公正な価格で流通する農協の仕組みを取り入れたい 〜MJBL財団留学生 アリファ・ジャナさん(バングラデシュ)〜

農業分野における雇用創出を目指す、More Jobs Better Lives公益財団法人(以下MJBL)は、開発途上の国や地域における農業振興を支援するため、「外国人留学生奨学金給付制度」を設立。バングラデシュ出身で、現在筑波大学大学院で農業を学ぶアリファ・ジャナさんもその第1期生に選ばれました。

研究テーマは「気候変動がバングラデシュ国内の非穀物食物に与える影響」。バングラデシュの農村部で暮らしと栽培を支える女性たちの、生活と地位の向上も目指しています。


名前:アリファ・ジャナ
国籍(出身地名):バングラデシュ人民共和国(ジャマンブル)
経歴:2019年10月~筑波大学大学院 生命環境科学研究科(博士課程)

研究テーマ:SDGsの1つである「飢餓をゼロに」への脅威となる「気候変動」が、バングラデシュ国内の非穀物食物に与える影響。
卒業後の計画:
・農家の知見を基に、バングラデシュで最も気候の変化による被害を受けやすい地域で主に栽培されている非穀物食物に気候変動が与える影響への対応を考察する。
・作物をスクリーニングし、気候変動がメジャーな非穀物食物および農家の収入に与える影響を分析する。

日本以上のコメ大国・バングラデシュ

——バングラデシュの農業について教えてください。

バングラデシュは、まさに緑の米の国です。私たちにはとても高品質なお米があります。誰もがお米を作っていますし、遺伝子組み替え品種やハイブリッドライスの改良など、さまざまな分野の研究者もいます。農家はそれらの品種を採用しています。


基本的に農業は我が国の基盤です。4つの要素で構成されており、作物が総生産額のGDPの55%、家畜が14%、漁業が22%、森林がだいたい9%を占めています。全GDPのうち農業生産額が占める割合は14.3%になります。

バングラデシュでは、国民の90%がお米を食べていて、世界第4位のお米の輸出国でもあります。約7000万人が農村に住んでいますが、農家の男性は、サービス業や他の仕事に就くために都会に出ているので、59%の女性が農業に従事しています。家族の日々の食料を得るためには、都会へ出て別の仕事で稼ぐ必要があるのです。それが今、多くの女性たちが農業に従事している理由です。

私の国は非常に気候の影響を受けやすい地域なので、気候変動に備えて、7つの気候変動地域があります。洪水には非常に鋭敏です。雨季になると沿岸部で氾濫するため、そこに住んでいる人たちはとても困ってしまいます。

——輸出しているのはどんなものなんでしょうか?

先ほど言った通り、私の国ではお米が主な農産物です。しかし、多くの人は繊維産業に移行しており、テキスタイル、編み物、アクセサリーなどが全体の44%を占めています。

また、食料品といえば冷凍エビのような輸出品もあり、魚介類の38%を占めていますが、エビは南部の工場のような商業生産システムで養殖しています。政府がこのシステムを主導しています。


お茶、動物の毛皮、紙糸のような編み物、アクセサリー、タバコなども輸出しており、それらで55%ほどを占めています。また、米国やUE諸国などの輸出国、オランダ、ベルギー、ノルウェーなどのヨーロッパ諸国は今、我が国で工業製品の新興部門を興しています。日本でも洋服を買った時、「made in Bangladesh」と書いてあると思います。

石油は81%とほとんど輸入に頼っています。コメは十分にありますが、ベトナムからも輸入しています。肥料、化学肥料ですが、これに関してはほかの国から輸入しています。

主に女性が従事する農業で、女性が力を発揮するために

——アリファさんが農業を勉強しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

バングラデシュでは、女性の59%が農業に従事しています。彼女たちは家を管理し、子どもを育て、買い物をするなど、数々の仕事をこなしながら、農業に携わっています。なぜなら、男性は都市に出て働いていて家にいないからです。

我が国では、政府がすでにBGA(ベイリーグループ)基金のような社会的セーフティネットプログラムを採用し、子どもに特化して手当てを与えています。また、子どもたちに学ぶ機会を得るための資金を与える、さまざまな種類のプログラムを始めたばかりです。

私は、こうしたプログラムのように、女性たちもまた政府や社会、コミュニティから、適切な教育、指示、管理システムを得て、力を得られるようになることを願っています。現場での高度な技術、実践的テクノロジーの使い方についても女性たちに紹介したい。彼女たちがより現場で実践できるようになればと思います。

——なぜ、留学先として日本を選んだのですか?

かつて私は、バングラデシュの他の学生と同じように、とてもだらしない人間でした(笑)。それで、私が大学生の頃に日本で勉強した先輩や指導教官が、日本へ行くようにすすめてくれたんです。「日本に行けば時間管理、誠実さ、勤勉さを身につけ、自分を変えることができるよ」と言っていました。

私の国では今、農家の人たちは公正な価格で農産物を販売することはできません。しかし、市場が需給モデルを予測すれば、農家は適切な食事を手に入れることができます。

私は現在、気候変動と非穀物作物の供給管理に関して研究していますが、日本の農業とJAモデルについても学んでいます。農民が公正な価格で販売できる、このモデルを私の国で実現したいと思います。それがまた、私が日本を選んだ理由です。

——アリファさんもお子さんと一緒に来日されているそうですが、日本で子育てしながら学ぶ環境はいかがですか?

日本人のエチケットや笑顔がとても魅力的です。彼らはとてもフレンドリーです。道を歩いている時、知らない人でも私の2歳の娘に、「こんにちは」「おはようございます」と挨拶してくれる。そんなところが好きです。

大学でも留学生が多いですが、研修している時はほぼ日本人。生徒からも先生からもサポートしていただいています。

——バングラデシュではどうやって作物を売買しているんでしょう?

誰かが農家や市場にあるすべての作物を購入し、別の市場に高値で販売しているのですが、これは違法です。農家が公正な価格で販売できないのです。

私は10円で買って15円であなたに売り、また誰かが20円で売り、それをまた別の誰かが30円で売る。これでは農家に残るお金はわずかです。


——今、日本でどんな研究をされているのですか?

私たちの主食で、国民の9割がお米を食べていますが、それだけではビタミン、ミネラル、さまざまなタンパク質といった栄養素を満たせません。私たち人間はみな、さまざまなタイプのビタミンが必要であり、野菜やナッツ、飲料など異なる食品から摂取します。これが、私が非穀物について研究している理由です。穀物は米、小麦、豆を意味し、非穀物はそれ以外を意味します。

また、私の国では1日に必要なエネルギー摂取量が2200kcalであり、これを得るには非穀物が必要です。私たちは母親や子どもたちの栄養問題に直面しています。だから私は非穀物に研究の焦点を当てているのです。しかし、穀物以外の作物の栽培農家は、米よりも生産量が少なく収入も低くなっています。

私たちは統計ソフトを利用して、二次ソースから学び、学生の仲間や教師から学んでいます。農業に関わる情報をすべて入れ、分析するソフトウェアを駆使して、ジャンルを超えて解析を進めています。

——バングラデシュのコメと日本のコメは違うのですか?

とても違います。私の国のコメは粘りがありません。来日して3カ月は日本のお米は食べられませんでしたね。

でもおにぎりは好きですよ。お寿司はカリフォルニアロールが好きです。果物の柿やメロンも好きです。

——日本の農業のいいところと悪いところを教えてください。

私は、日本人が現場で利用しているさまざまな種類の農業技術を目にしました。農業用ロボットやナノテクノロジーの活用は良いと思います。その反面、電気が途絶えるとロボットを充電できなくなります。食品を生産できず、必要なものを植えられません。

私の国ではより多くの人々が農業に従事しています。雇用問題も深刻で、失業率は2%。若者は農業に従事しているので、農業に関わることができ、手や鍬で生産することができます。でも、ロボットにはそれができません。

私の国のテクノロジーといっても、ごく初歩的なものです。ただ、大きい農場は、播種機や移植機などの機械を使っています。

——バングラデシュのおすすめの農産物は何ですか?

北部の農民がマンゴーを生産しています。産業プラントがあり、彼らは農家からマンゴーを買い上げ、それをジュースに加工して、海外へ輸出しています。1キロ80円ぐらいです。この業界では、輸出向けマンゴージュースやドライマンゴーなど、新しいシステムを実現しています。これからどんどんマンゴーのシステムを作っていくでしょう。


マンゴーの香りは日本のものとは違います。我が国のマンゴーはとてもジュージーですし、色も黄色、赤、ラディッシュ・ブラウンなどの濃い色と、いろいろあります。

——世界的な流れであるSDGsについて、どう考えますか?

バングラデシュは、人口増加に対応できないという問題を抱えています。政府は現在、人口を制御するための対策を講じています。耕作可能な地域が少ないのです。本来多くの生産物を作れる地域も、洪水に見舞われています。

さらにBRRI(バングラデシュ米研究機関)やBARC(バングラデシュ農業研究評議会)など、コメの生産量をあげるための研究機関があり、品種改良などを行っています。

政府は畜産部門、魚部門も支援しています。新しいポリシーに向けて対策を講じ、自給自足の作物を作り、人口を養い、SDGsを実現します。

また別の機関では、貧困層や農業に関わろうとしている人に、農業に従事するよう働きかけている普及機関もあります。お米は大丈夫ですが、他のものを自給できるように。そしてさまざまな活動で、食料を増産しています。SDGsのゴールである2030年までに、何が起きるか、見ていてください。

また、バングラデシュの土壌は非常に肥沃です。農家の伝統的な意見としては、「種をどこに投げても作物は育つ」と言います。そのため、私たちは土壌の質をチェックする必要がなく、農家は土壌の質を調べ、植え付けて育てることはありません。

ただ肥料と化学薬品を使用し、統合された害虫管理のようなシステムを導入しましたが、農家はこうしたやり方を進んで取り入れていません。粉砕した木炭など、オーガニックな資材を破砕して土に入れ、作物を育てます。彼らの伝統的信念があり、化学的な資材を使いません。

彼らはまた、土に籾殻を入れます。そうすることで、土壌の水分を調整するのです。害虫には、政府からオーガニック農薬をもらっていて、そのまま水に溶かしスプリンクラーで畑に散布しています。

——バングラデシュにも、オーガニック認証などの仕組みはありますか?

政府による認証がありますが、大きな農場しか取得していません。小さな農場は現実的に難しい状況です。

気候と農業ビジネスの研究を役立てたい


——母国へ帰られたら、日本で学んだことをどのように生かしたいですか?


私の場合、学生のために学者と共に気候研究者として貢献したいと思います。

今、農民のほとんどは市場に自分の製品を売り込むことができませんが、私のアグリビジネスについての研究も役立てたいと考えています。

そして、セミナー、シンポジウム、さまざまなワークショップで、農産物とアグリビジネスについて、人々や農家を助けたいと考えています。そしたまた、私の学生たちが他の人を助け、彼女たちは自分の地域の農家を助けることができるようになると思います。

私の国の生産者と政策立案者を手助けしたいです。これは計り知れない計画ですが、そう願っています。

——母国の女性たちのためにどんなセミナーやワークショップを開きたいですか?

私は彼女たちに、その生活パターンと環境システムについて知らせる必要があると思います。

それには伝えるべき5つの指標があります。市場への移動、他の場所への移動、自分で自分にお金を払うこと、夫にお金を保たせないこと、そして自分で自分に知らせること。彼女たちは、自分のアイデアを農場や自分の家にも生かすことができます。

私が提供する7日間、あるいは1日間のセミナーやトレーニングが、彼女たちの人生と私たちの将来に役立つことを願っています。

——日本の私たちに何かできることはありますか?

JICAはさまざまな分野でバングラデシュと協力しているので、日本はバングラデシュの友人であると言えると思います。

これは個人的な意見ですが、日本の研修機関には他の国の研修機関と協力していただきたいですね。互いのデータを共有すれば、グローバルな問題が解決するようになるかもしれません。

日本に比べれば、私たちの国はまだ発展途上にあります。だからこそ、私たちは協力しあい、日本と私たちの国の研究成果を共有する必要があると思います。それが私の願いです。

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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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