オフロード自律走行AIロボット「Adam」、豊橋市で実演会を実施 シェアリングサービスも

愛知県豊橋市が主催するアグリテックコンテストで入賞し、市内の柿農家と実証実験を重ねてきた輝翠(きすい)株式会社は、2025年8月26日(火)、オフロード自律走行AIロボット「Adam(アダム)」 の実演会を開催した。

同時に、販売とシェアリングサービスもスタートしており、人手不足に悩む農家の栽培管理や収穫作業の負担軽減が期待されている。価格は275万円(税込)で、豊橋市では補助金の対象にもなっている。

Adam

高い運搬能力と追従能力により作業負担・時間を軽減



実演会は、実証実験に協力してきた豊橋市石巻萩平町にある「百年柿園ベル・ファーム」の柿畑で実施された。

まず、除草剤散布の作業時間短縮を検証するため、同社の鈴木氏が従来通りタンクを背負いながら液体の除草剤をまいていく。薬剤を補充する時間も含めて、「身体的な負担がかなりある」という。

一般的な噴霧器を背負っての除草剤散布の様子

一方、アダムは大容量のタンクを車両に搭載し、鈴木氏の後を自動で追従。重い薬剤を背負う負担も補充の手間もないまま、同じ面積での作業時間は半分以下となった。

鈴木氏は「除草剤の散布だけ見ても、かなり省力化の効果を実感できた」と評価した。

Adamにタンクを搭載し、追従しながら散布している様子

また、アダムの最大積載量は300kgで、柿の収穫かごであれば一度に10個運ぶことができる。そのため、収穫や剪定作業での負担軽減も期待できるという。

鈴木氏は「収穫や摘果の際に脚立の乗り降りを繰り返す作業も、人が乗ったままアダムで横移動ができれば、さらに負担が軽減できるのでは」と新たな活用方法も提案していた。

創設者・CEOのブルーム・タミル氏は、「今後もアダムができる作業を増やし、農家さんが栽培できる面積を増やしていきたい」と話し、鈴木氏も「あらゆる機会にどんな使い方ができるのか、我々農家としても取り組んでいきたい」と意欲を示している。

輝翠株式会社 創設者・CEOのブルーム・タミル氏

農家の声から「Mini Adam」の開発も


実証実験は、豊橋市が推進するスタートアップと地域農業関係者との共創による実証開発プロジェクト「TOYOHASHI AGRI MEETUP」の一環で実施。2023年度(令和5年度)にアグリテックコンテストで入賞し、2024年5月から市内で走行テストや効率化検証、AIトレーニングデータの収集などを実施してきた。その過程で、「果樹の間を動くには小型タイプも必要では?」という農家の声を受け、ミニ版の開発も進めている。

アダムは2025年春から販売が始まっており、すでに青森県のリンゴ農家や千葉県の梨農家などで導入されている。

また、中部・西日本エリアでは初めて、石油製品を販売するマルシメ株式会社(豊橋市)が1台を購入し、シェアリングサービスを開始。1日/1週間/1カ月単位で借りることができ、利用しやすい環境を整えている。

連携協定を結んだ輝翠株式会社のタミル氏と、マルシメ株式会社の大熊氏

導入費用は「アグリテック導入支援補助金」の対象に


豊橋市地域イノベーション推進室の小野健太郎氏は、「次郎柿農家の高齢化や担い手不足を補う手段として、ロボットの活用が課題の解決に繋がるといいなと思ってます。果樹に限らず、重い荷物を運ぶ場面はさまざまな農作物、さらには建設現場などでもあり、アダムの多様な活躍を期待しています」とコメント。アタッチメントによるカスタマイズも可能で、車両下部に取り付けて追従走行のついでに地面の草刈りも行えるほか、肥料、農薬散布などのアタッチメントも開発中だという。

なお、アダムの購入費用は、豊橋市のアグリテック導入支援補助金の対象にもなっている。


輝翠株式会社
https://kisui.ai/
マルシメ株式会社
https://www.marushime-kk.co.jp/
アグリテック導入支援事業|豊橋市
https://www.city.toyohashi.lg.jp/62482.htm


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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