作りやすくなった「農家レストラン」制度見直しの要点とメリット

2019年末に政府は、農家が農地を活用してレストランを開業する際、地目変更をしなくても建設できるようにすることを決定。現状では地目変更が必要ではあるが、2019年度中に関連法の法改正を進めていくという。

農地を利用したレストランは、今まで使われていなかった農地を活用できる他に、収穫体験などができる体験型レストランの開業などがしやすくなる。田園風景の中で食事を楽しめるという、町中のレストランとの差別化を図ることもできるため、田舎に憧れる層などの集客も期待できる。


今回は、農家にとって6次産業化を進めるチャンスである農地を利用しての農家レストランの可能性や、成功事例などを詳しく紹介していく。


「農家レストラン」とは

農家(農業・畜産業・漁業)が自家生産した野菜や肉などを自分たちで加工し提供しているお店のことを「農家レストラン」という。営業スタイルは採れたての野菜を郷土料理として提供するお店や、カフェやパン屋、ジェラート屋など多岐にわたる。

営業場所も、農村集落や住宅街、観光地などの道の駅に併設されている農家レストランもあり、立地は様々である。

自家生産したものを加工して提供するので、生産者の顔を知ることができる安心感から、食への意識が高い層などからも注目されている。


農地活用でレストランを開業するメリットと注意しておきたいこと

メリット

規制が緩和されることにより、農家の活動範囲の幅が広がるだけでなく、休耕地などの活用、農地を活かして収穫体験できるスペースを設けたりと、その土地の個性や風土を付加価値としてアピールすることも可能になる。

また、農家とレストランの両立をするうえでも、お互いが近くにあることで、空いた時間を効率的に活用できるのもメリットのひとつだ。


注意するべき点

農地を活用してレストランを開業する場合には、周辺の農地へ悪影響が出ないようにするなどの配慮が必要になってくる。また、レストランで使用する水の給水や排水方法、換気など、環境や衛生状態に関わってくる問題に関しては特に注意が必要だ。


農家レストラン開業までの5つのステップ

当然のことながら、レストランの経営は農業とは別の事業である。設立時のコストや食品のメニュー、人件費、月々の運用費などを綿密に計算できなければ、いくら転用が容易になっても収益化できるまでには時間もお金もかかってしまう。まずは綿密な計画を立てることが肝心だ。開業までの流れを、5つのステップで見ていこう。


ステップ1:経営方針を決める

農家レストランを開業すると決まったらどんな業態のお店にするのか、どんな料理を提供するかなどの経営方針を決める。


ステップ2:企画の立案

 お店の方針が決まったらメニュー開発や営農計画の他に、農家レストランの情報収集など事前調査を行う。


ステップ3:計画を具体化

レストランの計画を具体化するための店舗設計や経営計画、提供価格を決める。


ステップ4:営業許可申請の手続き

保健所などに相談をしながら、営業許可申請の手続きに必要な要件や書類などを準備しておく。併せて食品衛生責任者の資格も取得する。


ステップ5:開業

開業することができたら客の反応などに気を配りつつ経営状態の分析をする。余裕が出てきたら農家レストランらしさを出せるイベントなどを企画し盛り上げる。


農家レストラン取り組み事例

農家レストランという取り組み自体は「国家戦略特区」というかたちで実施されてきた。国家戦略特区は、6次産業化を進め、農家の所得を増加させることを目的とした制度。主な要件は地元産の食材をメインに料理を提供することで、全国に6つの特区を設置。具体的に農地を利用したレストランを開業しているのは、全国で11店舗だ。

ここで、実際の農家レストランの事例を見てみよう。


農家レストランいぶき

神奈川県藤沢市にある「農家レストランいぶき」は、関東で一番初めに国家戦略特区の承認を得て、農地にて開業した農家レストラン。藤沢市のブルーベリー農家事業者、農地所有者などで立ち上げた「株式会社いぶき」が運営している。地元の農産物を使用した健康的なメニューをビュッフェスタイルで提供し、食材は地元農家が協力し合っている。

野菜の収穫体験や味噌づくりワークショップなど、都会ではなかなか体験できないイベントも行っている。

株式会社くだもの厨房フクヨシ

山梨県山梨市牧丘町にある「株式会社くだもの厨房フクヨシ」は、巨峰を中心とした様々な果物を自社農園で生産しカフェを運営。笛吹川フルーツ公園内にある「オーチャードカフェ」(現在は閉店)からスタートし、2019年4月には3店舗目となるカフェをオープンした。カフェだけでなく、規格外の果物を利用した加工品の加工から販売までも行っている。

くだもの厨房フクヨシでは、「オーチャードカフェ」を運営する中で、イートインにより顧客の購買意欲が高まることに着目。個人経営での農業に限界を感じていたこともあり、法人化での事業拡大の取り組みを始めた。その中で見えてきた課題である規格外の農産物を活かすという点については、加工施設を設け、ピューレやドライフルーツなど売り上げが形に左右されない商品を生みだした。

さらに、加工品を売るための販路の確保には、展示会や商談会などに積極的に参加。自社ホームページも開設し販路の拡大を図っていったという。


農家レストランに取り組むための心構え

農家レストランをいざ始めるとなると、アイデアやコンセプト設定、試作品作りやマーケティングなど様々なプロセスが必要となってくる。それらを無視していきなり開業したり、ブランディングが上手くいっていない状態でスタートすると失敗してしまうこともある。

また、当然のことながら農業と飲食業を両立しなくてはならないので、美味しい野菜を作りつつ季節に合ったメニューなどの考案、設備作りやスタッフの雇用などタスクの多さに参ってしまい開業寸前のところで諦めてしまった事例もある。

そのため、農家レストランを始める際には、いきなりすべてのことを自分だけでやるのではなく、無理をせずできることからスタートさせるというのもリスクを減らすという点で重要になってくる。他の農業者や事業者などと連携し、地域ぐるみで協力し合うことも大事なポイントだ。

自分の強みを把握し、どう展開できるのか、具体的にターゲットである客がどんな物を求めているかなども考えなくてはならない。そのために必要な設備や知識な何なのか、資金はどれくらいかかるかなど、ひとつずつ課題をクリアしていく必要がある。

また、全国に6次産業化サポートセンターが設置されているので、農家レストランの開業で困ったことがあれば相談してみるのもいいかもしれない。6次産業化のプロであるプランナーが、商品開発やマーケティング、事業計画書などの書類作成までサポートし、農家レストランの開業を支援してくれるというサービスだ。

要件を満たせば補助金や融資を行ってくれるサービスもあるので、これらを上手く活用することで、農家レストランの夢への近道になるだろう。


里の物語
https://satomono.jp/restaurant/

農林水産省 農家レストラン開業について
https://www.maff.go.jp/kinki/seisan/syokuhin/6ji/pdf/09_restaurant.pdf
農林水産省 6次産業化取り組み事例
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renkei/6jika/pdf/pdf/2802_6jika_jirei_all.pdf
農林水産省 6次産業化サポートセンターについて
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renkei/6jika/pdf/pdf/2802_6jika_jirei_all.pdf
農家レストランいぶき
https://ibuki-farm-restaurant.com/
株式会社くだもの厨房フクヨシ
https://shop.hara-fruits.com/


【コラム】これだけは知っておきたい農業用語
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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  2. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX(現在登記準備中)を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  3. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  4. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  5. 藤本一志
    ふじもとかずし。大学・大学院の6年間を通して地域づくりと農業の活動に関わる。1年間のサラリーマン生活の後、学生時代から活動していた地域に移住し、2拠点居住を開始する。移住支援を通じた地域づくり活動に取り組む傍ら、兼業農家として稲作に取り組む。