農産物検査の機械化でコメの等級や産地表示はこう変わる!【特集・農業の構造改革「農産物検査」の現状と未来 第2回】

第1回は、農産物検査規格の見直しの背景と経過を見てきたが、第2回は見直しの具体的な中身について見ていきたい。

検査規格見直しはニーズの多様化への対応

2021年(令和3年)5月、前年9月から8回行われた「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会」の「とりまとめ」が発表となった。


その中では、検査規格の見直しをすすめる理由として、「高齢化やライフスタイルの変化による食の外部化・簡便化」がすすむ中で、「消費者や実需者ニーズの多様化・高度化」への対応をすすめ、「関係者の連携・協働による新たな価値の創出」を推進することが必要であること、とりわけ国内市場で農林水産物・食品の消費減退が続く中で、今後は成長する海外市場にもしっかり売り込んでいくことが不可欠であることを挙げている。

その上で、この見直しによって農業者・事業者にとって米の栽培や販売などで多様な選択肢が提供され、農業者・事業者の創意工夫が発揮しやすくなり、検査に関する手間や負担も軽減される。

さらには、その新たな検査規格をスマートフードチェーンに活用し、新たなJAS規格を策定することで、米の付加価値も向上し、海外での日本産米売り込みに有利になる。その結果、米関連産業の健全な発展が促進され、農業者の所得向上にもつながることが期待されるとしている。

検討会のとりまとめでは、「機械鑑定を前提とした農産物検査規格の策定」のほかに、あわせて「サンプリング方法の見直し」や「スマートフードチェーンとこれを活用したJAS規格の制定」、「農産物検査証明における『皆掛重量』の廃止」、「銘柄の検査方法等の見直し」、「荷造り・包装規格の見直し」も行っていくことが示されている。

こうした課題のうち検査規格の技術的事項については、計測・標準化・米穀の専門家などによる「機械鑑定に係る技術検討チーム」を設置し、2021年内にその検討・整理をすすめることとされ、6月23日に第1回の会合が持たれている。

機械鑑定により「等級」から「数値」での評価へ


ここで「機械鑑定を前提とした農産物検査規格の策定」の具体的な検討項目について、さらに詳しく見ていきたい。

まずは、今回策定される「機械鑑定を前提とした規格」がどのような位置付けになるのかである。

これに関しては現行の検査規格と同列に位置付けされるとされる。つまり、従来の目視による検査制度は継続しつつ、新たに機械鑑定による検査制度が正式に立ち上がり、並行して運用されることになる。

機械鑑定による検査では、品位に関して従来のような等級区分はせず、新たに設定される規格項目について測定結果を数値で示すことになる。ただし、機械で測定が難しい項目については、一定水準以下であることの表示(例えば「適格」など)になるという。

目視による農産物検査でも玄米の水分量は水分計で測る(提供:新潟県さくらや農園)

これにより、農産物検査を受けない原料玄米についても、今後は機械鑑定による幅広い検査データなどが活用できるようになる。

こうした機械鑑定の測定値を活用して、どのように米穀を評価するのかについては、基本的にはそれぞれの用途などに応じて民間が定めていくものとしている。とはいうものの、当面は国が機械測定の数値と品質との関係などに関してガイドラインで目安を示すことになる。

検査に使用する穀粒判別器に関しては、原則として民間の検査機関が性能確認を行って認定することになる。これに関しても民間の体制が整うまで、当面(3~5年程度)は国が行うという。

また、その穀粒判別器の性能確認については、国の指定要件を満たした試験機関で作成された試料標準品を用いて、国が定める試験方法によって目視と同等以上の検査水準にあることを確認する必要があるとされるが、これに関しても民間の試験機関の体制が整うまで、当面(3~5年程度)は国が行うとしている。

機械鑑定で設定する規格項目については、玄米を精米にする際の歩留まりや品質の重要な指標となる以下の9項目となる予定だ。

  1. 容積重
  2. 水分
  3. 白未熟粒
  4. 死米
  5. 着色粒
  6. 胴割粒
  7. 砕粒
  8. 異種穀粒
  9. 異物

機械鑑定においては、これらすべての規格項目について数値で証明することになるが、機械による測定が困難な項目については目視による鑑定が行われる(ただし、用途や品種の特性を踏まえ、特定の項目の証明を省略することができる)。

これらの規格項目については、「機械鑑定に係る技術検討チーム」により、2021年内に、

  1. 機械鑑定における規格項目(白未熟粒・容積重等)の定義の明確化
  2. 測定機械の精度検証用のツール(試料)の作成
  3. そのツールを活用した測定機械の精度検証
  4. 標準計測方法等の設定
  5. 測定結果の表示方法など農産物規格規程(平成 13 年農林水産省告示第 244 号)等の改正

が行われることになる。

なお、検査結果については、検査済みの証明として米袋や紙に印刷される検査証明書に記載されるだけではなく、農林水産省の共通申請システムを活用して、検査証明書などに記載されたID番号やQRコード、ICタグなどからスマホやウェブ、機械端末を通じて証明事項を表示・活用することができるようにする予定で、2021年(令和3年)産米の検査から順次適用していくとしている。

さらに、農業データの連携基盤を活用するなどして実需者・流通事業者などが検査結果を参照できる仕組みを構築し、2023年(令和5年)産米の検査からの適用を目指すとしている。

以上が、機械鑑定にあたっての規格策定に関する方向性であるが、新たな機械鑑定のための規格制定により、検査現場の負担増大を招かないようにする必要がある。そのため、国では機械鑑定の規格に対応したマニュアルの整備や研修などを実施するほか、サンプリング方法の見直しや電子化の推進など、総合的に農産物検査の簡素化・合理化をすすめていくとしている。


消費者が選びやすくなるための食品表示制度見直し


農業競争力強化支援法(2017年8月施行)を踏まえて策定された「規制改革実施計画」(2020年7月閣議決定)の中では、農林水産分野の計画として「農産物検査規格の見直し」が位置づけられ、同時に「農産物検査を要件とする補助金・食品表示制度の見直し」も行うことが示された。

これを受けて、機械鑑定による農産物検査の導入検討と歩調を合わせる形で、2021年3月、食品表示制度を管轄する消費者庁では食品表示基準を改正し、玄米や精米の食品表示制度を見直した。この見直しにより、消費者の選択に資する情報であれば、消費者に訴求したい情報を一括して表示欄に記載することが可能になった。

これにより、従来の農産物検査を受けていなくても、機械鑑定による検査項目の数値などに関する根拠資料を保管することを要件に、2021年(令和3年)産米から産地や品種、産年の表示ができるようになった。

そのほか、「農産物検査証明による」といった表示事項の根拠確認の方法についても表示が可能になり、さらに生産者名など、消費者が食品を選択する上で適切な情報(生産者名や保存方法、食味の分析データ、品評会等での受賞歴など)を一括で枠内に表示できることになった。

ただし、そうした表示が義務表示事項と紛らわしい表示とならないこと、また消費者に誤認を与えない表現であることが条件となっている。なお、栄養成分や熱量に関する表示は食品表示基準で定める表示方法に従うことになる。

お米売り場に機械鑑定を経た玄米の精米製品が、新たな表示によるパッケージで並ぶ日も近い?

民間主導でのJAS規格の活用も視野に


今後、こうした食品表示制度の改定と相まって、機械鑑定による客観的な検査データをもとにして、海外市場をも見越した新たな「日本農林規格」(JAS規格)が必要とされる。

これに関しては、先の「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会」のとりまとめの中でも、「スマートフードチェーンとこれを活用したJAS規格の制定」として打ち出されており、農林水産省もこうしたJAS規格が民間主導で制定されることを積極的に支援するとしており、今後の展開が注目される。

JAS規格も海外市場を見据えて国際規格化に向けた見直しが行われている(農林水産省「JAS制度の見直し」より)

第3回は、「進化する穀粒判別器等による農産物検査」と題して、穀物判別器による検査の実際やAI画像解析等による次世代穀粒判別器の開発に向けた動きを追ってみたい。

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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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