県立広島大学によるAI農機シェアリング事業が「2021年度スマート農業実証プロジェクト」に採択

県立広島大学が計画する、スマート農業技術を活用して農業機械をシェアリングするサービスが、2021年度「スマート農業実証プロジェクト」に採択された。

庄原商工会議所や地域の農業従事者らとコンソーシアムを結成し、ICT技術を活用した交通網のシェアリングサービス「MaaS(Mobility as a Service)」の農業版である「AaaS(Agriculture as a Service)」の実現を目指す。


スマート農業実証プロジェクトは、農林水産省農研機構が2019年度にスタートした実証実験プログラム。スマート農業技術の普及・拡大を目的に、全国148の地区で展開している。2021年度は、応募総数85地区の中から31地区が採択されている。

農機導入コストを抑え中山間地域の課題解決へ



広島県と島根県の県境に位置する中山間地域では、農業者の高齢化や過疎化の進行、離農、耕作放棄地の増加等を背景に、農業機械の導入費用を抑制する新たなサービスが求められてきた。

今回採択された事業は、「多品目広域連携で実現させる『AaaS(農業版MaaS)』によるAI農機シェアリング」。県立広島大学の資源循環プロジェクト研究センターが代表を務める「AaaSコンソーシアム『広島・島根』」によるもので、コンソーシアムには、庄原商工会議所を調整役に広島県と島根県の12事業者が参画。庄原市西城町の重原農園を準備室に合計477ヘクタールの農地を活用して農機具のシェアリングを実施する予定だ。


「AaaS」はスマートフォンでアクセスするクラウド上の新システムで、実証実験では、広域に点在する農機の位置情報をGPSで取得して所在と利用状況を一括管理。導入コストの半減を目標に、効率的なシェアリングを実現するため、仕様や台数、オペレーターの必要性など生産者側のニーズに合わせたマッチングと輸送をサポートしていくほか、ドローンによる画像解析データ等のシェアリングも実施して、生産面積および売上高の10%向上も目指す。

今回の取り組みにより、中山間地域に点在する農地で農機をシェアしながら、効率的な多品目栽培を行う仕組みが国内で初めて実現するという。

プロジェクトが掲げる事業モデルは以下の通り。
  1. 地域を超えた農業経営の大型連携
  2. 隣接する地域間での他品目連携
  3. 異なる集落間の米麦輪作体系の連携

県立広島大学は今回のプロジェクトを通じ、中山間地域に新たなコミュニティーを形成することで、広島県農業を強化したい考えだ。


県立広島大学
https://www.pu-hiroshima.ac.jp/
令和3年度スマート農業実証プロジェクト
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/smart_agri_pro/kobo/r3_r3tosho/index.htm
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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