スマート農業の最新実例や課題を解説した入門書『スマート農業』発売

株式会社成山堂書店は、2023年11月28日に書籍スマート農業』を発売した。価格は2420円。

農業従事者の高齢化と若手の減少、食糧需給の増大と耕地の荒廃、脱炭素化の追求の対策として期待されているスマート農業の入門書。概要と実例、課題と対策、将来展望まで解説している。


書籍概要


農林水産省が2021年5月に公表した「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに農林水産業のCO2ゼロエミッション化(脱炭素化)などの目標を掲げ、生産性と持続性の両立を目指すとしているが、その実現のために注目されているのがスマート農業技術だ。

本書は、日本の農業の現状と問題点から、収穫ロボットやドローンなどを使ったスマート農業の事例紹介、標準化や担い手の育成に向けた取り組み、スマート農業の将来的な可能性までを解説し、スマート農業に興味のある方が活用できる一冊となっている。

執筆者の長崎裕司氏は、農林水産省において自動化技術を活用した「ロボファーム構想」の企画立案や、イチゴ収穫ロボットの実用化を図る研究プロジェクトに参画していた人物。

本書の前書きにて、「専門書やWebでスマート農業に関する数多くの情報が入手できるところですが、本書は筆者が所属していた農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の情報を中心に、スマート農業に興味のある方の入門書として活用してもらいたいと思い執筆いたしました。現在は農林水産省で、行政の立場から改めて日本の食料生産の基盤づくりとしてスマート農業の重要性を認識しています。その思いを生産者はじめ農業の未来を考えるすべての方と共有できれば幸いです」と記している。


『スマート農業』目次


第1章 スマート農業とは 1.1 日本の農業の現状と問題点
コラム① スマート農業とスマート〇〇
環境保全・持続型農業の観点から
日本が提唱するSociety5.0と海外への展開
1.2 精密農業からスマート農業への展開
精密農業とは
海外での取組み
日本におけるスマート農業の展開
コラム② 農林水産業のスマート化
1.3 スマート農業と脱炭素
スマート農業とSDGs~脱炭素
これからの研究開発の方向性
コラム③ SDGsとSociety5.0

第2章 スマート農業の技術的な要素 2.1 ロボットと農業
農業におけるロボット技術の適用
コラム④ サービスロボットと「愛・地球博」
2.2 データと農業
データ活用から農業DXへの展開
データ活用の事例
篤農家が有する技能データを超えるには
2.3 情報通信技術と農業
農業の中でのICT
農業と5G
コラム⑤ 自動走行農機の安全性検査について
スマートフォンの農業用アプリの展開

第3章 スマート農業の事例 3.1 トラクタ、収穫ロボット、ドローン
ロボット種別の事例
作物別の事例
コラム⑥ 「アシストスーツ」に見る農作業軽労化の取組み
3.2 農業データ連携基盤(WAGRI
3.3 各種農業支援サービス

第4章 スマート農業の課題と対策 4.1 「スマート農業実証プロジェクト」等で明らかになった課題
4.2 農業機械の安全対策
安全対策に向けた取組み
社会制度の中でスマート農業を位置づけていくには
標準化に向けた取組み
4.3 スマート農業の担い手の育成と体制づくり
ミレニアル世代とスマート農業
国等の機関や「スマート農業実証プロジェクト」にみる担い手育成の可能性

第5章 スマート農業の将来 5.1 新たなビジネスモデル構築
フードチェーンの構築での取組み
動き始めたビジネスモデル
集落営農
生産から加工まで扱うモデルケース
都市型農業での展開
コラム⑦ 自動運転技術の「レベル」について
5.2 技術伝承と新たな生産形態
コラム⑧ 食料安全保障の動向
5.3「みどりの食料システム戦略」での展開
環境対応への貢献
化学農薬・肥料の低減への貢献
温室効果ガス削減への貢献
「みどりの食料システム戦略」に挑戦する新しい農作業研究
水稲での温室効果ガス削減に向けて
電動農機の可能性
コラム⑨ リモコン式草刈機の進化と可能性
有機農業の拡大には雑草対策が重要
物理的手段による病害虫対策の可能性
スマート農業での展開と今後の農作業のあり方
コラム⑩ 農業主産県におけるスマート農業あれこれ
「みどりの食料システム戦略」の推進におけるスマート農業の役割
コラム⑪ 「みどりの食料システム戦略」とスマート農業

第6章 スマート農業技術を導入してみたら 6.1 中山間地域での集落営農で水田フル活用に挑む
6.2 大規模畑輪作で世界と勝負できる生産性に挑む
コラム⑫ 自動直進技術に見るスマート農業展開の可能性
6.3 果樹生産で高品質果実の周年供給に挑む
6.4 特長ある施設園芸で高収益生産に挑む


『スマート農業』書籍情報


編著:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
発売日:2023年11月28日
本体定価: 2420円(税込)
仕様:A5判、184頁
ISBN:978-4-425-98561-6
発行:株式会社成山堂書店
URL:https://www.seizando.co.jp/book/11739/

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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