「休みが取れない」の正体は? 果樹農家の負担が重い作業5選

果樹栽培というと、成長した木を管理しつつ収穫の時期だけ忙しい仕事と思われがちですが、実際には年間を通して手作業の比重が大きい分野です。

冬の剪定、春から初夏にかけての摘果、夏場の防除、秋の収穫、そして園地管理まで、実は1年をとおして作業が途切れにくいことに特徴があります。

それぞれの作業に関する負担の感じ方は、栽培する果樹の種類、樹種や樹形、園地の広さ、平坦地か傾斜地かといった条件によって変わります。それでも、多くの現場で「負担が重くなりやすい」と受け止められている作業には、いくつか共通点があります。

今回は、取材を通して見聞きしてきた農家の声の中から、「果樹栽培の負担が大きい作業」と、それを解決するためのスマート農業を取り上げていきます。



作業負担に共通する3つの背景


まずは、果樹農家が「きつい」と感じる作業の背景を整理してみましょう。

長時間・連日の作業が多い

まず大きいのが、長時間になりやすいことです。果実の状態を見ながら進める作業は、どうしても人の目と手に頼る場面が多く、朝から夕方まで続くことも珍しくありません。特に収穫や摘果は、作業適期が集中しやすく、晴天が続く時期には休みを取りにくい状況が生じることがあります。

高所での作業

次に、高所作業の多さがあります。樹上管理では脚立や足場を使う場面があり、上り下りの繰り返しが体力を削りやすくなります。

りんご・なし・かきなど樹高の高い果樹では、脚立を使った作業が長時間続きがちです。バランスを保ちながら腕を上げ続けることによる肩・腰への疲労は、平地作業とは異なる負荷となります。

夏の高温環境

さらに、夏場の高温下で行う作業では、暑さによる消耗も重なります。夏場は高温障害にも配慮する必要があり、ここで病害虫などが発生してしまったら長い間の苦労が水の泡となってしまいます。それだけに、慎重にチェックする必要が出てきます。

また、防除や草刈りは気温の高い時期と重なりやすく、熱中症リスクを意識しながら作業する必要があります。

こうした前提を踏まえながら、果樹農家にとって負担が重くなりやすい作業を見ていきましょう。

収穫作業


まず挙げられやすいのは、なんと言っても収穫作業です。

収穫は成果が見える前向きな作業でもありますが、体力面では厳しさを感じやすい工程でもあります。適期が限られるため作業が集中しやすく、取り遅れを避けるために日々の判断も欠かせません。小さな傷ひとつだけでも価格が変わってしまうため、常に慎重な作業も求められます。

活用できるスマート農業

収穫に関しては、果実の自動収穫ロボットによる全自動収穫なども進められていますが、実用化という意味ではまだ道のりは遠そうです。

一方、高所での収穫については、補助アシストスーツなどによって、手を上げた状態での疲労を軽減できる商品があります。また、収穫した果実を運搬する際に役立つロボットなども、特に近年一気に増えています。

剪定作業


剪定作業も、負担の大きい仕事として語られやすいものです。

剪定は、単に無駄に伸びた枝を切るだけでなく、樹の姿を思い描きながら判断を重ねる必要があります。技術的な要素が強いうえ、冬場に長時間続くことが多く、腕を上げた姿勢や中腰の姿勢が続くため、肩や腰への負担につながりやすい面があります。特に、高所での作業を伴う園地では、慎重さもより求められます。

活用できるスマート農業

収穫作業などと同様に、こちらも長時間手を使う作業があるため、アシストスーツによる負担軽減が有効です。近年は、樹体情報の蓄積や作業計画の共有といった面で、デジタル技術の活用余地が広がっているとみられます。

摘果作業


摘果は、果実の数を調整して品質や樹勢のバランスを整えるための大切な作業です。一つひとつの判断は小さく見えても、それを長時間続けることが疲労につながります。

単調に見えて実は迷いの多い作業であり、集中力を保ち続ける難しさもあります。樹種や仕立て方によって判断基準は異なるため、一律のやり方では進めにくい点も特徴です。

活用できるスマート農業

摘果すべきかどうかの「判断」をAIなどに担当させることで、経験不足の作業者でも判断できるようになるほか、新人が「スマートグラス」を使って現場の様子をベテラン農家と共有し、摘果判断のコツを継承するといった使い方もあります。

画像解析や作業支援の研究はスマート農業の中でも進んでいる分野でもあり、今後は人間では判別できないような微細な成長過程の情報を、AIなどで判別するなどの省力化に期待が寄せられています。



防除作業


防除作業は、夏場の重労働として挙げられることが多い仕事です。

散布そのものに体力を使うだけでなく、暑さのなかで防除衣や機材を扱う負担も小さくありません。園地の形状や樹の大きさによって作業効率は大きく変わり、風や天候を見ながら進める必要もあります。加えて、定められた基準に沿った農薬の管理が求められるため、体力面だけでなく確認作業の負担も伴います。

活用できるスマート農業

ドローンによる防除作業は少しずつ全国に広がっており、柑橘における防除効果を示すデータも出てきています。

また、副次的な効果として、ドローン散布作業の一部でもある散布計画の最適化、遠隔確認、作業記録の電子化といったデータ記録のDX化も、こうした負担の軽減につながる可能性があります。

除草作業


最後は除草に関する作業です。

草刈りなどの園地管理も、目立ちにくい一方で負担の積み重なりが大きい作業です。果樹園では雑草管理が欠かせず、特に傾斜地では足場の悪さが作業負担を高めます。暑い時期に繰り返し発生しやすく、ほかの作業と重なることで「休みが取りにくい」と感じる一因にもなりやすいでしょう。

活用できるスマート農業

除草作業については、自走式の管理機やリモート操作による草刈り機などが各メーカーから登場してきています。価格はそれなりにするものの、人間では行動できないような酷暑の環境下であっても作業できる価値は大きいと言えるでしょう。

草勢の把握に役立つデータ活用などは、現場条件に応じて検討余地があると考えられます。

柑橘に関する農作業を代行するサービス


こうして見ると、果樹栽培の大変さは、単に作業が多いことだけでは語れません。判断が必要な仕事、危険を伴いやすい仕事、暑さや忙しさが重なる仕事が連続することで、心身への負担が大きくなりやすいのです。

その対応策としては、自分だけで抱え込まず、自分や社員がやらなくてもいい作業は外部委託を含めて考える視点が、これからの日本の農業で重要になっていくでしょう。

防除や草刈り、収穫補助など、工程ごとに外部の力を借りる動きは各地で広がりつつあり、地域の支援組織だけでなく、作業受託を事業として行う担い手がみられる地域もあります。

手をかけた分だけ品質につながる一方で、「やらなくてもいい作業」の可視化が難しく、労働負担の大きさが経営課題になりやすい果樹栽培。既存のやり方を土台にしながら、省力化技術の導入、作業の分散、外部委託の活用を無理なく組み合わせていくことが、これからの安定した園地運営につながっていくのではないでしょうか。

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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