ごはんを食べるのがより楽しくなる炊飯道具たち【年間400種のお米を楽しむライター柏木の「お米沼にようこそ」 第3回】
お米ライターの柏木智帆です。
前回は「お米の持ち味を楽しむ炊飯のポイント」をお伝えしました。
今回は、日頃使っている炊飯道具たちをご紹介します。
同じお米でも鍋の材質や形状などによって炊き上がりの味わいがガラリと変わります。気になる炊飯道具がありましたらぜひ試してみてください。
▼前回の記事はこちら
お米の持ち味を楽しむ炊飯のポイント【年間400種のお米を楽しむライター柏木の「お米沼にようこそ」 第2回】
現在最も気に入っている炊飯鍋は、東京・新橋の懐石料理店「懐石 高野」と富山県高岡市の鋳物メーカー「砺波(となみ)商店」が共同開発したアルミ鍋「金しゃり釜」。
アルミ鍋でありながら、見た目はまるで土鍋。内部に遠赤外線コーティングを施すことで陶器以上の遠赤外線効果を生み出したそうで、ふっくらしながらも羽釜で炊き上げたようなしゃっきり感が出ます。
私はまさにふっくらしゃっきりとしたごはんが特に好みなので、土鍋や炊飯器で炊いて「おいしい」と感じたお米を、次はこのアルミ鍋で炊いてみるというふうに“とっておき”の鍋として愛用しています。おいしいお米をこれで炊くと悶絶の味わいです。
アルミ鍋なので熱伝導率が良く、沸騰までは中火か中強火くらいで充分。家庭用ガスコンロの弱い火でも鍋全体を温めることができ、ふたからも同時に熱が入る形状です。
そして、目に見えるわかりやすい特徴は「沸騰のサイン」です。
鍋炊飯では、沸騰したら弱火にするのが一般的。でも、沸騰したかどうかがわからず、確認のためにふたを開けている人は多いのではないでしょうか。でも、この鍋ならば沸騰のサインが出るためふたを開ける必要がなく、せっかくふたに伝わった熱や鍋の中の熱を逃さずに弱火のタイミングを知ることができます。
そのサインとは、土鍋が出す“大きな泡”。沸騰すると、ふたの取っ手の穴から泡が出始め、次第にぷぅーっと粘性の大きな泡が膨らむのです。
これは、「アルファ化(糊化)」のサインでもあります。アルファ化とは、お米のでんぷんが水と加熱されることで糊状になること。大きな泡が出るということは、しっかりアルファ化している合図、つまりおいしく炊けるという合図でもあります。
鍋の泡は、吸水時間が足りない場合や、お米が劣化している場合は出にくくなるため、泡の出方が火加減のみならずお米の吸水度合いやお米の鮮度まで教えてくれるという試金石のような炊飯鍋です(泡の出方は品種にもよります)。
同じく沸騰のサインが出る形状で、「懐石 高野」と三重県四日市市の萬古焼メーカー「銀峯(ぎんぽう)陶器」が共同開発した土鍋「亶-SEN-」も気づけば6年来のヘビーユーズ鍋ですが、こちらは残念ながら製造中止となってしまいました。
玄米を炊くときは、三重県四日市市の萬古焼メーカー「華月」の「大黒ごはん鍋」。二重ぶたのためか、一重ぶたの土鍋よりも、玄米がもちもちとして甘味が強く炊き上がる傾向があります。
この土鍋は頑丈で、底がまだ湿っているうちに火にかけても割れないので、イベントなどで繰り返し炊飯するときにも重宝します。それなりの重さはありますが、個人的には大きさの割にさほど重くは感じないので、かつてはこの5合土鍋を抱えて電車を乗り継ぎ、出張おむすび屋やイベントなどに出かけていました。
また、1合分の少量を炊くときは、東京都中央区の耐熱ガラスメーカー「HARIO」の「フタがガラスのご飯釜」。その名の通り、ふただけガラスの土鍋です。これも釜は三重県四日市市の萬古焼。中火か中強火で加熱していき、「ピィー」と鳴り始めたら1分待ってから消火して15分蒸らすだけなので、ガス炊飯初心者でも挑戦しやすいかもしれません。
娘と一緒に屋外でランチをするときは、同じく「HARIO」の「ゼブランライスオーブン」を、大阪府大阪市「岩谷産業」の強火力カセットコンロ「BO」で炊飯。この鍋は、岩手県奥州市の南部鉄器メーカー「及源鋳造」による鉄鋳物なので、ごはん粒がしゃきっとしてザ・アウトドア飯な食感の炊き上がりになります。
これも、「ピィー」と鳴り始めたら消火する方式なのですが、屋外では風の強さや気温によって炊き上がりが変わってしまい、天候によっては苦戦するときもあります。それもまたアウトドア炊飯の楽しみですよね。
ちなみに、いずれの場合も点火から沸騰までは8〜9分ほどを目指して火力を調整していますが、炊き上がりに物足りなさがある場合は、水の量や沸騰までの時間を調整してみることをおすすめします。
ごはんが蒸らし上がったら、「飯切り(ほぐし)」の工程が必須です。「どう飯切りするか」も大事ですが、「どんなしゃもじで飯切りするか」もごはんの仕上がりを左右します。
重宝しているのは、東京都墨田区の生活雑貨メーカー「マーナ」が「全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)」と「お米マイスター」と共同開発した「極(きわみ)しゃもじ プレミアム」。7年前に全米販の方にサンプルをいただいてから、もう手放せない存在になりました。
それまでは、竹のしゃもじとか自然素材にこだわっていましたが、ごはんがくっついたりつぶれたり、しゃもじを濡らしすぎるとごはんが水っぽくなり、理想と現実の間で揺らいでいました。
そんなとき、この極しゃもじを使い始めてみたのですが、ごはんがまったくつかないのです。剥離性の高い「TPX」という樹脂の原料に、「特殊エンボス加工」という凹凸が施されていることで、ごはんをほぐすときもサクサクとスムーズ。先端が薄いことも重要なポイントです。このしゃもじのおかげでごはんをつぶさずに一粒一粒を楽しめるようになりました(竹しゃもじは食卓でちらし寿司を取り分けるときなどに使っていますが、やはりごはんがくっつきがち)。
ほぼ毎日3食、この極しゃもじを使い続け、さすがに6年も経つとエンボス加工が取れ、しゃもじの先端が変形し、ごはんがくっつくようになってきました。そういうわけで、昨年新調して、さらにもう1本買い足しました。
使い心地の良いお気に入りの炊飯道具に出会えると、ごはんを炊いて食べることがより楽しみになります。紹介した炊飯道具に限らず、いろいろ試して楽しい炊飯ライフをお送りください。
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前回は「お米の持ち味を楽しむ炊飯のポイント」をお伝えしました。
今回は、日頃使っている炊飯道具たちをご紹介します。
同じお米でも鍋の材質や形状などによって炊き上がりの味わいがガラリと変わります。気になる炊飯道具がありましたらぜひ試してみてください。
▼前回の記事はこちら
お米の持ち味を楽しむ炊飯のポイント【年間400種のお米を楽しむライター柏木の「お米沼にようこそ」 第2回】
うまく炊けていることを教えてくれる鍋
現在最も気に入っている炊飯鍋は、東京・新橋の懐石料理店「懐石 高野」と富山県高岡市の鋳物メーカー「砺波(となみ)商店」が共同開発したアルミ鍋「金しゃり釜」。
アルミ鍋でありながら、見た目はまるで土鍋。内部に遠赤外線コーティングを施すことで陶器以上の遠赤外線効果を生み出したそうで、ふっくらしながらも羽釜で炊き上げたようなしゃっきり感が出ます。
私はまさにふっくらしゃっきりとしたごはんが特に好みなので、土鍋や炊飯器で炊いて「おいしい」と感じたお米を、次はこのアルミ鍋で炊いてみるというふうに“とっておき”の鍋として愛用しています。おいしいお米をこれで炊くと悶絶の味わいです。
アルミ鍋なので熱伝導率が良く、沸騰までは中火か中強火くらいで充分。家庭用ガスコンロの弱い火でも鍋全体を温めることができ、ふたからも同時に熱が入る形状です。
そして、目に見えるわかりやすい特徴は「沸騰のサイン」です。
鍋炊飯では、沸騰したら弱火にするのが一般的。でも、沸騰したかどうかがわからず、確認のためにふたを開けている人は多いのではないでしょうか。でも、この鍋ならば沸騰のサインが出るためふたを開ける必要がなく、せっかくふたに伝わった熱や鍋の中の熱を逃さずに弱火のタイミングを知ることができます。
そのサインとは、土鍋が出す“大きな泡”。沸騰すると、ふたの取っ手の穴から泡が出始め、次第にぷぅーっと粘性の大きな泡が膨らむのです。
これは、「アルファ化(糊化)」のサインでもあります。アルファ化とは、お米のでんぷんが水と加熱されることで糊状になること。大きな泡が出るということは、しっかりアルファ化している合図、つまりおいしく炊けるという合図でもあります。
鍋の泡は、吸水時間が足りない場合や、お米が劣化している場合は出にくくなるため、泡の出方が火加減のみならずお米の吸水度合いやお米の鮮度まで教えてくれるという試金石のような炊飯鍋です(泡の出方は品種にもよります)。
同じく沸騰のサインが出る形状で、「懐石 高野」と三重県四日市市の萬古焼メーカー「銀峯(ぎんぽう)陶器」が共同開発した土鍋「亶-SEN-」も気づけば6年来のヘビーユーズ鍋ですが、こちらは残念ながら製造中止となってしまいました。
玄米炊飯・少量炊飯・アウトドア炊飯におすすめの鍋
玄米を炊くときは、三重県四日市市の萬古焼メーカー「華月」の「大黒ごはん鍋」。二重ぶたのためか、一重ぶたの土鍋よりも、玄米がもちもちとして甘味が強く炊き上がる傾向があります。
この土鍋は頑丈で、底がまだ湿っているうちに火にかけても割れないので、イベントなどで繰り返し炊飯するときにも重宝します。それなりの重さはありますが、個人的には大きさの割にさほど重くは感じないので、かつてはこの5合土鍋を抱えて電車を乗り継ぎ、出張おむすび屋やイベントなどに出かけていました。
また、1合分の少量を炊くときは、東京都中央区の耐熱ガラスメーカー「HARIO」の「フタがガラスのご飯釜」。その名の通り、ふただけガラスの土鍋です。これも釜は三重県四日市市の萬古焼。中火か中強火で加熱していき、「ピィー」と鳴り始めたら1分待ってから消火して15分蒸らすだけなので、ガス炊飯初心者でも挑戦しやすいかもしれません。
娘と一緒に屋外でランチをするときは、同じく「HARIO」の「ゼブランライスオーブン」を、大阪府大阪市「岩谷産業」の強火力カセットコンロ「BO」で炊飯。この鍋は、岩手県奥州市の南部鉄器メーカー「及源鋳造」による鉄鋳物なので、ごはん粒がしゃきっとしてザ・アウトドア飯な食感の炊き上がりになります。
これも、「ピィー」と鳴り始めたら消火する方式なのですが、屋外では風の強さや気温によって炊き上がりが変わってしまい、天候によっては苦戦するときもあります。それもまたアウトドア炊飯の楽しみですよね。
ちなみに、いずれの場合も点火から沸騰までは8〜9分ほどを目指して火力を調整していますが、炊き上がりに物足りなさがある場合は、水の量や沸騰までの時間を調整してみることをおすすめします。
飯切りに最適な7年選手のしゃもじ
ごはんが蒸らし上がったら、「飯切り(ほぐし)」の工程が必須です。「どう飯切りするか」も大事ですが、「どんなしゃもじで飯切りするか」もごはんの仕上がりを左右します。
重宝しているのは、東京都墨田区の生活雑貨メーカー「マーナ」が「全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)」と「お米マイスター」と共同開発した「極(きわみ)しゃもじ プレミアム」。7年前に全米販の方にサンプルをいただいてから、もう手放せない存在になりました。
それまでは、竹のしゃもじとか自然素材にこだわっていましたが、ごはんがくっついたりつぶれたり、しゃもじを濡らしすぎるとごはんが水っぽくなり、理想と現実の間で揺らいでいました。
そんなとき、この極しゃもじを使い始めてみたのですが、ごはんがまったくつかないのです。剥離性の高い「TPX」という樹脂の原料に、「特殊エンボス加工」という凹凸が施されていることで、ごはんをほぐすときもサクサクとスムーズ。先端が薄いことも重要なポイントです。このしゃもじのおかげでごはんをつぶさずに一粒一粒を楽しめるようになりました(竹しゃもじは食卓でちらし寿司を取り分けるときなどに使っていますが、やはりごはんがくっつきがち)。
ほぼ毎日3食、この極しゃもじを使い続け、さすがに6年も経つとエンボス加工が取れ、しゃもじの先端が変形し、ごはんがくっつくようになってきました。そういうわけで、昨年新調して、さらにもう1本買い足しました。
使い心地の良いお気に入りの炊飯道具に出会えると、ごはんを炊いて食べることがより楽しみになります。紹介した炊飯道具に限らず、いろいろ試して楽しい炊飯ライフをお送りください。
柏木智帆
米・食味鑑定士/ごはんソムリエ/お米ライター
神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。
米・食味鑑定士/ごはんソムリエ/お米ライター
神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。
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圧力釜で炊き上げた後、3~4日寝かせる「寝かせ玄米®」の製法で仕上げているので、玄米特有の食べにくさがありません。
忙しい方や、お弁当に持っていく方、家族の中で自分だけ玄米を食べるという方も、いつでも手軽にふっくら玄米をお召し上がりいだだけます。
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