初期除草はなぜ効く?水稲の雑草発生と5〜6月の作業の優先順位

田植え前後の時期は、代かきや移植、水管理と作業が重なりやすく、除草は後回しになりがち。ただ、実際にはこの初期対応の組み方によって、その後の管理負担や圃場の状態に差が出ることもあります。

とはいえ、「とにかく早く除草する」という単純な話ではなく、雑草の発生の仕組みや作業の流れを踏まえて判断する必要があります。この記事では、水稲の初期除草の考え方と、現場での作業の組み立て方を整理します。



雑草はなぜ一斉に出てくるのか


水稲圃場では、土壌中に過去の雑草種子が蓄積しており、条件が揃うと一斉に発芽することがあります。いわゆる「土壌シードバンク(土壌種子バンク)」の影響です。

発芽のきっかけとなるのは、主に温度、水分、光。春先は地温が上がり、代かきや入水によって水分条件も整いやすくなるため、発芽のタイミングが集中します。

とくに水稲では、代かきによって土壌が撹拌されることで、これまで地中にあった種子が表層に移動。その後、湛水状態になることで発芽条件が揃い、雑草が一斉に出やすくなります。

つまり、雑草の発生は自然条件だけではなく、水稲の作業工程そのものとも関係しています。どのタイミングで発生しやすいかを把握しておくことが、初期除草を考えるうえでの土台になります。


初期除草が重要とされる理由


雑草管理は栽培期間を通して続きますが、水稲ではとくに初期対応がその後の管理に大きく影響します。

移植直後は、稲自体がまだ十分に株を広げていない段階です。一方で、ノビエ類など一部の雑草は初期生育が早く、条件が揃うと短期間で生長する傾向があります。雑草が先に優勢になると、光や養分、水分をめぐる競合が早い段階で始まります。

また、初期除草剤は多くの場合、水面を通じて土壌表面に「処理層」を形成し、その層の中で発芽直後の雑草に作用する仕組みが一般的です。そのため、発芽前〜発芽初期のタイミングで処理することが、効果を安定させるうえで重要です。

さらに、初期に発生量を抑えられると、中期以降の除草作業を補完的な対応にしやすく、結果として繁忙期の作業集中を緩和することにつながります。



初期除草の優先順位の考え方


初期除草は、水稲の作業工程の中で組み立てていく必要があります。実際の現場では、「どの雑草が、どの工程で発生しやすいか」を整理しながら、作業の順番を考えることになるでしょう。

以下の表は、水稲の初期除草工程ごとに、発生しやすい雑草を整理したものです。地域や水田条件、前年の発生状況によって差はありますが、一般的な傾向として参考になります。


①代かき前後では、ノビエ類、コナギ、ホタルイ、クログワイなど、前年から土壌中に残っていた種子や塊茎由来の雑草が発生しやすくなります。この段階では、均平を整えながら土塊を減らし、水深のムラを抑えることが、その後の除草効果を安定させる土台になります。

次に、②初期除草剤の処理期(移植前後〜発芽初期)では、ノビエ類やコナギ、アゼナ類などの一年生雑草が発芽し始めます。発生初期の生育が早いため、発芽前後のタイミングに合わせて除草剤で処理を行い、後の競合を抑えやすくします。

その後の③水管理期では、除草剤の処理層を維持するための湛水管理が重要になります。また、漏水や落水によって水深が不安定になると、ノビエ類やコナギ、ホタルイなどの後発雑草が発生しやすくなります。特に漏水しやすい圃場では、水管理そのものを優先することもあります。

④機械除草や補助対応の段階では、薬剤だけでは抑えきれなかった雑草への対応を行います。水田除草機や中耕除草機、田車などを使った条間除草や、部分的な補完作業によって、株間や発生の偏りやすい場所を調整していくイメージです。とくにクログワイやオモダカ、ウリカワなどの多年生雑草は、地下部から再生することがあるため、局所的な対応が必要になります。

最後に、⑤取りこぼし対応から中期管理への接続期では、残った多年生雑草や後発雑草を確認しながら、必要に応じて部分的に対応します。

初期除草は一度の処理で完結するというよりも、各工程で発生しやすい雑草に合わせながら、様々な対応を組み合わせていくことが重要になります。

このように、作業フローをまとめてみましたが、実際の現場では圃場条件によって優先すべき工程は変わります。水持ちが安定している圃場では、【代かき → 初期除草剤 → 補完対応】というように、除草剤を中心に組み立てやすいでしょう。

一方で、漏水しやすい圃場では、水管理が不安定だと処理層が崩れやすくなるため、【代かき → 水管理を安定させる → 初期除草剤】といったように、水の安定を優先して組み立てます。


初期除草は「どこに効かせるか」で考える


初期除草は、「早くやるかどうか」だけではなく、「どの工程で効かせるか」を意識することで整理しやすくなります。

水稲では、代かき、水管理、移植といった工程が重なり合いながら、雑草の発生条件が整っていきます。単独の作業として考えるよりも、工程全体の流れの中で位置づけるほうが、現場では判断しやすいでしょう。

圃場条件や地域差、作業体制によって、優先すべき工程は変わります。水持ちの良い圃場と漏水しやすい圃場では、同じ方法でも結果が異なる場合があります。

どの工程で雑草が発生しやすいのか、どこで抑えやすいのかを振り返りながら、自分の圃場に合った形で作業の順番を見直していくことが、初期除草を安定させる一つの考え方になりそうです。

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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