柑橘の施肥はどう変わる? 傾斜地の負担を減らすドローン散布の可能性


傾斜地の多い柑橘園では、肥料を担いでの施肥作業が大きな負担になることがあります。担い手の高齢化が進むなか、作業をどう続けていくかは多くの産地で共通の課題です。

そんな中で近年、農業用ドローンを使った肥料散布にも関心が集まっています。農薬散布による防除は進んでいますが、肥料となるとまだまだ実績も現場の理解も進んでいません。

今回は、柑橘栽培の施肥管理の基本を整理しながら、「ドローン施肥」という新しい選択肢について考えます。



柑橘園地の多くは傾斜地にある


日本の柑橘栽培は、和歌山県、愛媛県、静岡県、熊本県、長崎県など、比較的温暖な地域を中心に広がっています。これらの産地では、日当たりや水はけを確保しやすい傾斜地が多く利用されています。斜面地は柑橘の生育に向いた環境をつくりやすく、産地形成を支えてきた条件の一つといわれています。

一方で、傾斜地には農作業の機械化が進みにくいという側面もあります。多くの園地は戦後の開拓期に整備されたもので、作業道は人が荷物を持って歩ける程度の幅にとどまる場合も少なくありません。そのため大型機械が入りにくく、現在でも人力に頼る作業が多く残っています。


施肥は今も人力作業が中心。高齢化が施肥作業の負担を大きくする


柑橘栽培では、剪定、摘果、防除、収穫など一年を通して多くの作業があります。そのなかでも施肥は、樹勢を維持し果実の品質を整えるための基本的な管理作業の一つです。多くの園地では現在も、肥料袋を持って樹の周囲に散布する方法が広く行われています。

背負い式の動力噴霧機を使う場合でも、本体と肥料を合わせると相当な重量になります。傾斜地で移動しながら作業することになるため、年齢を重ねるほど体への負担を感じやすくなります。

農林水産省の統計(2020年農林業センサス)によると、基幹的農業従事者の平均年齢は67.8歳となっています。経験豊富な生産者が産地を支えている一方で、重い資材を持って斜面を歩く施肥作業は、継続的な経営を考えるうえで課題の一つになっています。

こうした状況のなかで関心が高まっているのが農業用ドローンです。農林水産省のスマート農業の取り組みでは、ドローンは農薬散布だけでなく、肥料散布やセンシングなど幅広い用途での活用が進んでいると紹介されています。

参考URL:農林水産省 農業労働力に関する統計
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html
参考URL:農林水産省 スマート農業
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/index.html


葉・枝・果実から栄養状態を見る


柑橘の施肥を考えるとき、まず大切になるのは木の状態を観察することです。葉の色や枝の伸び方、果実の様子などには、樹の栄養状態を示すヒントが表れることがあります。

たとえば、葉が小さく薄い場合は、栄養が不足している可能性があります。反対に葉が濃く大きすぎる場合には、窒素が多い状態になっていることも考えられます。こうした変化を見ながら施肥を調整していくことが、柑橘栽培の基本的な管理の一つとされています。

葉の状態から見る肥料の目安
葉の状態考えられる要因確認したいポイント
葉が小さく薄い 栄養不足の可能性 窒素・微量要素
葉が濃く大きい 窒素過多の可能性 施肥量や時期
葉が黄色い 養分偏り・吸収不良 鉄・マグネシウムなど

ただし、葉の状態だけで肥料量を判断するのは難しい場合もあります。気温や水分条件、前年の着果量なども樹勢に影響するため、複数の要素を合わせて確認しながら判断していくことが重要になります。

果実の様子も重要な手がかりになります。実が小さい場合は栄養不足だけでなく、水分不足や着果量の多さが影響していることもあります。また、糖度が上がりにくい場合も、日照条件や摘果などさまざまな要因が関係することがあります。施肥は単独で考えるのではなく、栽培管理全体の中で調整していくことが求められます。


土壌状態も重要な判断材料


施肥を考える際には、土壌の状態も確認しておきたいポイントです。土が固く締まっている場合、根が広がりにくくなり、肥料を入れても十分に吸収されません。

また、水はけが悪い園地では根の働きが弱くなり、養分吸収が安定しない場合もあります。傾斜地の園地では、同じ園地の中でも土の深さや水分条件が変わることがあり、樹ごとに生育差が生じることもあります。

そのため施肥を検討する際には、葉や果実の状態だけでなく、土壌や園地環境も合わせて確認することが大切です。



ドローン施肥で確認したいポイント


ドローンによる肥料散布は、従来の手作業による施肥と目的は同じですが、散布方法が異なるため、いくつか確認しておきたいポイントがあります。

従来の施肥では、樹の根元や樹冠の下に人が歩いて肥料を配置するのが一般的です。一方、ドローン施肥では上空から散布するため、肥料の落ち方や分布の仕方が変わる場合があります。

そのため、肥料の種類や施肥の目的によっては、これまでと同じ資材・同じ方法で問題ないかを改めて検討することが必要です。たとえば、速効性肥料と緩効性肥料では、散布後の効き方の考え方が異なる可能性があります。

施肥時期については、基本的に従来の時期をベースに考えることが多いですが、気象条件や樹の状態によっては、作業タイミングの調整が求められる場面もあります。

こうした点を踏まえると、ドローン施肥は「従来の施肥を置き換えるもの」というよりも、「施肥の方法を変える取り組み」としてとらえることが重要です。

散布時に確認しておきたいポイント

ドローン施肥では、圃場条件や資材の特性によって散布の仕上がりが変わるため、事前の確認が重要です。これらは「どのように散布されるか」を事前に考えるための前提となる項目です。

確認項目確認したいポイント
樹の高さ 上部に肥料が集中しやすく、下層への分布にばらつきが出る可能性がある
枝の密度 枝葉が込み合っている場合、内部や地表まで肥料が届きにくいことがある
風の状況 風の強さや向きによって飛散や分布に影響が出る場合がある
散布時期 春肥・夏肥・秋肥など、時期によって樹の状態や吸収の考え方が異なる

たとえば、樹の高さや枝の密度によっては、上から散布した肥料が地表まで届きにくい場合があります。その際は、散布量や飛行条件の調整、または従来の施肥方法との併用も選択肢になります。

風の影響も特に重要な要素です。風の強さだけでなく、地形による風の流れの変化も考慮することで、より安定した散布につながります。

また、剪定により樹形自体を低く抑えて、ドローンによる防除・施肥の効果を高めた事例もあります。

参考URL:農林水産省 スマート農業
https://ipcsa.naro.go.jp/resources/column/arcihves/20260204102052.html


柑橘栽培を支える施肥管理と新しい選択肢


柑橘栽培の施肥管理では、葉や枝、果実の状態に加えて、土壌や気象条件などさまざまな要素を総合的に見ていくことが大切になります。木の状態を毎年観察しながら施肥を調整していくことが、樹勢の維持や果実品質の安定につながると考えられます。

その一方で、傾斜地の多い柑橘園では、肥料を運びながら斜面を歩く施肥作業が体への負担になりやすい面もあります。近年は、こうした作業負担を軽減する方法の一つとして、ドローンによる肥料散布にも関心が集まっています。

木の状態を見極める栽培管理を基本としながら、必要に応じて新しい技術を取り入れていく。そうした組み合わせが、これからの柑橘栽培を支える一つの形になっていくと考えられます。

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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