あなたはいくつ当てはまる? 「農家の失敗あるある」ランキング

農業は、決まった作業を行っていれば毎年必ずうまくいく、という仕事ではありません。苗などの植物自体が育とうとする力も必要ですし、その年の天候、圃場条件などの環境や、人手、機械、資材の効き具合といったさまざまな「都合」が重なります。

「分かっていたのに……」「去年は大丈夫だったのに……」「あとでやろうと思っていたのに……」。そんな小さな油断が、あとから地味に品質や収穫量に響くこともあります。

もちろん、失敗は経験不足だけで起こるものではありません。作業時期が重なり、天気が読みにくく、人手も限られるなかでは、ベテランでも判断に迷うことだってあります。

ですが、失敗体験を見聞きしておくことで、失敗を未然に防ぐことはできます。

今回は、そんな“農家の失敗あるある”を、農林水産省がまとめた事例や注意喚起の資料と、SMART AGRI編集部が取材を通して見聞きした情報から、ランキング形式でご紹介。失敗を未然に防ぐための方法や便利なツールなども合わせてご紹介していきます。

他人の話は笑えますが、自分の話だとしたら怖いものも……現場の農家さんが共感しつつ、少し背筋を伸ばすきっかけにしていただければ幸いです。


第5位 「あとで記録しよう」はだいたい思い出せない


(イラスト:SMART AGRI編集部 生成:Gemini)
誰だって日々の中で怠けてしまうことはあります。1日中圃場を巡ってへとへとで帰ってきた農家さんともなれば当然んこと。でも、その日の作業の直後はしっかり覚えているつもりでも、記録を忘れてしまって数時間、数日経つと、「あの圃場、いつ追肥したっけ……」「防除したのは朝だったか夕方だったか」といったことが曖昧になりがちです。

忙しい時期ほど、人の記憶はうまく働いてくれません。しかも、思い出したつもりの記録があとで見ると「おそらく」「例年どおり」と、ふんわりした情報になってしまうこともあるでしょう。

日々の作業記録なんてしなくても、作物はきっちり収穫できるかもしれません。ですが、自分の作業を残しておくことは未来の自分への申し送りでもあります。圃場ごとの違い、天候、作業日、資材の使用量、気になった生育の差などを少し残しておくだけで、次に何か起きた時の判断材料として活用できるようになります。

手っ取り早いのは、自分の記憶力に頼りすぎず、記録しやすい営農管理ツールを使うこと。スマホの営農管理システムなどのアプリを使えば、定型作業として短時間で記録したり、あとから振り返りやすい方法で残すことができます。

アプリのいいところは、従業員一人一人が自分の作業を記録する習慣をつけられる点。各工程で実施、記録、点検、評価を行うことで、将来的にGAPなどに対応したい時も容易になり、持続的な作業の見直し・さらなる効率化にもつなげられます。

記録は単なる事務作業ではなく、食品安全、環境保全、労働安全、経営改善にもつながる取り組みです。日々の営みを決まったかたちで記録しておくことが、農家にとって有益だということを実感すれば、自然とその重要性がわかってくるでしょう。


第4位 「天気、たぶん持つだろう」で予定を組む

(イラスト:SMART AGRI編集部 生成:Gemini)
農業の現場では、天気に振り回される場面が多々あります。空を見て「いける」と判断した直後に雨雲が来る。逆に、雨予報を見て構えていたら一滴も降らない、なんてことも。

とはいえ、天気予報だけでは作業予定を決められないのも現実です。人手の確保、機械の空き、出荷時期、ほかの作業との兼ね合いなどが複雑に重なり、生育時期に合わせて作業しなければ間に合わない時期などは、「今日やるしかない」という日もあるでしょう。

ただ、天気のせいにしたところでなんの解決にもなりません。気象情報を“見るだけ”でなく、作業の優先順位を組み替える材料にすることはできます。

たとえば、雨が降る前に済ませたい作業(例:耕起や播種、施肥、病気予防の薬剤散布)、雨後に回したほうがいい作業(例:定植や追肥)を切り分ける、ぬかるみやすい圃場の作業を後回しにするなど、「雨が振ったらこうしよう」「天気が持ったらこれをしよう」と心構えをするだけでも、後々の作業の段取りは変わります。

一般的な天気予報ではなく、圃場ごとのピンポイント天気や日射量・風向予報を確認できる農業専用の精度の高井気象アプリ・営農管理ツールも増えています。これらを活用することで、「◯時の雨雲が抜けたタイミングで、あの圃場の作業に入ろう」といった、より緻密でピンポイントな判断も可能になります。

また、農林水産省も気象庁の気象情報などに基づき、農作物等の被害防止に向けた技術指導通知を出しています。「台風前の排水路の整備」「猛暑時の高温障害対策」といった具体的なアクションは、有益な情報源にもなります。

人は自然に勝つことはできませんが、「予定どおりに進まない前提」で、代わりにできる作業を用意しておくことはできます。「空模様と作業予定表は、仲が悪い日もある」くらいの気持ちで構えておくと、少し楽になるかもしれません。


第3位 「ちょっとだけだから……」と安全確認を省く


(イラスト:SMART AGRI編集部 生成:Gemini)
「すぐ終わるから」「慣れているから」「毎年やっているから」。こんな言葉が浮かんできたときほど、何かに追われていたり焦っている証拠です。そういう時は、いったん深呼吸して冷静になりましょう。

特に農機などを使う作業では、短時間でも傾斜やぬかるみ、段差、暑さなどが重なると、思わぬ事故につながることがあります。長年慣れ親しんだ機材を使っている時ほど、慎重さが求められます。

農林水産省が毎月公表している、「農作業死傷事故の発生状況」によれば、2026年(令和8年)3月の情報で、報告された死傷事故25件のうち、12件の死亡事故が起きています。農作業機械に係る事故17件のうち、乗用型トラクターによる事故は8件とされています。

こうした事故を防ぐため、農研機構の農作業安全情報センターでは、実際の事故事例について、被災者、機械・用具、作業環境、安全管理体制などに分けて原因を整理しています。単なる注意喚起にとどまらず、危険源を把握して改善することが事故防止につながるとしています。

慣れは、スムーズな現場作業を支える大切な力です。ただし、慣れがあるからこそ慎重に機械や周囲の確認をすることが、致命的な失敗を防ぐ上で重要です。

  • 機械の詰まりを取る前にエンジンを停止したか
  • 圃場の出入口や路肩に崩落やスリップの危険がある場所はないか(把握しているか)
  • 単独作業のとき、通信手段(スマホなど)を確保し、家族や従業員と連絡が取れる状態か

こうした確認は、忙しい時期ほどおろそかになりがちです。「ちょっとだけ」の作業ほど、基本に立ち返る──命を守るためにも大事な“失敗あるある対策”と言えます。


第2位 資材・農薬の確認を「前と同じ」で済ませる

(イラスト:SMART AGRI編集部 生成:Gemini)
「去年もこれを使ったから大丈夫」「いつもの希釈率でいいはず」「この時期は毎年これだから」。こうした経験則でスムーズな作業ができることも多々あります。

一方で、資材や農薬は、対象作物、使用時期、使用回数、希釈倍率、収穫前日数、周辺環境への配慮など、確認すべき点が多い分野でもあります。

特に農林水産省は春先のこの時期に、農薬の適正な使用に関する情報をまとめ、農薬使用に伴う事故や被害、飛散防止、残留農薬制度などの情報を掲載しています。住宅地周辺や学校、公園など、不特定多数の人が立ち寄る場所での農薬使用についても、飛散が周辺住民や子どもなどに被害を及ぼすことを防止するための通知やリーフレットを案内しています。

農薬の使い方などはラベルにしっかり明記されていますが、小さな文字が多く、繁忙期にじっくり読むのはなかなか大変です。それでも、確認を省いてしまったときの影響は小さくありません。

使用前に見るだけでなく、

  • よく使う資材ほど、確認しやすい目線の高さや場所に配置する
  • 「使用記録をつける(スマホで入力する)までが散布作業」とし、記録アプリと連動させて使用回数エラーを防ぐ
  • 散布前に作業メンバー全員で対象農薬の情報を確認する

など、確認作業をルーティーン化することが大切です。

円滑な農作業を優先するあまり、安全性を見落としてしまっては元も子もありません。農業における環境への配慮、環境保全の考え方が以前よりも重視されるようになってきたことからも、農薬や肥料を扱う農家は、細心の注意を払って作業を行うことが求められます。


第1位 片付け・点検・共有を「収穫後でいいか」と後回しにする


(イラスト:SMART AGRI編集部 生成:Gemini)
誰だって、収穫や出荷が終われば、心の中では一区切り。「片付けはあとで」「点検は時間ができてから」「申し送りは次の作業前でいいか」となりがちです。

ただ、その“あとで”はなかなか来ません。翌シーズンが近づいてから、機械の不調、資材の不足、作業小屋の乱雑な状態、圃場周りの危険箇所などに気づき、過去の自分に腹を立てる。これもかなり多い農家あるあるではないでしょうか。

農林水産省の農作業死傷事故情報では、農閑期の4S、つまり「整理」「整頓」「清掃」「清潔」を意識することや、ヒヤリハットの共有なども注意喚起のテーマとして取り上げられています。

片付けや点検は、たしかに売上につながる作業とは言えないかもしれません。そのため、どうしても後回しになりやすいという気持ちもよく分かります。

しかし、機械の清掃、消耗部品の確認、資材の在庫確認、作業小屋の整理、圃場出入口の点検、家族や従業員との申し送りといったことは、結局のところ、翌シーズンの自分自身の作業を楽に、円滑にするための大事な準備でもあります。

シーズン直後にやっておきたいルーティーンとして、

  • 機械は泥や残渣を落として清掃し、消耗部品の摩耗をチェックしておく
  • 資材の在庫はしっかり数え、劣化を防げる安全な場所に保管する
  • 家族や従業員の間で、相互に起きたヒヤリハットを共有し、記録しておく

こうしたことをほったらかしにしていると、「翌シーズンの自分」はもっと困るかもしれません。未来の自分にできることは、今の自分にできることとそう変わりません。あまり自分を過信せず、未来の自分に丸投げしすぎないことが、大きな失敗を招かないための一番の対策です。


“失敗あるある”は次の作業を楽にするためのヒント


今回は、農水省などが注意喚起している作業を参考に、「失敗あるある」というかたちでいくつか例を上げてきました。これらは農家の経験不足などで起こるものではありません。天候の変化、作業時期の重なり、人手不足、圃場ごとの差、機械や資材の都合が重なれば、誰でも判断に迷う場面に出くわします。

大切なのは、「失敗あるある」と笑って終わらせないこと。記録、確認、共有、点検といったどこかの時点で少しだけ気を配れれば、次の作業は少し進めやすくなります。

自分の圃場や作業体制に照らしてみた時に、自分の経験や体験の中で起こりそうな“あるある”がもし気になったら見直してみる。それだけでも、次のシーズンの未来の自分を少し助けることになるはずです。

次の“失敗あるある”を減らすために
人手や天候に左右される作業をすべて自力で抱える必要はありません。
ドローン散布などの農作業代行サービスの活用も選択肢のひとつです。
まずは、自分の地域や作物でどんな作業が対象になるのか確認してみてください。
▶︎プロによる農作業代行サービスを確認する
 
相談・問い合わせ(フォーム)
※対応エリア・料金・作業条件は、地域や圃場状況等により異なる場合があります。


参考資料・リンク
農林水産省「農業生産工程管理(GAP)に関する情報」
農林水産省「農作業死傷事故の発生状況」
農研機構「農作業安全情報センター 事故事例検索」
農林水産省「農薬の適正な使用」
農林水産省「被害防止等に向けた技術指導」

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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