ドローンで直播き栽培した新種米 『N.330』、数量限定発売

北海道旭川市で農業法人市川農場を経営し、一般社団法人シンプルライフ協会の副理事でもある市川範之氏と、国立研究開発法人北海道農業研究センターが共同で研究を進める『直播き栽培が可能な極良食味米の新品種 N.330(仮称)』が2019年11月15日に限定発売される。


「N.330」はドローンによる直播米


N.330は、市川氏が経営する市川農場1000㎡を使用した試験圃場で栽培された希少米で、ドローンによる直播栽培により生産されたもの。
食味ランク特Aを持つ北海道産米「ゆめぴりか」と同じ遺伝子を持つため、粘りが強く冷めても食味が低下しない低アミロース米だ。

食感はとてもモチモチしていて、味は非常にあっさりとしているとのこと。
おかずの旨みを邪魔しないあっさり感が際立ち、冷えても美味しいため、おにぎりなどとも非常に相性が良いという。

今回の出荷は、一般社団法人シンプルライフ協会と市川農場とのコラボレーションによるもので、予定されている出荷数量はごく少量。
1kg 1,200円 ・2kg 2,100円(税別・送料別)での販売が予定されている。

ドローン直播で農家の負担軽減を


日本のコメ栽培の多くは「冬から春先の時期に苗をビニールハウスで育て、春先以降に田んぼに植えていく」という手順がとられている。
コメの直播きは、以前から行われてきた取り組みではあるが、根付きを良くするために鉄分をコーティングするなど、さまざまな工夫が必要とされてきた。

しかし、今回行われたドローンによる直播は、鉄分のコーティング等を必要としない農法だという。


今回の試験栽培では、根付きの良さはもちろんのこと、他の田んぼと変わらない収穫量を達成した。
投資は散布用のドローン(約200万円位)だけで済み、育苗のためのビニールハウスの用地や費用の問題もクリアできるため、身体や費用面で多くの負担を強いる田植え作業の省力化にも期待されている。

ドローンを使用するメリットのひとつに「種の散布にムラができにくい」という点も挙げている。
山間部や棚田など大型農機が入りづらい場所でのコメ生産はもちろんのこと、今後は都市菜園でも栽培できる、新しい農法として注目を集めている。

ドーロンによる直播風景(参考動画)

「楽しい農業」を目標に


市川氏が副理事を務める一般社団法人シンプルライフ協会では、シンプルに暮らすことへの提案の中に、農業とのコラボレーションを掲げている。
今回の取り組みは、同協会が掲げる「楽しい農業」への提案事業として実現したもの。

今後は、旭川をはじめとした北海道の豊かな大地の恵みを味わうだけではなく、都市生活者が入りやすい農業のあり方を実践し、提案を行っていくという。
同協会では、「今後もスマート農業と地方のマッチングを推進し、移住や交流人口の増加を図りたい」としている。

<参考リンク>
一般社団法人シンプルライフ協会
農業法人市川農場(ゆきひかり)
国立研究開発法人北海道農業研究センター
「N.330」オフィシャルECサイト(11/15オープン)
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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