佐賀市に自動野菜収穫ロボットの拠点が誕生、周辺農家のスマート農業化を促進を目指す

自動野菜収穫ロボットを開発するinaho株式会社は、佐賀市と進出協定を締結した。佐賀市内に拠点を開設し、周辺の農家に自動野菜収穫ロボットを導入する。

進出協定締結式

進出協定締結の背景


inahoでは自動野菜収穫ロボットを活用した生産者向けサービス「RaaS(Robot as a Service)」を提供している。ロボットを農家へ貸出し、収穫高に応じて利用料が支払われるビジネスモデル「RaaS」は初期費用&メンテナンス費用不要で、貸出しからメンテナンスまで一貫して展開するサービスだ。

最新のパーツに交換していくことでロボットの性能を継続的に向上させ、農家の利益向上に貢献することも可能。2019年1月に佐賀県鹿島市に初の拠点を開設し、同年9月に佐賀県太良町のアスパラガス農家にロボットを導入して正式にサービスを開始した。

今回、進出協定を締結する佐賀市は、気候や地形等を生かしてアスパラガスをはじめとする多様な農産物が生産されており、日本各地への食料供給地として重要な位置を占めている。

また消費の場との近接性の高さや、グリーンツーリズム強化による農業振興、全国1位を誇る農地利用の高さ、全国平均を大きく上回る農地集積率など、佐賀市の農業は多くの特色がある。

inahoは佐賀市に拠点を開設することで、自動野菜収穫ロボットの導入エリアを拡大し、より多くの農家にロボットを利用してもらうとともに、佐賀市が掲げる農業における基本目標「担い手の育成と確保」や「稼げる農業の確立」の実現に貢献する考えだ。

inahoの自動野菜収穫ロボットについて


ロボットの基本情報

サイズ・重量 全長:125cm/全幅:39cm/高さ:55cm/約65kg
稼働時間 最大10時間(バッテリー駆動/家庭用コンセントで充電可能)
収穫時間 12秒/本

ロボットの特徴

主な動作として、移動、探索、収穫という一連の流れで自動収穫を行います。

【移動】
・白い線を設置するだけで設定したルートを自動走行
・ビニールハウス間を移動
・スマートフォンで簡単操作

【探索】
・AIを駆使して自動走行しながら作物と枝等を判別
・収穫適期の作物のみを収穫物として認識
・収穫対象は出荷基準に合わせてcm単位で設定

【収穫】
・作物を傷つけることなく収穫
・収穫した作物はカゴに優しく収納
・カゴがいっぱいになると利用者のスマートフォンに通知


初期費用&メンテナンス費無料

選択収穫野菜の自動野菜収穫ロボットでは国内初のビジネスモデル(同社調べ)
・販売ではなく、市場の取引価格×収穫量の一部を利用料としてinahoへ支払い
・農家は導入費を抑えて利用可能で、故障によるメンテナンス費も不要
・定期的に最新のパーツに交換することで、ロボットの性能が継続的に向上
・ロボット間のネットワークを構築し、さまざまなデータを収集
・収集したデータを活用して農家へ生産性向上のアドバイスも実施

佐賀市長 秀島敏行氏のコメント


新たな拠点の場として、佐賀市を選んでいただいたことに感謝申し上げます。
佐賀はアスパラガスをはじめとする施設園芸が盛んですが、農家の高齢化が進んでいます。高齢化が進むと農作業の身体的な負担も大きくなり、農業をやめてしまう方も多くいます。
そのような農業が抱える人手不足などを解決する事業として期待しています。


inaho株式会社 代表取締役CEO菱木豊氏のコメント


佐賀市と進出協定を締結させていただけたことを大変嬉しく思っています。
佐賀市はアスパラガスの生産量が多く、農業が盛んに行われていて、我々にとって非常に魅力的な地域です。地域の農家さんからも「早くロボットを導入したい」という声をたくさんいただいています。
2019年9月にアスパラガスの自動収穫ロボットを実用化して、導入エリア拡大を具体的に進めていくところまでたどり着きました。佐賀市の皆さまもにご協力いただきながら、来年の収穫期に向けていち早く導入の準備を進めてまいります。

inaho株式会社が見据える未来

現在の対応作物はアスパラガスのみだが、今後はトマトやイチゴ、キュウリなど、人の目で見て収穫適期かどうかを判断しなければならない選択収穫野菜に広く対応していく。

ロボットの生産台数は2020年に数百台、2022年には約1万台を目標とし、九州を中心に拠点の開設を予定している。

<参考URL>
inaho株式会社
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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