スマートグラスが高齢農家にもたらすもの【富有柿農家のスマートグラス活用日記】

滋賀県北西部の高島市今津町で「富有柿」を栽培している柿農家の3代目、水尾学(みずおまなぶ)です。2代目である父の成(しげる)と共に、日々農業に励んでいます。

前回のコラムでは、センサーやドローンなどのIoTを取り入れて柿農園を受け継いだというお話をしました。

今回は、そんなIoT機器の中でも父親からの技術伝承に大きく貢献してくれた「スマートグラス」の導入から実際の運用に至るまでの過程をご紹介したいと思います。


言語を超えた“視覚的コミュニケーション”

父親は現在86歳と高齢で、徐々に足腰が悪くなってきています。調子のいい時は園地に出向いていますが、そうでない時も増えてきています。

本来なら、若い間に同じ園地で作業ノウハウを伝承しておくことが理想ですが、私の場合はそれはできなかったので、現在は園地にいる作業者(私)がスマートグラスを使って、自宅にいる父親からの指示により作業を覚えるかたちをとっています。


当初は音声を中心にした作業を行っていましたが、対象物が多くなると削除する果実を限定するのに時間を要し、誤認識することが増えてしまいました。口頭で素早く、間違いなく位置を指示・認識できるのは4つ程度(上下左右)の指示までです。それ以上になると、例えば、“上の列にある右から3番目”といった口頭でのやり取りが増え、確認する側も対象物を限定するまでに時間がかかってしまいます。

そこで、ビジュアルで判断できる指示機能のソフトウェアを利用して、スマートグラスに指示を出しております。指のマークで個体を指示したり、まとまった個数を削除する場合は赤い線で周囲を囲んだりといったかたちで、誰が見ても“一目瞭然”に間違うことなく作業指示を行えます。

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WRITER LIST

  1. 渡邊智之
    わたなべともゆき。一般社団法人日本農業情報システム協会(JAISA)代表理事、スマートアグリコンサルタンツ合同会社(SAC) 代表/CEO、総務省 地域情報化アドバイザー。大手IT企業に入社し、主に各種センサーによる生育関連データ蓄積及び作業記録アプリ等の開発を主導しつつ、農業法人に飛び込み農業を学ぶ。その後農林水産省でスマート農業推進担当として、政府のスマート農業関連戦略策定や現場の普及促進に努める。慶應義塾大学SFC研究所の研究員や、農林水産省や自治体のスマート農業に関する会議の有識者、座長としても参加。著書に「スマート農業のすすめ~次世代農業人【スマートファーマー】の心得~」(産業開発機構株式会社)がある。
  2. 三好かやの
    みよしかやの。しがないかーちゃんライター。「農耕と園芸」「全国農業新聞」等に記事を執筆。八王子市ユギムラ牧場でかぼちゃの「いいたて雪っ娘」栽培中。共著『私、農家になりました。』(誠文堂新光社)、『東北のすごい生産者に会いに行く』(柴田書店)等がある。http://r.goope.jp/mkayanooo
  3. 山口亮子
    やまぐちりょうこ。フリージャーナリスト。京都大学卒、北京大学修士課程修了。時事通信社を経てフリーに。主に農業と地域活性化、中国を取材。
  4. r-lib(アールリブ)
    これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている、をコンセプトにインタビュー記事やコラムなどを発信するメディア。r-lib編集長は奈良の大峯山で修行するために、毎年夏に1週間は精進潔斎で野菜しか食べない生活をしている。
  5. 水尾学
    みずおまなぶ。滋賀県高島市出身。大学卒業後、電子機器関連業務に従事。2016年に自家の柿農園を継ぐと同時に、IoT農業の実現を目指す会社、株式会社パーシテックを設立(京都市)。実家の柿農場を実験場に、ITを駆使した新しい農業にチャレンジしています。

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