お米ライターは新米をどう楽しむ? 「水の加減はお米に合わせて変えてみて!」

お米ライターの柏木智帆です。

普段何気なく食べているお米でも、「新米」と聞くと、なんとなく襟を正して食べる……という人は多いのではないでしょうか。

以前に仕事先で「今日のごはんは新米ですよ」と出された白飯をひとくちも味見することなくキムチをどかっとのせて食べ始め、「シンジラレナイ!」と周囲からブーイングを浴びている男性がいました(笑)。新米ならばまずは「白飯」や「塩むすび」で食べたい……と考える人が多いことのあらわれかもしれません。

だからこそ、新米の炊飯方法に誰もが悩むのですよね。


水量や炊き方はお米にあわせて試行錯誤してみる


新米の醍醐味は「香り高さ」と「みずみずしさ」。とれたてキャピキャピのお米は、米粒が含有している水分値にばらつきがあったり、細胞組織が柔らかかったりして、みずっぽく感じられる場合もあります。

ただし、その程度はお米ごとに違うので、「水を減らして炊いてちょうどいい」というお米もあれば、「普段通りの水量でちょうどいい」というお米もあります。難しいですね。

おすすめは、「まずはいつも通りに炊いてみて、好みに応じて水量を変える」という方法。あるいは、「まずは水を減らして炊いてみて、好みに応じて水量を変える」でもいいです。

言いたいことは、そのお米にあった水量を採用すべしということ。

メディアに書いてある情報にとらわれず、できるだけお米と向き合いながら試行錯誤することで、そのお米のポテンシャルを引き出したごはんや、自分の好みと合致したごはんなど、ベストな炊き上がりに近づいていきます。

お米をふっくらと炊き上げるには、米粒のすみずみまで水を行き渡らせることが大切です。水は熱伝導の役割を果たすので、水が行き渡っていれば、火を入れたときに熱もすみずみまで行き渡ります。水と熱がしっかりと入ることで、冷めてからも硬くなりづらいごはんを炊き上げることができるのです。

半透明の生米を水に浸けて観察してみると、水が浸透したところから白くなっていきます。ぬるま湯と冷水で比べると、米粒の白くなるスピードはぬるま湯のほうが早いです。

しかしながら、肉眼でわからない世界では、冷水のほうが時間をかけてすみずみまでまんべんなく水を浸透させていくことがわかっています。だからこそ、お米は冷水で洗い、冷蔵庫で浸漬させることが重要なポイント。「浸漬なくしてうまい米なし」と言っても過言ではありません。

炊飯前のお米は、冷蔵庫で最低でも2時間は浸漬させることが大事です。可能ならば6時間以上はほしいところ。「めんどくさい!」と思われがちですが、きっかり6時間でなくてもいいので意外と簡単です。

たとえば、朝の出勤前に冷蔵庫で浸漬させておけば、夜に帰宅してからすぐ炊飯できます。翌日の朝に食べたい場合は、夜の就寝前に冷蔵庫で浸漬させておけば、朝起きてすぐ炊飯できます。

こんなふうに自分のライフスタイルに合わせた“炊飯リズム”を確立しておけば、日々の炊飯ハードルは低くなるのではないでしょうか。


炊飯器の場合は、「早炊きモード(高速炊飯モード)」を使うと、あっという間に炊ける上に、通常の白米モードよりも粒立ち良く炊き上がりやすいのでおすすめです。ただし、蒸らし時間が含まれていないため、10分ほど蒸らしてから蓋を開ける必要があります。

ガス炊飯の場合は土鍋が人気ですが、特に新米時期は「ごはんがみずっぽくやわらかい」と感じた場合、しゃっきりと炊き上がる鉄鍋やアルミ鍋など熱伝導率の高い鍋を使ってみるのもおすすめです。

同じお米でも水量や炊飯道具、火の入れ方などによって味わいが異なるので、いろいろな炊飯方法を試してみて、「このお米には土鍋」「こっちのお米は少なめの水で」というふうに、お米と炊飯方法の相性を探ってみるとお米の楽しみの幅が広がります。そして、「これは……!」というベストなマッチングに出会えたとき、きっと楽しい“お米沼”にハマっていくことでしょう。

新米時期だけじゃない? “十米十色”なおいしいタイミング



お米のおいしさのピークは、十人十色ならぬ“十米十色(じゅうまいといろ)”。つまり、お米によってそれぞれ違います。

たとえば、新米時期がとてもおいしかったのに数カ月後に再購入して「あれ?」というお米もあれば、新米時期にいまひとつだったのに数カ月後においしくなっているお米もあれば、多くのお米が劣化してくる梅雨時期になぜか味がのってくるお米もあります。

個人的には、多くの場合は収穫から2〜3カ月後くらいから水分が落ち着いて味わいが増してくるように感じています。つまり、「お米の旬」は第一弾が「新米時期」で、第二弾が「年明け頃」 なのです。

現在の米業界では、12月31日までは「新米」で、翌年の1月1日からは「新米」ではなくなってしまいますが、ぜひ年明け以降のお米も新米と同じ熱量で楽しんでもらいたいです。

ただし、精米されたお米を年明けまで取っておくのはおすすめしません。精米したお米(白米)は劣化しやすいためです。購入したお米は必ず密閉容器に移し替えて冷蔵庫で保管し、2週間くらいで食べきるようにするのがおすすめです。野菜や果物と同様に、どかっと大量に購入せず、少量ずつこまめに購入することがお米を新鮮においしく楽しむコツです。

おすすめの新米の食べ方は、塩むすびを作って、外で食べること。秋の青々とした高い空を見上げながら食べるおむすびには、何物にも代えがたい格別なおいしさがあります。秋がやってくるたび、新米は舌や胃だけでなく、心でも食べるものなのだとつくづく感じています。


柏木智帆
お米ライター/米・食味鑑定士
神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間200種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆、ワークショップ、講演など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。



 

■せっかく新米を選ぶなら「あんしん」にこだわりませんか


今年の新米は、どの産地のどんな銘柄のお米を選びますか? お米を選ぶときは、自分好みの味わいだけでなく“栽培方法”も大事なポイントです。農薬や化学肥料の使用量を抑えて育てられた、子どもや家族みんなにあんしんなお米を選びたいですね。

全国各地のこだわりの農家さんと、スマート農業でお米づくりをしている「スマート米」は、先進のIT技術を利用し、農薬の使用量を最小限に抑えたお米です。特別栽培米や残留農薬不検出のお米、白米と同じように手軽に炊けると人気の「無洗米玄米」もそろっています。

おなじみのコシヒカリから、ご当地で人気の銘柄までをラインナップ。

お求めはスマート米オンラインショップ SMART AGRI FOOD  からどうぞ。

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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
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    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
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    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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