農研機構らの研究グループ、水稲の高温不稔の発生メカニズムを解明
農研機構は、国際農研、岐阜大学、島根大学らと行った共同研究で、水稲の高温不稔の発生メカニズムを解明した。
高温不稔は、稲の開花時に穂が高温に曝されることでコメが実らなくなる生育障害。
過去の室内実験では、開花時の気温が35℃を超えると発生しはじめ、1℃の温度上昇で不稔率が16%増大するという報告がされている。しかし、屋外での調査例は少なく、気候条件など温度以外の根本的な原因についてはわかっていなかった。
研究では、世界11の国と地域に観測地点を持つ国際的な水田微気象観測ネットワーク「MINCERnet」と自立型群落内微気象測定装置「MINCER」を活用して、各観測地点の水田の群落上と群落内の気温・湿度を連続で測定。
高温不稔にやや弱い標準品種(IR64)と高温不稔に強い耐性品種(N22)の両方を栽培して、開花期間や開花時間帯、不稔率等のデータを収集し、農研機構が開発した穂温推定モデルで各水田の水稲の穂温を計算した。
次に、各観測地点での開花時刻を調べ、開花期7日間の開花時間帯の気温と穂温の分布を比較。
その結果、セネガルなど乾燥した気候の観測地点では、穂温が群落上の気温よりも5℃以上低くなる一方、ベナン、中国、台湾、アメリカなど湿潤な気候の観測地点では、穂温が群落上の気温よりも高くなる傾向が確認できた。
そこで、開花時間帯の気温・穂温と不稔率との関係を調べてみると、群落上の気温を指標とした場合には不稔率との相関が認められなかったが、穂温を指標とした場合には不稔率との相関が認められた。
さらに、各観測地点の開花期頃の30日間の気象条件を参考に、開花時間帯の穂温の分布範囲と不稔率の分布範囲を、標準品種(IR64)と高温不稔耐性品種(N22)の両方で推定。
その結果、ベナン、フィリピン、中国など湿潤な地域では蒸散に伴う気化冷却効果が小さく、水稲の高温不稔が起こりやすい事実が明らかになったほか、高温不稔耐性品種(N22)を導入すれば、すべての観測地点で高温不稔リスクを抑えられると推定された。
農研機構らは今回の研究で得た成果を通じ、高温不稔の発生リスク予測をはじめ、コメ生産予測の精度向上や適応技術の有効性評価に貢献していきたい考えだ。
農研機構
https://www.naro.go.jp/
国際農研
https://www.jircas.go.jp/ja
岐阜大学
https://www.gifu-u.ac.jp/
島根大学
https://www.shimane-u.ac.jp/
高温不稔は、稲の開花時に穂が高温に曝されることでコメが実らなくなる生育障害。
過去の室内実験では、開花時の気温が35℃を超えると発生しはじめ、1℃の温度上昇で不稔率が16%増大するという報告がされている。しかし、屋外での調査例は少なく、気候条件など温度以外の根本的な原因についてはわかっていなかった。
湿潤な地域ほど高温不稔の発生リスクが高まる
研究では、世界11の国と地域に観測地点を持つ国際的な水田微気象観測ネットワーク「MINCERnet」と自立型群落内微気象測定装置「MINCER」を活用して、各観測地点の水田の群落上と群落内の気温・湿度を連続で測定。
高温不稔にやや弱い標準品種(IR64)と高温不稔に強い耐性品種(N22)の両方を栽培して、開花期間や開花時間帯、不稔率等のデータを収集し、農研機構が開発した穂温推定モデルで各水田の水稲の穂温を計算した。
次に、各観測地点での開花時刻を調べ、開花期7日間の開花時間帯の気温と穂温の分布を比較。
その結果、セネガルなど乾燥した気候の観測地点では、穂温が群落上の気温よりも5℃以上低くなる一方、ベナン、中国、台湾、アメリカなど湿潤な気候の観測地点では、穂温が群落上の気温よりも高くなる傾向が確認できた。
そこで、開花時間帯の気温・穂温と不稔率との関係を調べてみると、群落上の気温を指標とした場合には不稔率との相関が認められなかったが、穂温を指標とした場合には不稔率との相関が認められた。
さらに、各観測地点の開花期頃の30日間の気象条件を参考に、開花時間帯の穂温の分布範囲と不稔率の分布範囲を、標準品種(IR64)と高温不稔耐性品種(N22)の両方で推定。
その結果、ベナン、フィリピン、中国など湿潤な地域では蒸散に伴う気化冷却効果が小さく、水稲の高温不稔が起こりやすい事実が明らかになったほか、高温不稔耐性品種(N22)を導入すれば、すべての観測地点で高温不稔リスクを抑えられると推定された。
農研機構らは今回の研究で得た成果を通じ、高温不稔の発生リスク予測をはじめ、コメ生産予測の精度向上や適応技術の有効性評価に貢献していきたい考えだ。
農研機構
https://www.naro.go.jp/
国際農研
https://www.jircas.go.jp/ja
岐阜大学
https://www.gifu-u.ac.jp/
島根大学
https://www.shimane-u.ac.jp/
SHARE