秋冬ネギの品質向上は高温対策が勝負!|5〜6月に行いたい管理方法

秋冬ネギは、3〜5月にかけて種をまき、夏に定植して10月〜翌年3月頃に収穫される根深ネギ(白ネギ)です。寒さに当たりながら白根を太らせ、甘みや締まりを高めていきます。しかし近年は、猛暑や局地的豪雨の打撃によって、「秋に太りにくい」「白根がそろいにくい」「後半で草勢が落ちる」といった課題が各地で見られるようになりました。

そのため、「秋にどう太らせるか」だけではなく、「夏場にどれだけ根と葉を維持できるか」が、美味しい秋冬ネギづくりのポイントになっています。

では実際に、近年の高温・豪雨環境の中で、秋冬ネギの品質や収量を高めるためには、どのような栽培作業が求められるのか、夏場の根・葉・排水環境を中心に見ていきましょう。


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秋冬ネギは“夏の根”で後半が決まる


秋冬ネギの白根部分が本格的に肥大するのは秋以降ですが、その土台は夏場に作られます。特に7〜8月は、葉数を確保しながら根を維持する大切な時期です。

この段階で根が弱ると、秋に気温が下がっても吸肥力が戻らず、白根径不足や重量不足のまま収穫を迎えるリスクが高まります。

近年は、高温と豪雨の繰り返しによって根傷みが起こりやすくなっています。ネギは浅根性で酸素を好むため、土壌に水がたまると根が酸欠に陥り、葉色低下や生育停滞を招きます。水田からの転換で作られているネギ畑では、耕盤層(表土の下にある硬い地層)による排水不良が起こりやすく、一時的な滞水でも後半の生育へ響きやすい傾向があります。

高地温の影響も深刻です。猛暑年は地表付近の温度が極端に上がるため、浅根のネギは根域全体で高温ストレスを受けます。黒マルチや締まった土壌では地温が上がりやすく、吸水・吸肥が乱れることで、日中のしおれや葉先枯れを招くケースも増えています。

高温下で窒素を強く効かせると、一時的に葉は伸びても軟弱化しやすく、病害や葉先枯れに直結します。草勢を急激に上げるより、根域環境を落ち着かせながら秋へつなぐことが基本となっており、「肥料を効かせて伸ばす」より、「根を弱らせない」方向へと、考え方も変わってきました。

さらに近年は、品種選びにも変化が出ています。以前は、秋以降の肥大性や白根のそろい、食味が選択理由の中心でしたが、現在は「高温下でも根が止まりにくい」「夏場でも葉を維持しやすい」といった"夏越し性能"を重視する産地も増えています。

下仁田ネギ系統のような伝統野菜でも、高温や病害への適応を意識した改良が進み、種苗メーカー各社から耐暑性・耐病性を強化した秋冬ネギ品種が登場しています。


「葉を増やす」から「葉を残す」管理へ


秋冬ネギでは、夏場の葉の様子がそのまま秋以降の肥大へ直結します。葉が健全に維持されていれば、秋以降も光合成による養分供給が続き、白根部分の肥大にもつながりますが、近年は葉焼けや葉先枯れ、病害によって葉量が落ちやすくなっています。

以前は「葉数を増やす」ことが作業の中心でしたが、現在は「最後まで葉を残せるか」がカギを握っています。

8〜9月の高温障害は、夜温が高い日が続くことで株の消耗が進み、見た目以上に根が弱っているケースも少なくありません。そのような局面で肥料を強く効かせると葉が軟弱化し、べと病やさび病に直結しやすくなります。

葉量が多すぎる圃場では株元の通風が悪化し、蒸れによって病害が広がりやすくなります。近年は、豪雨後にすぐ高温へ戻る気象パターンも増えており、この「湿度が抜けにくい」環境が病害発生の大きな要因となっています。そのため、農林水産省の高温対策資料でも、「過繁茂の回避」と「通風の確保」の重要性が強く示されています。

土寄せの考え方も変わってきました。以前は白根長を確保するために深く寄せる作業が一般的でしたが、高温時に一気に深寄せすると、株元が蒸れて根傷みを招く場合があります。現在は、生育や降雨状況を見ながら、数回に分けて段階的に寄せる方法が増えています。

台風への備えも欠かせません。9月以降も高温が続く年は、倒伏後に蒸れが抜けず、そのまま軟腐病(細菌の侵入により腐敗してしまう病気)に直結するケースも目立っています。倒伏防止だけでなく、「倒れても蒸れにくい圃場環境づくり」を心がけたいところです。


豪雨時代は「排水性」が収量差を生む


近年の秋冬ネギでは、「肥沃な圃場」より、「水が残らない圃場」のほうが収量を保ちやすいと言われています。

問題になっているのが、短時間豪雨による一時滞水です。ネギは浅根性のため、数時間の滞水でも根が酸欠に陥りやすく、根の吸水・吸肥が不安定になります。湿害を受けてもすぐ枯れるわけではなく、「細いまま止まる」形で後半まで尾を引く点が厄介です。見た目には回復していても、収穫時に白根径や重量不足として差が出る事例もあります。

農林水産省では、豪雨への備えとして高畝栽培や明渠暗渠排水、圃場外への排水経路確保などを推奨しています。水田転換畑では、畝間排水だけでは間に合わないケースも増えており、「圃場内に水をためない構造づくり」が重要になっています。

茨城県農業総合センターでは、水田転換畑におけるネギの継続生産技術として、明渠・暗渠を組み合わせた排水改善技術を紹介しています。地下水位を下げることで湿害を軽減し、梅雨明け後の根の活力維持や、その後の白根肥大へつなげる取り組みが各地で進んでいます。

イラスト:SMART AGRI編集部(生成:Google Gemini)

「高温前提」の栽培設計が安定生産への近道


近年の秋冬ネギ栽培では、収穫期の肥大だけを見るのではなく、「夏場をどう越えるか」が生産の成否を分けるようになっています。猛暑の長期化や夜温上昇によって、以前のように「秋になれば回復する」という場面は減り、夏場のダメージがそのまま後半まで残るケースも増えました。

高温・豪雨・高地温が同時に起こる年も増えています。滞水による根傷み、葉焼け、湿度上昇による病害などが重なることで、秋以降に白根が伸び切らない、締まりが悪いといった影響も出ています。

そのため最近は、「強く伸ばす作業」より、「極端に落とさない作業」へと考え方が移っており、
  • 追肥を一度に効かせ過ぎない
  • 土寄せは段階的に行う
  • 排水性を優先した圃場設計を行う
といった、夏場に根と葉を維持しながら秋へつなぐ栽培が基本になっています。

品種選びでも、従来の肥大性や食味だけでなく、「高温下でも葉が傷みにくい」「湿害後の回復が早い」といった"夏越し性能"を見る産地が増えています。

秋冬ネギは秋冬に仕上がる作物ですが、実際には夏場の栽培判断が品質と収量を左右します。これからは、「秋にどう太らせるか」だけでなく、「夏場にどう崩さないか」という視点が、安定生産の鍵になりそうです。


参照記事
農林水産省「気候変動適応計画」
埼玉県農林部「高温に対する農作物等管理技術対策について」
熊本県宇城市役所「農作物などの豪雨・台風対策について」
茨城県農業総合センター「排水対策施工による水田転換畑におけるネギの安定生産技術」
FNNプライムオンライン(2024年〈令和6年〉12月配信)「気候変動による農業への影響が深刻化…農作物に過去最大の被害」
農林水産省「野菜における夏季の高温対策」




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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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