日本最大の農業展示会「第9回農業Week」で見つけた注目アイテム<農業ロボット編>
2019年10月9日(水)~11日(金)、第9回農業Weekが千葉県幕張メッセで開催された。同イベントは、国際次世代農業EXPO、国際農業資材EXPO、国際6次産業化EXPO、国際畜産資材EXPOの4展で構成される展示会だ。スマート農業関連製品、植物工場、農業資材、加工品販売機器やサービスなど、テーマに沿った製品やサービスが展示されていた。
そんな農業Week展示物のなかから、編集部の注目アイテムを紹介していく。
今回は「農業ロボット編」だ。
就農者の減少と高齢化が同時に進行する日本において農業を持続的に発達させるためには、農業ロボットの進化は不可欠である。そこで本記事では、「
農業Week」に出展されていた農業ロボットを紹介してみよう。
最初にご紹介するのは、パナソニック株式会社が2015年より研究を開始し、現在も実証実験を続けている「トマト収穫ロボット」。
その狙いは、人の代わりに収穫を担うことで労働力不足を解消する、というもの。連続10時間の運転を目標として開発が続けられている。人間ではないから夜間にも作業が可能となる。
リアルタイムに収穫状況を把握できるのも本機の特徴である。同社ロボティクス推進室開発一課主幹の荒木秀和氏が解説してくれた。
「本機は畝と畝の間に通されたレール上を行き来します。カメラによりトマトを認識したら、AIにより、色、形、位置を正確に判断して、適期にあるトマトのみを選定して収穫します。
カラー画像で収穫適期のトマトがあることを判断し、赤外画像で適期であるかを判断、そして距離画像で収穫作業するトマトの位置を判断する、という仕組みです。この判断する、という部分にAIを活用することで、判断の精度が大幅に高まってきました。トマト全体が見えていないときの写真を見せて学習させることで、これまで見逃していた見づらい場所にある適期のトマトを収穫できるようになってきています。
トマトにキズをつけずに収穫する機能にも、工夫が凝らされているんですよ。トマトを収穫したことがある方ならご存知だと思いますが、トマトは無闇に引っ張っても収穫できません。そこで、トマトの実を引っ張りながら同時にエンドエファクタの先端が果梗を押すことで、果実を小果梗で切り離すようにしています。この小果梗はトマトの離層なので、簡単に実が外れるのです。こうすれば、小果梗の離層で、簡単に実が外れるのです。
また当社では、トマト収穫ロボット単体だけではなく、それを用いてスマート農業システム化することも目指して研究を続けています。本機は畝間を自動で動き回って収穫しますが、収穫カゴはやがて一杯になります。その時、自走して満杯のカゴと空カゴを自動で交換できるように、という機能を与える構想です。
また本機搭載のカメラ画像をもとに生育データの分析が可能になれば、品質向上や収穫予測にも利用できるようになります。こうしたシステム化が実現すれば、労働力不足を補うだけでなく、品質向上や収量増も可能になります」
荒木氏によると今後、対象作物を現在のトマトだけでなくイチゴやキュウリに拡げる計画があるという。さらに、よりロバストな収穫、つまり多様な生り方への対応を可能とすべく開発を続けるという。
本機は2~3年後の発売を目指しているというから、施設園芸の生産者は今後の動向をウォッチしておいてほしい。
人間と同じ2秒に1個の収穫が可能
続いてご紹介するのは、これから旬の季節を迎える栗の自動収穫ロボット「アーミィ」だ。
栗は地面に落ちた実を収穫するが、「アーミィ」の作業はまさにその人間が拾う作業の肩代わり。地面を観察するカメラによって栗を探し、下向きにつけられたアームがUFOキャッチャーのように、確実に栗を拾ってカゴに入れていく。開発元のS-Techno Factoryの酒井貴之氏にお話を伺った。
「茨城県の圃場でテストを実施しておりまして、パン屋のトングの大きいようなものでいがぐりと栗の実を集めて、満タンになったら1カ所にまとめていきます。
栗拾い自体は匠の人がやるともっと早いのですが、素人ですと1秒間に1〜2個くらい。人より遅かったらお金をかける意味がないですから現在はこの水準です。もっとスピードを上げることも可能なのですが、その分確実性が下がるのと、アームの動きがちょっと気持ち悪いと感じる人もいますので(笑)。見える範囲に栗がなくなったら前進して、また拾っていきます。障害物があっても、走行用カメラで認識して避けて通ります。
人を認識して追いかけることもでき、前で人が拾っていって、拾い残しをロボットが拾う、といった使い方もありますね。照明を追加すれば、夜中に自動的に拾うということも可能になります。
すでに量産化もできる状況で、価格はアームが100万〜150万円くらい、車体が40万くらいと、ハード的には200万円弱です。これ以外に品目に応じたAIの開発が必要です」
また、栗以外にも、拾うものを認識するAIがあれば応用は可能とのこと。空き缶などの場合は、つぶれないように最適なアームの力加減を実現しているという。また、農業分野での発展形としては、ロボットアームの先をロータリーカッターやブラシのようなものを使って雑草を駆除するといった活用方法も考えられるとのことで、農薬などを使わない自然農法にも応用できるかもしれない。
実用化された「inaho」のAIアスパラ自動収穫ロボットは
次にご紹介するのは、神奈川県鎌倉市に本社を置くベンチャー企業inahoの、自動野菜収穫ロボットだ。「SMART AGRI」でも取材しており、最近では一般誌やTVでも盛んに取り上げられているので、ご存じの方も多いことだろう。すでに実用化されている農業ロボットということで、あらためて紹介したい。
解説してくれたのは、佐賀県鹿島市にある拠点でエリアマネージャーを務める三浦良真氏だ。
「先日、実用化したのはアスパラガスを自動で収穫してくれるロボットです。畝と畝との間に敷いた白いテープを認識して前後に移動しながら、収穫に適したアスパラガスを認識して収穫します。収穫するときは、アームがアスパラガスに向かって伸びて行き、先端でグリップします。このグリップの下がカッターになっていて切断する、という仕組みです。
本体両側面にカメラを搭載しており、約1メートルの空間を撮影して、AIによりアスパラガスを見分けます。事前に収穫するアスパラガスの高さを設定できるので、未成長のアスパラガスを収穫してしまう、ということはありませんよ(笑)」
既報の通りロボットはすでに実用化されており、佐賀県太良町の農家で稼働している。気になるのは、その料金だろう。それは、収穫したアスパラガスの市場取引価格×重量の一部である。生産者側から見るとロボット本体を購入せず、リースされるかたちだ。
本機そのものを購入するとなると、生産者にとって初期費用とメンテナンス費用が大きな負担になる。また当然のことながら、本機はバージョンアップを図っている。リースという形態ならば、最新技術やパーツをメーカー側が自社所有物であるロボットに取り付ければいい。これなら生産者が金銭的負担を負うことはなく、メーカー側も継続的に性能向上を果たせる。
それまで人が担っていた作業をロボットが肩代わりすることで、人間は人間にしかできない他の作業を行うことができる。その結果として収量増を実現したら、その分メーカーの収入も増えていく。これはwin - winの関係性ができる仕組みと言える。
現在は写真のパネルにあるように、イチゴ、キュウリ、トマト、ナス、ピーマンを新たな対象作物に加えるべく開発を続けているという。それが実現したら、「inaho」のロボットは今よりはるかに身近な存在になるはずだ。
100kgの梨を自律収穫&自律走行
最後にご紹介するのは、銀座農園株式会社&株式会社ユニリタのブース。銀座農園はイノベーションとテクロノジーでスマート農業を推進するベンチャー企業、ユニリタはコスト削減やビジネス貢献につながる「課題解決の最適解」を提供するIT企業である。
両社の共同出展ブースで注目を集めていたのは、2020年5月に一般販売を予定しているスマートアグリ・モビリティ「FARBOT」だ。
銀座農園の代表取締役社長の飯村一樹氏が解説してくれた。
「『FARBOT』は自律走行することで人の代わりに荷物を運ぶモビリティであり、またAIによって農場データを分析することで農業経営を見える化する、スマートアグリ・モビリティです。
この形から皆さんが想像しやすいのは、荷物を運ぶ機能でしょう。追従モードと手動モードで収穫箱を2つ(合計100kg)運ぶことができます。またカメラとセンサー(温度・湿度、CO2濃度)を備えており、動き回ってそれらデータを取得することで、環境測定のほか、収穫個数判断、病害虫エリアを予測でき、薬剤散布機や捕虫機を搭載することで、それらの作業も可能となります。
さらに今後、施肥、草刈といった作業や、照度測定、収穫量測定、収穫適期判断といった機能を追加できるよう、開発を続けています。
当社は、ソフトロボティクスを通じて、人間とロボットが共生する社会の実現を目指しています。ソフトロボティクスというのは、聞きなれない言葉かもしれませんが、やわらかいロボットをイメージしてください。人と環境に対してソフトである、という意味があります。
物理的に軟らかければ、人と接触しても痛くありません。また人とロボットが共生する社会を実現するには、環境に対して優しいことが必須になります。『FARBOT』は2019年11月にパイロット販売を開始しますが、より人間と共生しやすい形に向けて、今後さらなる開発を続けて行きます」
銀座農園とユニリタが共同開発している、リモートセンシングによる梨の自律型収穫ロボットのプロトタイプ機も展示されていた。こちらを解説してくれたのは、ユニリタの代表取締役社長執行役員の北野裕行氏。
「AIによる果樹農業データプラットフォームを構築して、リモートセンシングによる自律型農業ロボットを実用化する、というプロジェクトで、銀座農園さんと当社とで共同開発しています。
福島県浜通りの産業再生を図る『福島イノベーション・コースト構想』の一環として経済産業省と福島県が推進する、ロボットを活用した地域復興実用化開発等促進事業に参画するものです。果樹農家の作業負荷を軽減しつつ、高品質な果実の生産規模拡大に貢献することが狙いです。
果樹農業データプラットフォームを担うのが当社です。自律型クローラーが取得する各種データと営農データを蓄積、それをAI分析することにより、データドリブン型の営農が可能となる、それが果樹農業データプラットフォームです。すでにAIの設計はほぼ完了しており、現在は練度を高めている段階にあります」
実機の担当は銀座農園だ。「自律型クローラー」というのは、モビリティとしての機能を示す。本機では、リモートセンシングによる極め細かな自律制御システムの開発を進めている。
また、梨を収穫するマニピュレーター部については、精密な動きが可能なハンド型ロボットを開発した。展示していたのは2018年に製造したプロトタイプだが、現在さらに小型・軽量化すべく、開発を進めているという。
両社では、このプロジェクトの成果を社会実装することを目指している。2021年には福島県浜通り地域の梨農家の20%に当たる28戸へ、2024年までに福島県の梨農家の10%にあたる116戸への導入を目標としている。さらに、2023年~2025年までに、収穫対象を5品目にまで拡大して、310戸への導入を目指すという。
トマト収穫ソリューション~AIで農業の人手不足解消へ~トマトを自動で収穫するロボットが活躍|パナソニック株式会社
inaho株式会社
S-Techno Factory
銀座農園株式会社
株式会社ユニリタ
そんな農業Week展示物のなかから、編集部の注目アイテムを紹介していく。
今回は「農業ロボット編」だ。
就農者の高齢化と減少に不可欠な農業ロボット
農業ロボット元年と言われた2018年には、農業ロボットの商品化と多様化が同時に進行した。そして2019年には、国内4メーカーの直進自動操舵搭載機が出揃った。当初は大型トラクターと田植機のみに搭載されていた機能が、コンバインや小型トラクターにも搭載された。就農者の減少と高齢化が同時に進行する日本において農業を持続的に発達させるためには、農業ロボットの進化は不可欠である。そこで本記事では、「
農業Week」に出展されていた農業ロボットを紹介してみよう。
AIを活用した施設園芸用トマト収穫ロボット
最初にご紹介するのは、パナソニック株式会社が2015年より研究を開始し、現在も実証実験を続けている「トマト収穫ロボット」。
その狙いは、人の代わりに収穫を担うことで労働力不足を解消する、というもの。連続10時間の運転を目標として開発が続けられている。人間ではないから夜間にも作業が可能となる。
リアルタイムに収穫状況を把握できるのも本機の特徴である。同社ロボティクス推進室開発一課主幹の荒木秀和氏が解説してくれた。
「本機は畝と畝の間に通されたレール上を行き来します。カメラによりトマトを認識したら、AIにより、色、形、位置を正確に判断して、適期にあるトマトのみを選定して収穫します。
カラー画像で収穫適期のトマトがあることを判断し、赤外画像で適期であるかを判断、そして距離画像で収穫作業するトマトの位置を判断する、という仕組みです。この判断する、という部分にAIを活用することで、判断の精度が大幅に高まってきました。トマト全体が見えていないときの写真を見せて学習させることで、これまで見逃していた見づらい場所にある適期のトマトを収穫できるようになってきています。
トマトにキズをつけずに収穫する機能にも、工夫が凝らされているんですよ。トマトを収穫したことがある方ならご存知だと思いますが、トマトは無闇に引っ張っても収穫できません。そこで、トマトの実を引っ張りながら同時にエンドエファクタの先端が果梗を押すことで、果実を小果梗で切り離すようにしています。この小果梗はトマトの離層なので、簡単に実が外れるのです。こうすれば、小果梗の離層で、簡単に実が外れるのです。
また当社では、トマト収穫ロボット単体だけではなく、それを用いてスマート農業システム化することも目指して研究を続けています。本機は畝間を自動で動き回って収穫しますが、収穫カゴはやがて一杯になります。その時、自走して満杯のカゴと空カゴを自動で交換できるように、という機能を与える構想です。
また本機搭載のカメラ画像をもとに生育データの分析が可能になれば、品質向上や収穫予測にも利用できるようになります。こうしたシステム化が実現すれば、労働力不足を補うだけでなく、品質向上や収量増も可能になります」
荒木氏によると今後、対象作物を現在のトマトだけでなくイチゴやキュウリに拡げる計画があるという。さらに、よりロバストな収穫、つまり多様な生り方への対応を可能とすべく開発を続けるという。
本機は2~3年後の発売を目指しているというから、施設園芸の生産者は今後の動向をウォッチしておいてほしい。
人間と同じ2秒に1個の収穫が可能
栗拾いロボット「アーミィ」
続いてご紹介するのは、これから旬の季節を迎える栗の自動収穫ロボット「アーミィ」だ。
栗は地面に落ちた実を収穫するが、「アーミィ」の作業はまさにその人間が拾う作業の肩代わり。地面を観察するカメラによって栗を探し、下向きにつけられたアームがUFOキャッチャーのように、確実に栗を拾ってカゴに入れていく。開発元のS-Techno Factoryの酒井貴之氏にお話を伺った。
「茨城県の圃場でテストを実施しておりまして、パン屋のトングの大きいようなものでいがぐりと栗の実を集めて、満タンになったら1カ所にまとめていきます。
栗拾い自体は匠の人がやるともっと早いのですが、素人ですと1秒間に1〜2個くらい。人より遅かったらお金をかける意味がないですから現在はこの水準です。もっとスピードを上げることも可能なのですが、その分確実性が下がるのと、アームの動きがちょっと気持ち悪いと感じる人もいますので(笑)。見える範囲に栗がなくなったら前進して、また拾っていきます。障害物があっても、走行用カメラで認識して避けて通ります。
人を認識して追いかけることもでき、前で人が拾っていって、拾い残しをロボットが拾う、といった使い方もありますね。照明を追加すれば、夜中に自動的に拾うということも可能になります。
すでに量産化もできる状況で、価格はアームが100万〜150万円くらい、車体が40万くらいと、ハード的には200万円弱です。これ以外に品目に応じたAIの開発が必要です」
また、栗以外にも、拾うものを認識するAIがあれば応用は可能とのこと。空き缶などの場合は、つぶれないように最適なアームの力加減を実現しているという。また、農業分野での発展形としては、ロボットアームの先をロータリーカッターやブラシのようなものを使って雑草を駆除するといった活用方法も考えられるとのことで、農薬などを使わない自然農法にも応用できるかもしれない。
実用化された「inaho」のAIアスパラ自動収穫ロボットは
多品種対応を目指す
次にご紹介するのは、神奈川県鎌倉市に本社を置くベンチャー企業inahoの、自動野菜収穫ロボットだ。「SMART AGRI」でも取材しており、最近では一般誌やTVでも盛んに取り上げられているので、ご存じの方も多いことだろう。すでに実用化されている農業ロボットということで、あらためて紹介したい。
解説してくれたのは、佐賀県鹿島市にある拠点でエリアマネージャーを務める三浦良真氏だ。
「先日、実用化したのはアスパラガスを自動で収穫してくれるロボットです。畝と畝との間に敷いた白いテープを認識して前後に移動しながら、収穫に適したアスパラガスを認識して収穫します。収穫するときは、アームがアスパラガスに向かって伸びて行き、先端でグリップします。このグリップの下がカッターになっていて切断する、という仕組みです。
本体両側面にカメラを搭載しており、約1メートルの空間を撮影して、AIによりアスパラガスを見分けます。事前に収穫するアスパラガスの高さを設定できるので、未成長のアスパラガスを収穫してしまう、ということはありませんよ(笑)」
既報の通りロボットはすでに実用化されており、佐賀県太良町の農家で稼働している。気になるのは、その料金だろう。それは、収穫したアスパラガスの市場取引価格×重量の一部である。生産者側から見るとロボット本体を購入せず、リースされるかたちだ。
本機そのものを購入するとなると、生産者にとって初期費用とメンテナンス費用が大きな負担になる。また当然のことながら、本機はバージョンアップを図っている。リースという形態ならば、最新技術やパーツをメーカー側が自社所有物であるロボットに取り付ければいい。これなら生産者が金銭的負担を負うことはなく、メーカー側も継続的に性能向上を果たせる。
それまで人が担っていた作業をロボットが肩代わりすることで、人間は人間にしかできない他の作業を行うことができる。その結果として収量増を実現したら、その分メーカーの収入も増えていく。これはwin - winの関係性ができる仕組みと言える。
現在は写真のパネルにあるように、イチゴ、キュウリ、トマト、ナス、ピーマンを新たな対象作物に加えるべく開発を続けているという。それが実現したら、「inaho」のロボットは今よりはるかに身近な存在になるはずだ。
100kgの梨を自律収穫&自律走行
センシングや薬剤散布まで見据えた「FARBOT」
最後にご紹介するのは、銀座農園株式会社&株式会社ユニリタのブース。銀座農園はイノベーションとテクロノジーでスマート農業を推進するベンチャー企業、ユニリタはコスト削減やビジネス貢献につながる「課題解決の最適解」を提供するIT企業である。
両社の共同出展ブースで注目を集めていたのは、2020年5月に一般販売を予定しているスマートアグリ・モビリティ「FARBOT」だ。
銀座農園の代表取締役社長の飯村一樹氏が解説してくれた。
「『FARBOT』は自律走行することで人の代わりに荷物を運ぶモビリティであり、またAIによって農場データを分析することで農業経営を見える化する、スマートアグリ・モビリティです。
この形から皆さんが想像しやすいのは、荷物を運ぶ機能でしょう。追従モードと手動モードで収穫箱を2つ(合計100kg)運ぶことができます。またカメラとセンサー(温度・湿度、CO2濃度)を備えており、動き回ってそれらデータを取得することで、環境測定のほか、収穫個数判断、病害虫エリアを予測でき、薬剤散布機や捕虫機を搭載することで、それらの作業も可能となります。
さらに今後、施肥、草刈といった作業や、照度測定、収穫量測定、収穫適期判断といった機能を追加できるよう、開発を続けています。
当社は、ソフトロボティクスを通じて、人間とロボットが共生する社会の実現を目指しています。ソフトロボティクスというのは、聞きなれない言葉かもしれませんが、やわらかいロボットをイメージしてください。人と環境に対してソフトである、という意味があります。
物理的に軟らかければ、人と接触しても痛くありません。また人とロボットが共生する社会を実現するには、環境に対して優しいことが必須になります。『FARBOT』は2019年11月にパイロット販売を開始しますが、より人間と共生しやすい形に向けて、今後さらなる開発を続けて行きます」
銀座農園とユニリタが共同開発している、リモートセンシングによる梨の自律型収穫ロボットのプロトタイプ機も展示されていた。こちらを解説してくれたのは、ユニリタの代表取締役社長執行役員の北野裕行氏。
「AIによる果樹農業データプラットフォームを構築して、リモートセンシングによる自律型農業ロボットを実用化する、というプロジェクトで、銀座農園さんと当社とで共同開発しています。
福島県浜通りの産業再生を図る『福島イノベーション・コースト構想』の一環として経済産業省と福島県が推進する、ロボットを活用した地域復興実用化開発等促進事業に参画するものです。果樹農家の作業負荷を軽減しつつ、高品質な果実の生産規模拡大に貢献することが狙いです。
果樹農業データプラットフォームを担うのが当社です。自律型クローラーが取得する各種データと営農データを蓄積、それをAI分析することにより、データドリブン型の営農が可能となる、それが果樹農業データプラットフォームです。すでにAIの設計はほぼ完了しており、現在は練度を高めている段階にあります」
実機の担当は銀座農園だ。「自律型クローラー」というのは、モビリティとしての機能を示す。本機では、リモートセンシングによる極め細かな自律制御システムの開発を進めている。
また、梨を収穫するマニピュレーター部については、精密な動きが可能なハンド型ロボットを開発した。展示していたのは2018年に製造したプロトタイプだが、現在さらに小型・軽量化すべく、開発を進めているという。
両社では、このプロジェクトの成果を社会実装することを目指している。2021年には福島県浜通り地域の梨農家の20%に当たる28戸へ、2024年までに福島県の梨農家の10%にあたる116戸への導入を目標としている。さらに、2023年~2025年までに、収穫対象を5品目にまで拡大して、310戸への導入を目指すという。
トマト収穫ソリューション~AIで農業の人手不足解消へ~トマトを自動で収穫するロボットが活躍|パナソニック株式会社
inaho株式会社
S-Techno Factory
銀座農園株式会社
株式会社ユニリタ
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