スマートグラスによるドローン活用法【富有柿農家・水尾学のスマートグラス活用日記】

滋賀県北西部の高島市今津町で「富有柿」を栽培している柿農家の3代目、水尾学(みずおまなぶ)です。2代目である父の成(しげる)と共に、日々農業に励んでいます。

今回はドローンスマートグラスのお話です。身近になってきたドローンですが、農業でも多様なシーンで使われています。

当社でも、ドローンを運用して3年目になります。風速10mでも安定飛行ができるDJI社のInspire1 Pro(中型機)を2機を運用しています。ドローンの用途としてわかりやすいのが農薬散布などですが、その他にも当社では下記のような利用をしています。

  1. 圃場・園地の果樹の育成状態の確認
  2. 各作業漏れがないかの確認
  3. 育成記録
  4. 各地からの依頼による農地記録映像

当社の農場は関連圃場が5カ所に分かれいますが、軽トラックでの移動に数分程度かかる場所でも1分以内で移動が可能になるなど、その機動力もドローンの大きな魅力です。

DJI Inspire1 Pro

富有柿農場でのドローン活用事例

実際の作業でのドローンの活用事例をご紹介しましょう。

剪定作業の確認

例えば、冬場に行う剪定作業では、すべての木に対し作業を行った後に作業漏れがないかを確認します。ドローンで柿の木の上空1m近くを全面空撮。対象物は葉がない枝だけの状態の木なので、ドローンによる空撮は非常にわかりやすく有効です。

ドローンによる剪定作業の確認

撮った映像を見て、作業が甘かったのでは? と気になる部分があれば、そのポイントで映像をストップしてコマ送りなどで確認します。録画映像なので、何度でも確認できます。そしてこの映像はそのまま記録として残すことで、次年度への情報にもなります。

新芽の発芽状況、摘蕾、摘果の確認

新芽の発芽段階も空撮で記録します。全体の芽の出方・量などを同様に確認しています。

ドローンによる新芽の発芽状況の確認

摘雷作業(蕾段階の間引き作業)の場合は、蕾をドローンで観測するのですが、対象物となる蕾があまりにも小さい。しかし動画より静止画ならば拡大/縮小もできるので、静止画を多用しています。

摘果(果実間引き)の時期からは動画で有効に利用できます。さらに果実が大きくなるとより判断しやすくなります。

ドローンによる摘果作業の確認

野鳥などによる食害の確認

そして収穫前期は、地上からは見えない野鳥による食害の発見に、かなりの威力を発揮しています。今までわからなかった被害果実を早期発見できます。

ちなみに、Inspire1 Proは比較的大きな機体のため、上空からの撮影が中心になりますが、最近の小型ドローンであれば、樹木の側面映像でも対応できそうです。特にわい化栽培のような規則性のある樹木配置であれば、その効果は高いと思われます。

スマートグラス×ドローン活用事例

ここからは、ドローンを飛ばす際のスマートグラスの活用方法をご紹介しましょう。

ドローンは、コントローラー(送信機)にタブレットやスマートフォンを接続して、ドローンのカメラから送られてくる飛行映像や各種飛行時のパラメーターをタブレットで確認しながら飛行させるのが一般的です。

通常ですと、飛行しているドローンの位置を確認しながら映像やパラメーターを確認するためには、首を上下に振って、ドローン本体と送信機のタブレット画面を交互に確認することになります。つまり、一時的にドローンから目を離すことになるわけです。

その時の課題は「ドローンと操縦者との距離」にあります。

例えば、ドローンと操縦者の距離が半径50m程度であれば、

ドローン → 送信機(モニター) → ドローン

のように交互に確認することは可能です。

しかしこの距離が100mを超えてくると状況が変わります。目視で確認しようとしても、ドローンの位置を探すのに苦労するからです。遠方の被写体からいったん視線を外して再度探す行為は、かなり難しい作業になります。ドローンの背後に多彩な景色が入り混じるなどすれば、探し当てるのにも余計に苦労します。

飛行させている環境によっても、この条件はかなり異なってきます。見通しのいい海岸線・海など、視界に障害物がない場合は、双方の距離が200mを超えても問題ないかもしれませんが、そのようなケースは稀です。

そこで、操縦者とドローンの距離があっても双方を確認しやすくするために、スマートグラスを用います。タブレット・スマートフォンを接続する代わりに、コントローラーにスマートグラスを接続します。すると、タブレット・スマートフォンに映し出されていた映像・パラメーターを、そのままスマートグラスに映し出すことが可能になります。

この形だと、

ドローン → 送信機(モニター) → ドローン

と見ていたのが、

ドローン → スマートグラス → ドローン


となります。目の前にドローンからの映像とパラメーターの両方が映し出されているので、常にドローンの方向を見て眼球を動かすだけで、双方の確認ができるわけです。モニターが操縦者の目の前に張り付いたようなイメージです。

スマートグラスをドローンの送信機に接続したところ

この方法だと、操縦者は送信機のモニターを見るために頭を上下に動かす必要がありません。また、飛んでいるドローン本体を探すのに時間を要していると、バッテリーの消耗にもつながります。スマートグラスを使うとその時間を最小限に抑えられるので、安全飛行にもつながります。

ちなみに、ドローンは常に肉眼による直視が飛行条件とされており、目視外飛行の実施には国土交通省の許可が必要になります。今回の場合、常にスマートグラスをかけているとその条件に合わないのではないか? 航空法による目視外飛行にあたるのではないか? との懸念もよく聞かれますが、これは目視外飛行にはあたらないとされています(詳しくは各スマートグラスメーカーにご確認下さい)。

自分自身も、エプソンの「BT-300」というスマートグラスを利用しており、パラメーターで機体が向いている方角がわかるほか、カメラの映像がダイレクトにスマートグラスに映ります。これにより、現在どのあたりを飛行しているのかを直観的に判断でき、飛ばす際に安心感が出てきます。

平面的であまり変化のない土地であれば、真下にカメラを向けるだけで、スマートグラスの映像から道路・川の位置などを参考に、機体の位置を確認できるので、初めて行く土地や遠隔地でのドローン飛行時に助かっています。

現在、当方はドローン飛行の制限を通常は半径500m以内に設定して利用しております(作業に応じてより広く設定して利用もしています)。100mを超えてくるとスマートグラスの利用は各段に便利だと感じます。このスマートグラスは、以前に紹介した遠隔作業支援ソフト「Optimal Second Sight」でも使えるので、2種類の作業に利用しています。

農業分野でのドローンは、省力化・データ収集においても非常に有効なツールです。現在私どもでは自動飛行も利用し、より精度・効率のいいデータ収集を行っています。

おまけ・ドローン操縦時の注意点

最後に、ドローンを飛ばす際に気をつけている注意点をご紹介します。農薬散布、生育状況確認などの用途を問わず、ドローンを使ってみたいと思っている人はぜひ心に留めておいてください。

鳥の襲来には、まず逃げろ!

トンビ・カラスなどは、自分の制空権への侵入者とみなして排除しようと、ドローンを攻撃してきます。トンビはドローン上空を2、3回旋回して急降下してきます。

「この地域では鳥は見ないよ」と言われている土地でも、ドローン撮影をしていると飛んでくることがあり、関係者が驚く場面も多く見ています。

この時、決して鳥を追いかけたりしてはいけません。相手の方が飛ぶのはうまいです。私も3回に1回程度、鳥の威嚇を受けています。

とにかく、逃げましょう。

困ったらいったん上空に逃げて、体制を立て直せ!

狭いところや、木の枝・地面に近づきすぎ(でも着陸できるスペースがない)、飛行ルートに迷う時などは、いったん上空に逃げて体制を立て直しましょう。

その場は格好悪いかもしれませんが、まず安全第一で無理をしないこと。その経験が次に生きてきます。これもドローンを活用する上で非常に大事なことです。

<参考URL>
Optimal Second Sight
株式会社パーシテック
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WRITER LIST

  1. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  2. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX(現在登記準備中)を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  3. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  4. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  5. 藤本一志
    ふじもとかずし。大学・大学院の6年間を通して地域づくりと農業の活動に関わる。1年間のサラリーマン生活の後、学生時代から活動していた地域に移住し、2拠点居住を開始する。移住支援を通じた地域づくり活動に取り組む傍ら、兼業農家として稲作に取り組む。