傾斜地シークヮーサーでもドローン防除は可能? 導入のポイント&現場で検討したい視点

沖縄北部や離島などでさかんに栽培されているシークヮーサー(シイクワシャー、シークァーサーとも呼ばれる)。その園地を歩くと、斜面に沿って広がる樹列と青い海が印象的です。

しかし、その景色の裏側には傾斜地での防除作業という大きな負担があります。動力噴霧機のホースを引きながら斜面を移動し、密な樹冠に薬液を届ける──1年を通じて日本で最も高温多湿な時期が続く地域で、この作業を何度も繰り返すのは容易ではありません。

近年、こうした園地で検討材料として話題に挙がることがあるのが農薬散布用ドローンです。すべての園地に当てはまるわけではありませんが、作業負担を見直す一つの選択肢として関心が高まっています。

今回は、沖縄県の中心的な柑橘品目であるシークヮーサーを例として、その特性や傾斜地の条件を踏まえ、ドローン防除を導入する上で現場で考えておきたいポイントを整理します。



傾斜地シークヮーサー園で防除が重労働になりやすい理由


シークヮーサー栽培は、柑橘の中でも特に防除の負担が大きくなりやすい条件が重なっています。現場では当たり前の光景かもしれませんが、改めて整理するとその理由が見えてきます。

温暖多湿な地域条件


沖縄北部などの地域では年間を通じて気温と湿度が高く、病害虫の発生が長期間続きやすい傾向があります。そのため、圃場によっては他の地方の柑橘類と比較して、防除回数が多くなるケースも見られます。

樹冠構造


シークヮーサーは樹勢が強く、枝葉が密になりやすいのが特徴です。そのため、防除では葉の表側だけでなく、樹冠の内部まで薬液を届かせることが重要になります。

園地の立地条件


シークヮーサーの産地の多くは傾斜地にあり、ホースの引き回しや斜面での足場確保、さらに高樹高への散布といった作業が重なります。

こうした課題に対し、近年は作業者の高齢化や人手不足を背景に、負担軽減に向けた新しい手段も検討されるようになっています。

ドローン防除が検討される背景


農薬散布用ドローンは水稲での利用が先行していましたが、近年は果樹園地でも試験や導入事例が少しずつ増えています。特に傾斜地では、次のような理由から検討されることがあります。

斜面作業の安全性


雨上がりの傾斜園地などは、足場が不安定になりがちです。単に立っているだけでも体力を消耗するような園地もあります。しかし、ドローン散布はそもそも人が樹間の傾斜地を歩く必要がないため、転倒リスクの軽減につながる可能性があります。

作業時間の短縮


傾斜園地での動力噴霧機では、給水やホース移動が必要となり、そのための水の運搬や移動にもそれなりの時間を要します。その点、上空から散布するドローンでは、すべてドローンに搭載する作業のみ。条件さえ整えば、散布時間が大幅に短くなるケースも報告されています。

防除適期への対応


ドローン防除は飛行準備や薬剤の搭載といった準備時間は必要ですが、動力噴霧器などで移動するよりも準備は比較的短時間で終わらせられます。そのため、人手不足や天候の影響でタイミングを逃しそうな場合でも、短い晴れ間を活用しやすいという声があります。


ドローン利用の適否は地域条件や園地形状によって分かれるため、導入前には園地の条件と散布設計を整理しておくことが重要です。ただ、純粋な準備や移動の時間だけを見ても、ドローンの方がかなり効率的に作業できることは間違い無いでしょう。

樹冠の密なシークヮーサー園で意識したい散布設計


果樹でドローン散布を検討する際、最も関心が集まるのは薬液の到達性です。枝葉が密なシークヮーサーでは、特に散布設計が重要になります。

ドローン散布では、飛行高度や散布幅、液滴サイズなどを作目に合わせて調整します。高度が高すぎると薬液が拡散しやすくなり、低すぎると狭い範囲しか散布できず、作業効率が下がることもあるため、樹冠上部からの適切な高度設定がポイントになります。

水稲や柑橘といった作目ごとの設定は、ドローンメーカー側もさまざまな使用ケースをもとに、基準となる設定を用意していますので、基本的には困ることは少ないでしょう。

また、ローター風(ダウンウォッシュ)によって薬液が内部に押し込まれる効果も指摘されています。ただし、樹形や枝の込み具合によって結果は変わる可能性があるため、実際の圃場で確認していくことが重要です。

あわせて注目したいのが少水量散布です。動力噴霧機に比べて水量が少なくなる傾向があるため、薬剤ごとの使用基準を確認し、希釈倍率や散布量を適切に設計する必要があります。

特に果樹向けのドローン用薬剤の場合は、葉が完全に濡れた状態ではなくても、雨などによりじわじわと薬液がまんべんなく回っていくような設計もされています。動力噴霧器での散布後の様子とは異なる場合もあることは、あらかじめ理解しておくといいでしょう。

参考 :農林水産省「農薬登録情報提供システム」



傾斜地ならではの「風」をどう読むか


傾斜地でもうひとつ見落とされがちなのが、風の影響です。

沖縄の園地では、海風や谷風、斜面上昇風など、地形による複雑な風が発生することがあります。ドローン散布は液滴が軽いため風の影響を受けやすく、散布前には風速・風向のほか、周辺住宅の位置なども確認することが重要です。

また、航空法に基づくルールや申請制度も事前に確認しておく必要があります。風の弱い時間帯を選ぶことが、安定した散布につながることは、ドローンパイロットであれば当然のことですが、農家にはわからない部分もあります。最低限の知識として覚えておきましょう。

参考:国土交通省「無人航空機の飛行ルール」

ドローン防除を検討しやすい園地条件


とはいえ、ドローンはすべての園地で万能というわけではありません。現場では次のような条件で検討されるケースが多いとされています。

  • 面積がある程度まとまっている園地
  • 樹形が比較的そろっている園地
  • 傾斜が強い園地

ある程度の広さがある園地では、散布自体の効率も特に高まります。逆に、飛地のような園地が点在している場合は、必要以上に散布の状況を確認する必要もあります。

一方で、極端に不整形な園地や、樹高差が大きすぎる圃場、非常に小規模な区画などでは、ドローンを導入したとしても必ずしも効率がよくなるとは限りません。自園地の条件に合うかどうか、事前の見極めが重要です。

防除作業の新しい選択肢としての委託(外注)


シークヮーサー栽培は、傾斜地や温暖多湿な気候に合わせた現場の工夫で支えられてきました。その中でドローン防除は、作業安全や省力化を支える補完的な手段として検討され始めています。もし関心がある場合は、次のようなステップから考えてみてはいかがでしょうか。

  • 自園地の面積や樹形がドローン散布に向いているか整理する
  • 地域の共同防除や外部委託の事例を調べる
  • 実演会などで実際の散布状況を確認する

中でも、小規模な園地が分散している場合や、高齢化が進む地域では、自分で機体を導入するだけでなく、外部委託についても方法が検討されています。また、「機体導入や操縦まで自分で行うのはハードルが高い」と感じる方も少なくありません。

委託であれば、初期投資を抑えながら新しい技術を試すことができる場合もあります。地域によって対応事業者の数は異なりますが、こうした取り組みは少しずつ広がりを見せています。

近年は、ドローンによる農薬散布を専門に行う農作業代行サービスも登場しており、園地条件に合わせて防除を依頼するケースも見られます。自園地で活用できるかどうか、情報を確認してみるのも一つの方法かもしれません。

「まずは一部の圃場だけ試してみる」という使い方も
ドローン防除の外部委託なら、
現場に合った方法を探ることができます。
自園地に適した手段かどうか、まずは事例を確認してみてください。
▶︎柑橘ドローン防除サービスを見る
 
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※対応エリア・料金・作業条件は、地域や圃場状況等により異なる場合があります。


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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