乾燥が完了したら籾すり機を使用して「籾すり」を行います。これは、籾殻を取り除いて玄米の状態にするための作業です。そこからさらに、選別機を用いて出荷できるお米とくず米の選別を行います。

精米
玄米の糠層を取り除く「精米」を行い、ようやく白米として食卓に上ります。スーパーなどでは精米されているお米を購入するのが一般的ですが、米の生産地では玄米を購入者自身で精米機にかけて白米にすることも。玄米のまま保存しておき、食べる分だけ精米することでお米のおいしさをキープすることができます。


田んぼが持つ役割とは


田んぼはお米を作るだけでなく、人や生き物の暮らしを守るための役割を果たしているというのをご存じですか?

ここからは、稲を育てる以外に田んぼが持っている機能について紹介します。

水や土を守る


田んぼは大きなため池として降った雨をため込み、ゆっくりと流すという役割を持っています。これにより、水がろ過されるだけでなく、地盤沈下や土砂崩れを防ぐといった働きもあります。

生き物をはぐくむ


田んぼはさまざまな生き物のすみかでもあります。なかには稲にとって好ましくない虫などもやってきますが、田んぼにカエルやトンボが生息していることで、害虫となる虫を食べてくれます。そこにカエルなどを食べるためサギなどの渡り鳥がやってくるといったように、豊かな生態系を守る役割があります。

美しい景観を守る


田んぼは季節ごとに景色を変え、見るものの心を和ませてくれます。初夏の青々とした稲や水面に映る景色、秋になり黄金色になった稲穂の絨毯は日本の象徴的な風景とも言えるでしょう。


今回は、日本で広く行われているお米の作り方を紹介しました。ほとんどの作業が機械化され、昔と比べると楽になったように見えるかもしれませんが、天候に左右される米作りは簡単ではありません。これからも、農家が手間をかけて作ったお米を大事に食べていきたいですね。


ごはん彩々「意外と知らない米作り方法!?6つの行程について詳しく解説」
https://www.gohansaisai.com/fun/entry/detail.html?i=709
株式会社クボタ「お米ができるまで」
https://www.kubota.co.jp/kubotatanbo/rice/
みんなの農業広場「水稲種子の入手方法」
https://www.jeinou.com/benri/rice/variety/2010/04/060921.html
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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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