カゴメとNEC、AIを活用した加工用トマトの営農支援事業開始

カゴメ株式会社はNECと共同で、主に欧州のトマト一次加工品メーカーに向けて2020年4月から営農支援事業を開始した。この営農支援事業は、センサーや衛星写真によりトマトの生育状況や土壌の状態を可視化するサービスとAIを活用した営農アドバイスサービスの販売です。



スマート農業による圃場の「見える化」で生産性の向上へ


熟練栽培者のノウハウを習得した AI が、水や肥料の最適な量と投入時期を指示してくれるので、農家にとっては栽培技術の良しあしにかかわらず、収穫量の安定化と栽培コストの低減を実現できるとともに、地球環境に優しい持続可能な農業を目指す。カゴメは「可視化サービス」と「営農アドバイスサービス」を一次加工品メーカーに対し販売。2つのサービスを利用して一次加工品メーカーは、トマト生産者の営農支援を行うというアプローチだ。

またトマト一次加工品メーカーは、同サービスを活用することで、自社圃場や契約農家の圃場におけるトマトの生育状況を網羅的に把握することができるため、生産性の向上を図ることができる。加工用トマトの生産は、新興国を中心とした人口増加や経済成長に伴い今後も拡大が見込まれるが、持続可能なトマトの栽培には生産者の減少や環境負荷低減への対応などさまざまな課題に取り組む必要があるという。

カゴメとNECは2015年から技術の開発に着手し、2019年までにポルトガル、オーストラリア、アメリカなどさまざまな地域で実証に取り組んできた。2019年にポルトガルの圃場で行ったAI営農実証試験では、窒素肥料は一般平均量から約20%少ない投入量で、ポルトガル全農家の平均収量の約1.3倍となり、熟練栽培者の栽培とほぼ同等の結果に。

同サービスの事業化の目処がたったことから、2020年4月に当社内に「スマートアグリ事業部」を新設し、まずは欧州の顧客にむけて事業を展開していく。将来的には日本市場での実用化も視野に入れ、2020年は国内のいくつかの産地で同事業展開の検証を実施する予定だ。

営農支援を活用するメリット

土壌の水分グラフ


生産者

広大な圃場の状況を「見える化」できることで、速やかに異常に気づくことができ栽培リスクを低減。また、熟練者のノウハウを習得したAIで、環境に優しく収益性の高い農業を実現。技術継承が容易となり、新規就農者を増やすことが期待できる。

営農指導者

圃場が広大であっても、異常が発生している箇所を的確に特定し、正確なデータに基づく指導ができる。マニュアル化された営農支援ノウハウを利用することで、生産者への指導や営農指導者の育成に要する時間を減らすことができる。


トマト一次加工品メーカー

客観的なデータに基きシステム全体が最適化された収穫調整により、生産性向上を図ることができる。災害時などに起こる可能性のある調達リスクの低減や投入資源の最小化を図ることで、安定的な調達と調達コストの低減を実現。


カゴメ株式会社 ニュースリリース
https://www.kagome.co.jp/library/company/news/2020/img/200331002.pdf
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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