青果物流の改善にパレットとフレコンの普及を【窪田新之助のスマート農業コラム】

農産物の産地がいま大きな危機感を抱いているのは「2024年問題」だ。労働基準法の改正により、物流業界では2024年4月1日からドライバーの時間外労働時間の上限が年間960時間に規制される。物流業者は違反すれば、「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科せられる。

このため遠隔地の産地は既存の物流の仕組みのままでは、従来通りの質と量を保ちながら農産物を消費地に届けることがほぼ不可能になる。



「手荷役」軽減の鍵はパレット化とフレコン化

農産物の物流の大きな課題は荷物の積み下ろしの際に人の手を介する「手荷役」が多いこと。

たとえば野菜や果物であれば、産地でひとつひとつの段ボールをトラックに積み、卸売市場で降ろすのが当たり前。手間と時間がかかることから、作業を負わされるドライバーに敬遠されている。放置すれば、農産物を運んでくれる物流業者は減るだけだ。

JA全農がその軽減のために普及を始めたのがパレット。段ボールはレンタルパレットに載せたまま一度も取り崩すことなく、産地から卸売市場に輸送する。

コメの物流改善ではフレキシブルコンテナ(フレコン)の普及を図る。フレコンとは1t前後が入る大袋。全国での普及率は30kgの小袋と半々である。2024年までにフレコンの割合は60%に上げる。


資材追跡のデータプラットフォームを構築へ

さらにパレットもフレコンも仕様を統一することで、全国のいずれの産地でも使えるようにする。そのために大事なことは、これらの資材を1カ所に長いこととどめておくのではなく、必要な時に必要な場所に届いている仕組みをつくることだ。一部の卸売市場や産地でパレットやフレコンが産地に戻されず、積んだまま放置してある事態は避けたい。

そのためにパレットではRFIDを、フレコンでは二次元コードを活用して、移動の履歴をたどれるようにする。

もちろん農業界における「2024年問題」はこうした取り組みだけ解決できる話ではない。長時間輸送に耐えられるようなコールドチェーンの構築やモーダルシフト、あるいはそもそもの輸送先を従来よりも近い場所にしていくという決断までも求められている。

荷物を受け取る側も対処が必要だ。たとえばドライバーが入場する日時を予約できるシステムの導入がそれだ。物流業者によれば、現状は卸売市場の入口で1~3時間待たされることはざらだと聞いている。ドライバーがオンライン上で事前に入場する時間を予約することで、滞りのない荷受けにつながるはずだ。

2024年までに残された時間は決して多くはない。


輸入フレキシブルコンテナについて | JA全農
https://www.zennoh.or.jp/flecon/index.html

【コラム】窪田新之助のスマート農業コラム
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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  2. 槇 紗加
    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  3. 沖貴雄
    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  4. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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