何かと物要りな就農! 補助金を申請してみた【農家見習い・さわちんの「リアルタイム新規就農日記」第18回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。さわちんと申します。

現在38歳で、妻と小学生の子ども2人の4人家族です。

前回は、記念すべき第1回のチンゲンサイの収穫と出荷の模様をお伝えしました。思い返せばいろんなことがありましたが、無事に農家としての第一歩、自分で栽培した野菜で売上を作ることができました。

もちろん今回の売上だけでは、まったくもって赤字です。1週間分の生活費にも届きません。もっともっとたくさん栽培して、もっともっとたくさん出荷する必要があります。

今は、私がかんきつアカデミーに通っているため、チンゲンサイの栽培には、限られた時間しか費やせませんが、卒業後はユズの栽培も含め、本腰で取り組むことになります。

本格的に農業を始めてからの収益などもお伝えできればと思いますので、末永くお付き合いください。

さて今回は、就農するうえで、自治体から得られるさまざまなサポートのうち、主に補助金のことについて、お伝えしようと思います。

というのも4月から、「はい、農業スタート! 」になるわけですが、今はチンゲンサイの収益があまり多くないのと(第17回の記事をご覧くださいね)、ユズの収穫と出荷は11月頃になるので、あれ、お金ないんじゃない? という現実がすぐ目の前にやってきたのでした。

そこで、就農前に調べていた、自治体からのサポートを受けよう! と考えたわけです。自治体のサポートを受けるために、改めて農水省のホームページなどを調べてみると、難しい言葉がたくさん並んでいて、何が何やら……ちんぷんかんぷん。

そんなさわちんでも、各県に設置されている「農業支援センター」の担当の方に助けてもらいながら進めることで、無事書類作成が完了しました!

その経験が参考になればうれしいなと思います。今回は、独立就農の方の参考にしかならなさそうですが、ご容赦くださいね。


大きな支え「農業次世代人材投資資金 ~経営開始型~」


まずは、この補助金が一番助かるのではないでしょうか。ざっくりいうと、新規就農者に農業経営が安定するまで最長5年間、年間最大150万円を支給してくれます。私のように妻と一緒に就農する場合は、家族経営協定を結ぶことで、1.5倍にあたる年間最大225万円が支給されます。

しかし、誰にでも給付してくれるわけではなく、いくつかの要件をクリアする必要があります。

農水省のページに定義が記載されていますので、まずは読んでみてください。


ページ中ほどの、「経営開始型」という箇所です。なんだか、わかったようなわからないような感じになりますので、私の独断と偏見で要約してみますね。

要件1:原則49歳以下であること


これからの担い手になってもらいたいという意図から、年齢制限があるようです。

要件2:認定新規就農者であること


ここが重要と思います。まず認定新規就農者になるには、「青年等就農計画」を市町村に提出し、承認をもらう必要があります。

青年等就農計画
この「青年等就農計画」の作成が結構大変。5年後のビジョンとそこに至るまでのプロセスを、決められたフォーマットに落とし込んでいく必要があります。本格的に農業を始めていないし、そんなのわかんないよ……となりがち(私も超不安でした)ですが、ご安心を。

農業支援センターの方が開催する、作成についての講座もありますし、しっかりとした見本も用意されています。計画の核となる、5年後の農業所得の目標についても、農業支援センターの方が作成した、指標をもとに作成することができます。

イラスト:ヤマハチ
さらに周りの先輩就農者の方に話を聞きつつ、自分ならどうするかを考えていれば、あっというまに作成完了! 添削も、農業支援センターの方にお願いできるので、私の場合、逆にしっかりとした目標づくりの機会となり、作ってよかった! と思うようになりました。

要件3:雇用されている、生活保護を受給しているなどの生活費の支給を受けていない。


これも当たり前といえば当たり前ですが、会社から給料をもらっていたり、農業以外の国からのサポートを受けていないことが前提となります。

要件4:交付期間終了後、交付期間と同期間以上、農業を継続する


これは給付の要件ではないのですが、給付を受けた期間以上に農業を続けないと、資金を返還する必要があります。返還について条件があるのも、この補助金の特徴です。

農業で生計をたてていくんだ! という強い思いを持っている人であれば、何も気にすることはないのですが……。

これは農業支援センターの方に教えてもらったのですが、残念ながら過去に、お金をもらうだけもらって、農業をやめてしまった方が何人もいたのだそうです。そういったことを防ぐためにこの返還の条件が追加されたとか。また、給付の審査も年々厳しくなっているそうです。ちょっと悲しいですよね。

他にも細かな要件はありますが、しっかりと就農を目指している人であれば、クリアできるようなことばかりですよ。


無利子でお金を借りられる! 「青年等就農資金」

こちらについては、私は申請していないので、手続きについてはあまり詳しくありません。ごめんなさい。農業支援センターの方に教えてもらった内容をざっくり説明しますね。

農業を始める際、トラクターなどの大型機械を購入したり、ビニールハウスを新設したりするなど、一度に大きな出費が必要な場合もあります。

その際に、前述した「認定新規就農者」になっていれば、最大3700万円の融資を無利子で受けることができます。しかも返済は、農業収入が安定するであろう、就農5年後からスタートしてもよいといううれしい特典があります。

ただし、日本政策金融公庫からの融資となるので、給付までに時間がかかるという注意点があるそうです。そのため、給付を前提にする場合、しっかりとした計画を練る必要がありますね。


支援を受けて、夢に向かって前進!

いかがでしたか。特に「農業次世代人材投資資金 ~経営開始型~」の補助金については、若い世代の新規就農者において、受給することは必須だと思います。夫婦で就農する場合、5年間で1000万円程度の補助金を受けられる制度なので、しっかりと活用させていただく所存です!

次回は、かんきつアカデミーに通うさわちんだから知る、いろんな種類の美味しいかんきつをお伝えしたいと思います。ちょっと時期は過ぎてしまうと思いますが、永久保存版ということでご容赦ください(笑)。では、お楽しみに!


農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)
https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html

【農家コラム】さわちんの「リアルタイム新規就農日記」
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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