「アグリワーケーション」とは?「農泊×ワーケーションシンポジウム」に参加して感じた受け入れ側の魅力と課題

時事通信社主催の「農泊×ワーケーション」の魅力と可能性~農泊地域ですごす、新たなワークスタイルとライフスタイル~と題したシンポジウムが、去る2021年1月27日に開催されました。

出典:土と海と人


登壇者には一般社団法人日本ファームステイ協会の事務局長である大野彰則氏をはじめ、ワーケーション利用者と受け入れ側両者の視点から、「農泊×ワーケーション」のこれからについて語られています。

今回の記事では、これから農泊を始めたいと考えている方や興味を持っているという方のために、シンポジウムで語られていた内容を基にアグリワーケーションの可能性や課題を共有していきたいと思います。

アグリワーケーションとは


出典:農林水産省

昨今のフリーランスの増加やコロナ禍によるリモートワークの推奨など、働き方が多様化したことにより、リモートワークを活用しながら休暇先で仕事をするワーケーションが広がってきています。そのワーケーションの滞在先として農山漁村で過ごす「農泊×ワーケーション」(以下、アグリワーケーション)にも注目が集まってきているのをご存じでしょうか。

アグリワーケーションには、農作業や体験がプランに組まれているものから、自然の中でリフレッシュしながらリモートワークに集中できる環境を整えるだけのタイプなどさまざまです。

最近では、IoTを活用した農業を推進するグリーンリバーホールディングスとDMM.comが共同で運用する、太陽光利用型植物工場とワークスペースを用意した「Veggie_Works」という新しいタイプのアグリワーケーション施設が誕生しました。

このようにアグリワーケーションいってもさまざまな形態がありますが、基本的には農山漁村が元々持っている魅力を最大限活かし、利用者に提供するというのが共通しているポイントです。

コロナ禍で高まる農泊へのニーズ


コロナの影響により観光業界は壊滅的な状況である一方、新しく農泊へのニーズが生まれつつあるようです。

2020年6月に株式会社百戦錬磨が実施したアンケート調査結果によると、コロナ禍において三密を避けることのできる農山漁村地域への旅行を希望する人が全体の60%、特に20代・30代では約70%の人が開放的な農山漁村への旅行に意欲を示していることがわかります。

出展:百戦錬磨

また、地域の魅力を再発見するためのマイクロツーリズムや、リモートワークをしながらの滞在が旅行目的として選ばれている傾向にあり、今後農泊やアグリワーケーションの需要が伸びることが期待されています。

国からの支援も


農山漁村の活性化を図る目的として、農林水産省では「農産漁村振興交付金」という支援を実施しています。その中でも農泊に焦点を当てた推進事業をいくつかご紹介します。

農拍推進事業

1.農泊の推進再生構築や魅力ある観光コンテンツの開発、新たな取り組みに必要な人材確保、インバウンド受け入れ環境の整備を支援する事業。
【事業期間:2年間、交付率:定額(500万円/年等)】

2.実施体制が構築された農泊施設を対象に、多言語対応やワーケーション受け入れ対応、地元食材や景観などを活用した高付加価値コンテンツの開発等を支援。
【事業期間:上限2年間、交付率:1/2等】

施設整備事業

1.農拍を推進するために必要となる古民家等を活用した滞在施設、一等貸し施設、体験・交流施設の整備や、活性化計画に基づく農産物販売施設等の整備を支援。
(活性化計画に基づかない事業)
【事業期間:2年間、交付率:1/2(上限2500万円、5000万円、1億円)】
(活性化計画に基づく事業)
【事業期間:原則3年間、交付率1/2等】

2.地域内で営まれている個別の宿泊施設の改修を支援。
【事業期間:1年間、交付率:1/2(上限1000万円/経営者、5000万円/地域)】

広域ネットワーク推進事業

戦略的な国内外へのプロモーション、農泊を推進する上で課題を抱える地域への専門家派遣・指導、農泊の成果や利用者のニーズ等の調査を行う取り組み等を支援。
【事業期間:1年間、交付率:定額】

受け入れ側にとっての魅力とは


雇用の創出や所得の増加など農山漁村の活性化以外に、どのようなメリットがあるのでしょうか。

農泊事業を運営する株式会社大田原ツーリズムの藤井大介氏によると、滞在施設には古民家や廃校、有形文化財など、使われなくなってしまった建物をリノベーションして活用することが可能だと言います。

実際に、ワーケーションでの滞在先としてまだまだホテルや旅館の人気はあるものの、古民家や一棟貸しタイプの滞在施設に泊まりたいというニーズが高まってきているという調査結果もあり、農泊とワーケーションの親和性の高さが伺えます。

また、普段農業に触れることのない利用者がアグリワーケーションを行うことで、農山漁村の持つ魅力や体感し、農業への興味の高まりや移住のきっかけになることも期待されています。

受け入れ側の課題


アグリワーケーション取り入れるうえで解決しなくてはならない課題としてまず、ワーケーションに適した施設づくりが挙げられます。

ワーケーションでは休暇と仕事を兼ねているということもあり、長期に滞在する傾向が強く、ゲストハウスのようなキッチンやリビングスペースなどがあることが重要視されています。

食事面では、決まった時間・回数の食事提供ではなく外食やデリバリー、もしくは自炊など、利用者が各々選ぶことのできる柔軟なスタイルが好まれているようです。

また、Wi-Fiや快適なワーク環境を整備することはもちろん、子育て世代のワーケーション利用者は子どもの預け先も希望しているということがわかりました。

設備以外に気を配らなくてはならない点としては、完全なバケーションではないため、プライベートを確保したいという利用者との距離感をうまく保つことも重要になってきます。

地域資源のフル活用と高付加価値化


コロナ禍以降、アグリワーケーションの土台となるリモートワークが徐々に広まってきています。アグリワーケーション自体はまだまだ浸透しているとは言えないですが、フリーランスなどの個人をはじめ、日本航空株式会社(JAL)のワーケーション制度導入や経済界からも推進する動きも出てきていて、これからさらに需要が高まりそうです。

最近では人が少なく静かな環境に注目が集まっていることもあり、観光地とは違った魅力を持つ農山漁村が提供できるものはたくさんあるはずです。課題はたくさんありますが、国からの支援を活用しつつ地域一丸となって取り組むことが重要になってきます。


「Withコロナ時代における農山漁村地域への旅行に関する消費者意識調査」(百戦錬磨) https://www.hyakuren.org/20200710_news01/
「農泊をめぐる状況について」(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/attach/pdf/nouhaku_top-68.pdf
「農山漁村振興交付金のうち農泊の推進」(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/attach/pdf/nouhaku_top-63.pdf
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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
  3. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  4. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  5. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。