日本の食料基地・北海道が直面する物流問題の憂うつ【窪田新之助のスマート農業コラム】
食料基地としての北海道にとって、最大ともいえる懸念材料は物流だ。複数の要因から従来の物流体制を大幅に再編することが求められている。
生産した農畜産物と加工品の45%を都府県に輸送している北海道。農畜産物だけに限れば、道外から都府県に輸送される量は年間350万tに及ぶ。その輸送形態は量の多い順にトラック、JR貨物、船便となっている。
北海道は府県よりもトラックによる幹線貨物輸送から海運や鉄道の輸送に切り替える「モーダルシフト」が進んできた。それでもトラックの利用が最も高い。だからこそ農産物の流通関係者は将来にわたる「ドライバー不足」を深刻な事態として受け止めている。
というのも、鉄道貨物協会が2014年5月に公表した「大型トラックドライバー需給の中・長期見通しに関する研究調査」によると、2030年度は2020年度と比べてトラックドライバーが18%減少するとしているためだ。
さらに懸念すべき事態として、「青函共用走行問題」がある。計画では、北海道新幹線は2030年に終着駅が現在の新函館北斗駅から札幌駅にまで延伸される。その場合、新幹線は今よりも高速で走行する。貨物列車は新幹線とすれ違うと、貨物が揺れて落下する恐れが生じる。それを避けるには、貨物列車はダイヤの変更をしなくてはいけない。
合わせて問題になりそうなのが「並行在来線問題」だ。新幹線の延線に向けて、函館線の並行在来線を廃線にする可能性が浮上している。実現すれば、貨物列車は走れなくなる。このほかJR北海道の経営上の問題から、貨物列車が走る3区間についても廃線の危機が指摘されている。
以上の事態の影響で、貨物列車が使えなくなる産地では、自然と船舶での輸送が増えていく。その場合、産地で荷を積んだトラックの輸送先は、貨物列車が停車している駅から、より遠方の港湾に変わる。
ただ、先に指摘した通り、ドライバーはこれから急激に減っていくことを踏まえると、貨物から船舶へのモーダルシフトもすんなりといきそうにない。
当たり前だが、以上の話は農畜産物に限ったことではなく、あらゆる荷物に関係することである。そこで気にすべきは、農畜産物が運んでもらえる荷物になっているかどうかだ。
段ボール箱はパレットを使わず「バラ積み・バラ出荷」のままだったり、米袋はフレコンを使わず紙袋のままだったりしていないか。
今後、物流環境が悪化することは避けられない。それを当たり前と受け止めながら、運送業者から運んでもらえる荷物にすることが、産地には最低条件として求められている。
問題が山積みの北海道の物流環境
生産した農畜産物と加工品の45%を都府県に輸送している北海道。農畜産物だけに限れば、道外から都府県に輸送される量は年間350万tに及ぶ。その輸送形態は量の多い順にトラック、JR貨物、船便となっている。
北海道は府県よりもトラックによる幹線貨物輸送から海運や鉄道の輸送に切り替える「モーダルシフト」が進んできた。それでもトラックの利用が最も高い。だからこそ農産物の流通関係者は将来にわたる「ドライバー不足」を深刻な事態として受け止めている。
というのも、鉄道貨物協会が2014年5月に公表した「大型トラックドライバー需給の中・長期見通しに関する研究調査」によると、2030年度は2020年度と比べてトラックドライバーが18%減少するとしているためだ。
貨物列車による輸送が大幅減少する可能性も
さらに懸念すべき事態として、「青函共用走行問題」がある。計画では、北海道新幹線は2030年に終着駅が現在の新函館北斗駅から札幌駅にまで延伸される。その場合、新幹線は今よりも高速で走行する。貨物列車は新幹線とすれ違うと、貨物が揺れて落下する恐れが生じる。それを避けるには、貨物列車はダイヤの変更をしなくてはいけない。
合わせて問題になりそうなのが「並行在来線問題」だ。新幹線の延線に向けて、函館線の並行在来線を廃線にする可能性が浮上している。実現すれば、貨物列車は走れなくなる。このほかJR北海道の経営上の問題から、貨物列車が走る3区間についても廃線の危機が指摘されている。
以上の事態の影響で、貨物列車が使えなくなる産地では、自然と船舶での輸送が増えていく。その場合、産地で荷を積んだトラックの輸送先は、貨物列車が停車している駅から、より遠方の港湾に変わる。
ただ、先に指摘した通り、ドライバーはこれから急激に減っていくことを踏まえると、貨物から船舶へのモーダルシフトもすんなりといきそうにない。
“運んでもらえる荷物”にする努力を
当たり前だが、以上の話は農畜産物に限ったことではなく、あらゆる荷物に関係することである。そこで気にすべきは、農畜産物が運んでもらえる荷物になっているかどうかだ。
段ボール箱はパレットを使わず「バラ積み・バラ出荷」のままだったり、米袋はフレコンを使わず紙袋のままだったりしていないか。
今後、物流環境が悪化することは避けられない。それを当たり前と受け止めながら、運送業者から運んでもらえる荷物にすることが、産地には最低条件として求められている。
【コラム】窪田新之助のスマート農業コラム
- 現状の輸出統計に意味はあるのか【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 秋田県がスマート農業で実現する、コメから小菊への転換と生産規模拡大(後編)
- 秋田県がスマート農業で実現する、コメから小菊への転換と生産規模拡大(前編)
- 経済事業の立て直しに迫られるJA【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 種子法廃止のから騒ぎ【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 「科学者の心」を持って自ら考えてほしい 〜遺伝子組み換え技術の議論【窪田新之助のスマート農業コラム】
- データ栽培管理により反収増を実現したゆめファームの今年の成果【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 日本の食料基地・北海道が直面する物流問題の憂うつ【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 従業員の定着を図る「作業分解」という考え方【窪田新之助のスマート農業コラム】
- パレットを返却しない青果物流通の常識を変えよう【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 青果物流の改善にパレットとフレコンの普及を【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 麦わらのストローで脱プラ。農家らがプロジェクトを始動【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 資本主義の変容とこれからの農業 【窪田新之助のスマート農業コラム】
- キュウリの反収アップに連なる「土は根を生やす培地」という考え
- 年収1000万円を捨てた脱サラ農家の夢
- 集落営農法人は「3階建て方式」の時代へ
- バリューチェーン構築のためのデータ利用を【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 収量を高める根の力 【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 10aの収入試算が18万円となった「みのりのちから」
- 「あまおう」増産の鍵はどこにある!? 【窪田新之助のスマート農業コラム】
- キュウリ農家によるAI自動選別機の最新版【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 1万5000俵のコメを評価する「頭脳」【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 農業ベンチャーによる生産管理と物流制御を可能にしたシステムとは?〜農業総合研究所【中編】
- 国内最大の事業協同組合が求めた小麦「みのりのちから」の魅力と可能性
- トラクターと作業機のデータ連携により、相関関係が見える農業の実現へ
- 小麦の品質評価基準はなぜ変わるのか
- あらためて問う、鳥獣害対策
- 東京で生産量日本一の農産物? 新宿で広がる「内藤とうがらし」
- 「減反政策は終わった」という暴論
- 農作物の体調を“リアルタイム”で診断する新技術とは?
- 農業に転用したい自動運転技術「LiDAR」とは?【窪田新之助の農業コラム】
- 米穀店も稲作経営を始める時代【窪田新之助の農業コラム】
- 醸造用ブドウの品質向上にスマート農業を活かす「信州ワインバレー構想」〜長野県高山村の例
- 「Kintone」による地域運営 ──島根県益田市【窪田新之助のスマート農業コラム】
- 農家目線で開発された開水路用の自動給水機の現地実証 〜横田農場の例
- センサーの向こうにある野菜の本質とは何か──NKアグリの例<後編>
- ニンジンの機能性はいつ高まるのか? ──NKアグリの例<前編>
- 農家の負担を減らす最新農業用ロボット【窪田新之助のスマート農業コラム】
- スマート農業の先にあるもの【窪田新之助のスマート農業コラム】
- いまなぜスマート農業なのか【窪田新之助のスマート農業コラム】
SHARE