DJI 、農業用ドローンの年次報告書を発表 時代は自由化・標準化・戦略的統合へ

DJIの一部門であるDJI Agricultureは、ブラジル・リベイランプレトで開催された「Agrishow 2026」において、第5回年次報告書「Agricultural Drone Industry Insight Report(2025/2026)」を発表した。

同レポートでは、世界100以上の国と地域で60万機を超えるDJIの農業用ドローンが導入され、農業用ドローン産業が成熟期を迎えつつある現状を紹介している。その一部をご紹介しよう。



農業用ドローンの自由化・標準化・戦略的統合が進行


DJI Agricultureによると、2025年末時点で、60万台以上のDJI農業用ドローンが、世界中で60万人を超える訓練を受けたオペレーターによって利用されている。

同社は、世界各国の政策が「自由化」「標準化」「戦略的統合」へ向かう傾向にあると分析。これに合わせ、世界各地に3500カ所以上のサービス・修理センターネットワークを構築し、ドローン運用の標準化を推進している。

農業用ドローン普及の成果としては、約4億1000万トンの節水を実現したという。これは、約7億4000万人分の年間飲料水消費量に相当する。また、二酸化炭素排出量を5100万トン削減しており、これは樹木2億4000万本の年間炭素吸収量に匹敵するとしている。

DJI Agricultureグローバルセールス部門責任者のYuan Zhang氏は、次のようにコメントしている。

農業用ドローンはもはや物珍しい存在ではなく、今や世界中で欠かせない農業機械となっています。ブラジルにおいて、DJIドローンはコーヒー、大豆、トウモロコシ、サトウキビ、牧草といった主要な作物に広く活用されています。

世界的な普及が進む中、DJI Agricultureは、7,000名以上の認定インストラクターから成るグローバルネットワークを通じてトレーニングを提供しつつ、オペレーター向けのサポートネットワークをさらに強化していきます。こうした継続的な投資は、革新的なドローン技術を通じて農家の作業効率を向上させ、持続可能な形で増産を支援するという当社の強いコミットメントを具現化したものです。


ブラジルでは牧草地の管理にドローンを活用


同レポートでは、世界各国の多様な作物における農業用ドローンの活用事例も紹介している。

ブラジルでは、農家が「DJI Agras T25P」「DJI Agras T70P」「DJI Agras T100」などの農業用ドローンを導入。飼料管理における精密作業を行うことで、牧草の更新効率と生産性を大幅に向上させているという。

例えば、ドローンを活用して雑草の群生箇所にスポット散布を行うことで、除草剤の使用量を最大35%削減できるとしている。

また、圃場全体の散布や播種をドローンで行うことで、土壌の踏み固めを防げるほか、繊細な生態系付近での薬剤飛散を抑制できる。これにより、畜産業のカーボンフットプリント低減にもつながるとしている。


圃場試験や学術研究をもとに運用適正化を推進


さらに同レポートでは、農業用散布ドローンによる精密散布、作業効率、経済性、持続可能性について検証した圃場試験や学術研究についても紹介。UAPASTFなどの組織では、最新ドローンによる薬剤飛散(ドリフト)試験の結果を踏まえ、農薬を安全かつ効果的に散布するためのガイドラインを策定しているという。

DJI Agricultureは、より高度なドリフト試験により、精度と安全性、法令遵守を両立した圃場オペレーションが可能になるとしている。こうした取り組みは、精密農業の推進や、環境負荷を低減する作物保護の実現にもつながる。


各国で進む農業用ドローンの規制整備


レポートでは、研究成果に基づく政策や市場の発展が、農業用ドローン産業の世界的な拡大を後押ししていることにも触れている。

ブラジル国家民間航空庁(ANAC)は、反復的な農業オペレーションを想定した「標準シナリオ」を確立するため、ドローン関連規制を改定。カナダでは航空法規則を改正し、農業用ドローンの運用規則を簡素化することで、散布、マッピング、モニタリング、精密農業を支援している。

日本では、農林水産省と国土交通省が、ドローンによる農薬等散布に関するQ&Aを発表。法令や運用に関する理解が不十分なためにドローン散布が進まない状況もあるとして、「完全自動航行」や「ひとりオペレーターによる複数機の運行」、「飛行日誌の作成を1日単位にする」といった、誤解を解く情報を発信している。

特に、狭小圃場が点在することが多い日本の農業事情に合わせて、価格・サイズを国内向けにした農業用ドローンも増えている。大規模化と同時に中小規模の農家でも導入できる素地が出来上がっており、法令の拡充とともに、さらなる農業用ドローンの普及にも期待ができそうだ。


なお、「Agricultural Drone Industry Insight Report(2025/2026)」の全文は、DJI Agricultureの公式サイトで確認できる。

DJI Agriculture公式サイト
https://ag.dji.com/jp

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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