非破壊でトマトのおいしさを計測、農研機構がAI活用した光センサーを開発

農研機構は、人間が感じる食味や食感をAI学習させた光センサーを開発し、青果物の「おいしさ」を非破壊的に計測することに成功したと発表した。

この研究は、農林水産省が2013年に開始したプロジェクト「国産農産物の多様な品質の非破壊評価技術の開発」の一環でスタートしたもので、2018年からはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施するプロジェクト「人工知能技術適用によるスマート社会の実現」が引き継いでいる。

農研機構は、農産物の「おいしさ」を可視化する技術の開発を進めることで、多様化する消費者ニーズに応えていきたい考えだ。

農研機構が開発した試作機(青果物のおいしさセンサー)の外観|出典:農研機構

人が感じる食味や食感をAI学習


スマートフードチェーンの構築には食品が持つ品質をデータ化する必要がある。その中でも最も重要視されているおいしさについては、人が食べて評価を行う官能評価によって調べられていたが、一度に大量の試料を調べることが難しく、評価する者によってバラつきが生じるなどの問題もあった。

同研究では、多品種トマトについての官能評価の値を光センサーにAI学習させ、官能評価の値と光センサーで測定した値をAI解析した結果、甘味・うま味・ジューシー感・かたさ・なめらかさ・粉っぽさなどの値で良好な相関関係を示したという。

そこで、市販されている株式会社クボタ製の、果実の糖度を非破壊で測定する可搬型光センサー(フルーツセレクター)をベースに試作機を開発。トマトの果実に光センサーを当てることで、非破壊で甘味やうま味、ジューシー感、かたさ等の官能評価の値を、リコピンや糖度の含有量と合わせて瞬時に測定し、チャートとして表示できる。

官能評価値(横軸)と光センサーで推定した値(縦軸)の相関 左:うま味 右 :ジューシー感|出典:農研機構
トマトの官能評価項目の光センサーによる推定精度|出典:農研機構
測定結果の表示画面例 10項目まで評価が可能|出典:農研機構
今後は、「おいしさ」という評価軸が食品の商品価値に及ぼす影響を検証して、これまで空白だった「食の目利き」領域のビジネス化を検討していく予定とのこと。

青果物のおいしさセンサー 参考動画

農研機構
https://www.naro.go.jp/index.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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