「ジェネリック農薬」という言葉を聞いたことはありますか?【フードカタリスト・中村圭佑のコラム 第3回】
SMART AGRI読者の皆様、こんにちは。FOOD BOX株式会社の中村圭佑です!
前回は、日本における新たな取り組みである「農業のフランチャイズ化」について、具体的な事例を交えてご紹介しました。
今回から、海外における農業の具体的取り組みをご紹介したいのですが、その前に「世界から見た日本農業界のここが変だよ」という点を書いてみたいと思います!
読者の皆さんに質問ですが、病院に行き、調剤薬局でお薬をいただいた際、「ジェネリック医薬品」という言葉を聞いたことはありますか?
ここ10年強で広く認知・利用拡大され、積極的にジェネリックを選ばれている方も多いかもしれません。いわゆる「後発医薬品」と呼ばれ、主成分が新薬と同等なのに、価格が3割以上、成分によって半分以下の価格と安く、国全体の医療費削減、家計負担を軽くすることが可能です。
なぜこれだけ安いのかというと、ジェネリックは特許切れでレシピが公開された医薬品のため。新薬(新成分)を開発する際の研究・開発コストがかかっていない分、価格を安く抑えられています。
では、農業の話に戻して再度、皆さんにご質問です。
「ジェネリック農薬」という農業資材があるのをご存じでしょうか?
私の予想では、「ジェネリック農薬」の存在を知っている方は非常に少なく、そもそも日本で見かけたことはほとんどないと思います。一部の除草剤・殺菌剤等で相当量販売できる製品に限り、日本国内で販売されています。
しかし、実は日本以外の国々では、当たり前に「ジェネリック農薬」が販売されており、農家さんのニーズや掛けられるコストに合わせて、同じ有効成分でも複数製品から選ぶことができます。
実は、私は2010年~2017年まで、日本農薬株式会社という老舗農薬メーカーの海外営業部(中国・台湾担当)として、東アジアを中心に農薬を通じて農業に深く携わっていました。その中で、中国市場において今回のジェネリック農薬のメーカーと一緒に仕事をしていましたので、ジェネリック農薬の知見は相当持っていると自負しています。
もちろん、農薬の良い点・悪い点も理解しており、消費者さんが懸念されている点や批判されている点も十分承知しています。先進国では今後はより減農薬やオーガニックの流れ、農薬をより少なくという流れになると思いますし、そうあるべきだと考えています。
今回は、農薬が良い・悪いという議論ではなく、農薬という農業資材の一つを取っても、日本の農業界は変だなと思う点を正直に書こうと思います。
読者の皆さんの中にも、なぜ日本においてジェネリック農薬という安全性が担保され、価格(コスト)が抑えられる農業資材が普及していないのか、疑問に思われると思います。
医薬品の事例から考えても、農薬コストが大幅に下がる=生産資材コストが下がり、結果として「消費者の方々に、より適切な価格で国産農産物をご提供」できることに繋がります。
実際、ジェネリック農薬が普及していない背景として、私は主に下記3つがあると考えています。
上記1は、現在緩和される方向にありますが、2と3は日本特有の問題とも言えます。
皆さんが一番興味をお持ちの、どの程度価格が違うのかという点ですが、下記表の通り、アファーム(殺虫剤)とトップジンM(殺菌剤)、そしてそれぞれのジェネリック農薬で比較をしてみました!
結果は、アファーム乳剤と全く同じ1%液剤で価格差が1/20〜1/30と安い状況で、ジェネリック農薬は非常に安価になっています。また、トップジンMも同一商品で、価格差が1/6と非常に安価です。
ここまで、ジェネリック農薬について見てきましたが、最後にメリットと懸念点をまとめてみましょう。
懸念点については、ジェネリック農薬であっても農薬取締法上での散布回数・濃度はきちんと規定されており、オリジナル農薬とまったく変わりません。
効かなくなるというのは、虫や病気に抵抗性が出ている状況ですが、オリジナル・ジェネリックともに同じ有効成分なので「効かない」という状態に差異はありません。効きが悪くなったので回数や薬量を上げるというのは間違いで、むしろ効かない状況を加速させているということにつながります。
よって、作用機作(効くポイント、例:神経、筋肉等)が違う農薬を、ローテーションして散布いただくことが重要です。ちなみに、実は長年使っていなかった農薬の効果が回復していることも稀にあります。
使い方を間違えなければ、ジェネリック農薬は日本でもコスト削減のために活用できるのです。
さて、今回はジェネリック農薬を中心に「世界から見た日本農業界のここが変だよ」という点を見てきました。次回は「オリジナル農薬の重要性」に焦点を当ててみたいと考えております。
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前回は、日本における新たな取り組みである「農業のフランチャイズ化」について、具体的な事例を交えてご紹介しました。
今回から、海外における農業の具体的取り組みをご紹介したいのですが、その前に「世界から見た日本農業界のここが変だよ」という点を書いてみたいと思います!
読者の皆さんに質問ですが、病院に行き、調剤薬局でお薬をいただいた際、「ジェネリック医薬品」という言葉を聞いたことはありますか?
ここ10年強で広く認知・利用拡大され、積極的にジェネリックを選ばれている方も多いかもしれません。いわゆる「後発医薬品」と呼ばれ、主成分が新薬と同等なのに、価格が3割以上、成分によって半分以下の価格と安く、国全体の医療費削減、家計負担を軽くすることが可能です。
なぜこれだけ安いのかというと、ジェネリックは特許切れでレシピが公開された医薬品のため。新薬(新成分)を開発する際の研究・開発コストがかかっていない分、価格を安く抑えられています。
「ジェネリック農薬」とは?
では、農業の話に戻して再度、皆さんにご質問です。
「ジェネリック農薬」という農業資材があるのをご存じでしょうか?
私の予想では、「ジェネリック農薬」の存在を知っている方は非常に少なく、そもそも日本で見かけたことはほとんどないと思います。一部の除草剤・殺菌剤等で相当量販売できる製品に限り、日本国内で販売されています。
しかし、実は日本以外の国々では、当たり前に「ジェネリック農薬」が販売されており、農家さんのニーズや掛けられるコストに合わせて、同じ有効成分でも複数製品から選ぶことができます。
実は、私は2010年~2017年まで、日本農薬株式会社という老舗農薬メーカーの海外営業部(中国・台湾担当)として、東アジアを中心に農薬を通じて農業に深く携わっていました。その中で、中国市場において今回のジェネリック農薬のメーカーと一緒に仕事をしていましたので、ジェネリック農薬の知見は相当持っていると自負しています。
もちろん、農薬の良い点・悪い点も理解しており、消費者さんが懸念されている点や批判されている点も十分承知しています。先進国では今後はより減農薬やオーガニックの流れ、農薬をより少なくという流れになると思いますし、そうあるべきだと考えています。
今回は、農薬が良い・悪いという議論ではなく、農薬という農業資材の一つを取っても、日本の農業界は変だなと思う点を正直に書こうと思います。
日本で「ジェネリック農薬」が普及しない理由
読者の皆さんの中にも、なぜ日本においてジェネリック農薬という安全性が担保され、価格(コスト)が抑えられる農業資材が普及していないのか、疑問に思われると思います。
医薬品の事例から考えても、農薬コストが大幅に下がる=生産資材コストが下がり、結果として「消費者の方々に、より適切な価格で国産農産物をご提供」できることに繋がります。
実際、ジェネリック農薬が普及していない背景として、私は主に下記3つがあると考えています。
- 日本の農薬登録制度上、ジェネリック農薬の登録費用が非常に高く、投資回収に見合わない
- 日系農薬メーカーは、オリジナル品(特許品)を開発しているメーカーがほとんどで、日系メーカー同士が日系他社のジェネリック農薬を扱うことが業界としてタブーになっている
- 海外のジェネリック農薬メーカーが日本に参入したと仮定した場合、販売チャネルを押さえている特に系統(農協関連)が取り扱いを受け入れてくれない可能性が高く、販路確保が商系(卸やホームセンター等)のみと限られてしまう
上記1は、現在緩和される方向にありますが、2と3は日本特有の問題とも言えます。
皆さんが一番興味をお持ちの、どの程度価格が違うのかという点ですが、下記表の通り、アファーム(殺虫剤)とトップジンM(殺菌剤)、そしてそれぞれのジェネリック農薬で比較をしてみました!
結果は、アファーム乳剤と全く同じ1%液剤で価格差が1/20〜1/30と安い状況で、ジェネリック農薬は非常に安価になっています。また、トップジンMも同一商品で、価格差が1/6と非常に安価です。
ジェネリック農薬のメリット・デメリット
ここまで、ジェネリック農薬について見てきましたが、最後にメリットと懸念点をまとめてみましょう。
ジェネリック農薬のメリット
- 農薬コストが大幅に下がる=生産資材コストが下がり、結果として「消費者の方々に、より適切な価格で国産農産物をご提供」できることにつながる
ジェネリック農薬の懸念点と対応
- 一般消費者目線では、農薬コストの低下により、農薬散布回数が増えるのではないかなどの懸念点が出ることが予測される。
- 基本的にオリジナル農薬とジェネリック農薬で制度上の安全性担保は変わらない点など、消費者への啓蒙・理解を得る必要がある
- ジェネリック農薬と一概に言っても、製法や原材料により品質等のバラツキは大きく、きちんとした法律による規定、管理が必須。
懸念点については、ジェネリック農薬であっても農薬取締法上での散布回数・濃度はきちんと規定されており、オリジナル農薬とまったく変わりません。
効かなくなるというのは、虫や病気に抵抗性が出ている状況ですが、オリジナル・ジェネリックともに同じ有効成分なので「効かない」という状態に差異はありません。効きが悪くなったので回数や薬量を上げるというのは間違いで、むしろ効かない状況を加速させているということにつながります。
よって、作用機作(効くポイント、例:神経、筋肉等)が違う農薬を、ローテーションして散布いただくことが重要です。ちなみに、実は長年使っていなかった農薬の効果が回復していることも稀にあります。
使い方を間違えなければ、ジェネリック農薬は日本でもコスト削減のために活用できるのです。
さて、今回はジェネリック農薬を中心に「世界から見た日本農業界のここが変だよ」という点を見てきました。次回は「オリジナル農薬の重要性」に焦点を当ててみたいと考えております。
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【連載】フードカタリスト・中村圭佑の農業コラム
- 「農薬」は今後も必要なのか? 【フードカタリスト 中村圭佑のコラム 第4回】
- 「ジェネリック農薬」という言葉を聞いたことはありますか?【フードカタリスト・中村圭佑のコラム 第3回】
- 農業のフランチャイズ化は可能か? 【フードカタリスト・中村圭佑のコラム 第2回】
- 「農業コンサルタント」のイメージが悪いのはなぜか【フードカタリスト 中村圭佑のコラム 第1回】
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