お米選びから始めるSDGs。環境負荷の少ないお米って、どんなもの?

最近、「SDGs(エスディージーズ)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。SDGsは“Sustainable Development Goals”の略で、日本語にすると「持続可能な開発目標」となります。“2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標”として17のゴールが掲げられており、すべての国連加盟国が取り組むべき世界的な命題とされています。

私たちの毎日の消費行動は、意図しようとしまいと、SDGsにつながります。しかし、そのことに実感を持てない人も少なくないのではと思います。そこで、この記事では、身近なSDGsである「環境保全型農業」や「環境保全米」について基本的な知識をまとめてみました。あなたのSDGsの理解の助けになればうれしいです。


SDGsとはどんなもの?


SDGsという言葉が生まれた背景には、世界の貧困や飢餓やエネルギー問題などが限界を迎えている状況があります。日本に暮らす私たちも人類の一員として危機感を共有し、子孫らのためにアクションを起こすことが求められています。

SDGsは消費者にも責任ある行動を求めている


SDGsには17のゴールがあります。それぞれの説明は割愛しますが、中でも日本の食農分野に特に関連が強いのは、12番、14番、15番です。

12 つくる責任 つかう責任:持続可能な消費と生産のパターンを確保する
14 海の豊かさを守ろう:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
15 陸の豊かさも守ろう:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
引用元:国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所

自然と関わりの深い農林水産業は、生物資源や天然資源を直接利用する産業です。世界人口を養えるだけの安定した食料生産はもちろんのこと、気候変動への対処や生態系保全という重要な役割も担っています。

特筆したいのは12番目の目標「つくる責任 つかう責任」です。商品や資源の生産者だけでなく消費者側にも責任を求め、私たちが商品や資源を生産、消費する方法を変えることが、経済成長と持続可能な開発を達成するために必要だと説いています。

つまり、SDGsの達成のためには、生産者が持続可能な生産方式をとることだけでなく、流通や消費者がその商品・製品を選択し無駄なく利用することも、同じくらい重要と考えられているのです。

農業って、環境にやさしくないの?


農業には自然と共に生きるようなイメージがあるかもしれませんが、農業自体は本来自然環境と相反する関係にあります。

畑も水田も自然に構築されることはなく、作物は人為的な選抜・交配を繰り返して今日の形質に進化してきました。畑を開墾すればその地の生態系は破壊され、人間の手で本来そこになかった資源や生物が運び込まれます。

化学肥料や農薬が使われる時代になってからは、農業による環境汚染や健康被害が引き起こされたことがありましたが、1960〜70年代には改善され始めました。安全な食べものを求める生産者や消費者が市民運動として有機農業を提唱し、1990年代には国の政策の中に「環境保全型農業」という言葉が登場。全国的に環境にやさしい農業を推進する流れが生まれました。

環境保全型農業とは?


環境保全型農業とは、農業の持つ物質循環機能を生かし環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業のことです。食料・農業・農村基本法(1999年)には「農業の自然循環機能が維持増進されることにより、その持続的な発展が図られなければならない」と書かれ、その後もいくつかの法律が作られて、持続可能な農業生産方式が制度化されてきました。

消費者に馴染みのある制度としては、「有機JAS」や「特別栽培農産物」「エコファーマー」などの認証制度があります。それぞれ程度の差はあれ、農薬や化学肥料の使用量を抑えた、いわゆる「環境にやさしい農業」を実践する生産者を後押しする制度となっています。

つまり、環境にやさしい農業は、人間が努力してこそ得られるものなのです。


お米えらびにもSDGsを


日本の農業生産では環境保全型農業の基盤がすでに整えられています。では、消費者の側はどうでしょう。環境を直接意識して食料品を選んでいる人は、まだまだ少ないように感じます。

生活のすべてをSDGsなものばかりで揃えるのは困難です。しかし、毎日の食料を、可能な分だけ環境保全型農業で作られたものに変えるだけなら、それほど難しいことではありません。

たとえば、毎日食べるお米。米はスーパーでも商品棚が広く確保されているカテゴリーであり、有機JASマークや特別栽培米表示がついている商品も容易に見つけられることと思います。インターネットを使えば、さらに多様な「環境にやさしいお米」を見つけることもできます。

環境にやさしいお米のいろいろ


環境保全型の生産方式でつくられたお米は「環境保全米」と呼ばれています。単に消費者の安心安全のために農薬や化学肥料を低減しているのではなく、地域の生態系や景観を守ることや、地球温暖化抑止などの目的がセットになっているのが特徴です。

■希少生物と共生する稲作

絶滅危惧種や希少動植物を保護する目的で環境保全米を生産・販売する事例は各地にあります。

「コウノトリ育むお米」はコウノトリの生息地である兵庫県豊岡市が取り組む「コウノトリ育む農法」で育てられたお米です。コウノトリの餌となる水生生物の個体数を多く保つために、農薬削減と共にほぼ1年中水田に水がある状態が保たれています。

新潟県佐渡市の「トキひかり」や神奈川県茅ヶ崎市の「湘南タゲリ米」なども希少生物との共生を目的とする環境保全米のひとつです。

「トキひかり」は、国指定特別天然記念物のトキが暮らす生態系を保護する目的で不耕起栽培を行う水田でとれたお米。「湘南タゲリ米」は、タゲリという神奈川県で絶滅危惧II類に指定されている渡り鳥が飛来する田園環境を保護するため、地域で生産されたお米を買い取り販売する取り組みです。

■里山生態系や景観の保全につながる棚田米

棚田米とは、山の斜面に作られた階段状の棚田で栽培されたお米です。現代まで残る棚田の多くは、豊かな自然環境と清浄な水に恵まれ、希少な動植物が棲む里山生態系の一部を構成しています。

高齢化や過疎化で存続が危ぶまれる棚田環境を維持するため、お米を販売するだけでなく、観光や地域作りとセットで取り組む事例が目立ちます。「四谷の千枚田(愛知県新城市)」の米作りと地域振興をセットで行う取り組みや、「大山千枚田(千葉県鴨川市)」の棚田オーナー制度などがあります。

■水田からのメタンガス発生量を減らす栽培方法の研究も

水田は温室効果ガスであるメタンガスの発生源でもあります。水田からのメタン発生量を減らすことは、地球温暖化の抑制につながると考えられています。中干し期間延長や、稲わらをすき込む時期を早めることで、メタンガス抑制に効果があるとの研究成果が報告されています。特定の銘柄・ブランドではないものの、隠れた環境保全米として知っておきたい知識です。

スマート農業により農薬・化学肥料を削減した米

最先端のスマート農業で生産されたお米を買うことも、環境保全の一助となり得ます。

日本では今、農業の担い手が減る一方で、農業経営体の大規模化が進みつつあります。大規模経営体では、農業用ドローンや衛星画像のデータ等を活用するスマート農業を導入することで、生産の効率化と共に環境保全型農業を実践することも可能になります。ドローンで圃場の中の必要箇所だけにピンポイントで農薬や肥料を散布すれば、環境への化学物質の流出を最小限に抑えることができます。

スマート農業の普及率はまだまだ十分とは言えませんが、中山間地などの生産効率が良くない場所でも少ない農家数で農地を守り、里山環境を維持していくために有効な技術と考えられます。


小さな選択も、積もれば大きな力に


日本人1人あたりの米消費量は、年間約50〜60kgほどです。令和2年産米の10a(1000㎡)あたりの収量は535kgだったので、私たちは1年にだいたい水田1a分のお米を食べている計算になります。対して、日本の水田の耕地面積は令和2年統計でのべ237.9万haでした。

自分1人が環境保全米を選んだからといって、その地球環境に与える効果はほとんどないと思うかもしれません。しかし、たとえば東京都の人口1396万人全員が環境保全米を選べば、約14万haもの水田を環境保全型農業に変えることができると考えることもできます。

SDGs達成は豊かな地球環境を子孫に受け継ぐための喫緊の課題であり、1人ひとりが責任を持って選択し消費することの積み重ねが大きな力となります。あなたも毎日の食べもの選びから、SDGsに貢献する生活をはじめてみませんか。



■スマート農業で農薬や肥料の使用量を抑えた安心・おいしい「スマート米」

全国各地のこだわりの農家さんと、スマート農業でお米づくりをしている「スマート米」は、先進のIT技術を利用し、農薬や肥料の使用量を最小限に抑えて育てたお米です。特別栽培米や残留農薬不検出のお米も。各地のおいしい銘柄をラインナップしています。白米と同じように手軽に炊ける無洗米玄米もあります。お求めはスマート米オンラインショップ SMART AGRI FOOD  からどうぞ。

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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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