いま改めて知りたい「お粥」の魅力とは?お粥研究家・鈴木かゆさん聞きました【食の達人インタビュー】

お粥」といえば、離乳食や病気のときに食べるイメージがある方も多いのではないでしょうか。

しかし、最近ではお粥専門店が注目されたりと、普段の食事に料理のひとつとして取り入れる楽しみ方が広がってきています。

私たちがまだ知らない食の魅力を聞く「食の達人インタビュー」シリーズ。

今回は、お粥研究家・鈴木かゆさんにお粥の魅力や、楽しみ方をうかがいました。



コロナ禍に始めたお粥作り


鈴木さんはお粥好きが高じ、お粥研究家として日々SNSやブログでお粥の情報を発信しています。自身のインスタグラムにはほぼ毎日お粥レシピを投稿! 真っ白で味気ない従来のお粥のイメージからは程遠い、カラフルで楽しいお粥の写真がずらりと並びます。

▲鈴木かゆさんのインスタグラムには色とりどりの目にも楽しいお粥が並ぶ(引用:https://www.instagram.com/kayu_szk/

そもそも鈴木さんが毎日お粥を作り始めたのは、3年前のちょうど新型コロナが流行り始めたころ。在宅の時間が増え、ゆっくりごはんを作るようになったからだそう。

「お粥って作り始めると結構放置している時間が多くて、在宅勤務中でも調理しやすいのがよかったんです。パソコンしながらでもちょっと見ておけば大丈夫なので、時間はかかってもラクに作れるんですよね


お粥の基本的な作り方は材料を鍋に入れたら30分~1時間くらい火にかけて待つだけ! たしかに気軽に作れる料理です。

「もうひとつのきっかけが、新型コロナが流行った最初のころにスーパーなどで食材がなくなったこと。これからずっと明日のごはんどうしようって考え続けるのかなと、私にとっては不安が大きかったんです。

でもお米だったら保存も効きますし、お粥なら少量で膨らむ。それに、卵でも小松菜でも何か具材を入れるだけですごく表情が変わるのも魅力です。それからお粥が自分にしっくり来て、楽しくなって続けられています」

コロナ禍の先が見えない不安は誰でも経験したこと。お米と水と塩があれば作れるお粥は、いざというときに頼れる存在でもあったんですね。



朝お粥を食べたから大丈夫って思える


こうしてお粥にハマり、毎朝のお粥作りを始めた鈴木さん。放置していれば作れてしまうとはいえ、朝にゆっくり時間をとるのは結構大変な気もしますが……。

「お粥は決して時短料理ではなくてひと手間かかるんですが、それがいいなって私は思っています。自分のための時間というか、朝からこんなふうにお粥作って贅沢だなって(笑)。

どんなときでも、お粥をまず朝ごはんに据えれば、とりあえず朝は毎日豊かな気持ちで楽しめる。ラジオ体操じゃないですけど、朝お粥を食べたから大丈夫、って思えるんです。お粥を食べて一日がスタートすると、人生も穏やかになる気がしますよ」

コポコポと煮立つお粥の音や、立ちのぼる白い湯気を眺めていると、流れる時間もゆっくりとして穏やかな気持ちになれそう。




実はこんなに自由! お粥の世界


鈴木さんが考えるレシピには、白がゆや卵がゆといった王道のお粥はもちろん、時にはお菓子を組み合わせたものまで、ワクワクするようなお粥が登場します。レシピの数はなんと700! そのアイデアはどこから湧いてくるのでしょうか。

▲ひなまつりに合わせて、ひなあられをのせた「ひなあられのせ豆乳粥」
(引用:https://twitter.com/kayu_szk/status/1631473895164514304

「フレンチ料理屋やラーメン屋さんに行ったときでも、お粥に合わせたらおいしそうとか常に考えてます。あとは、気になったワードは何でもお粥と掛け合わせて検索してみたり。例えば、土×お粥とか!(笑)。日々過ごす中で出会うものはすべてお粥につなげているんです(笑)」


「そもそもお粥はとっても自由です。材料にしても、穀物や米粉を使ったものまでさまざま。生米から作るものだけでなく、炊いたごはんから作る“入れがゆ”もあります。

味つけも薄いものばかりではなく、タイやベトナムにはばっちり旨みのきいた濃いお粥も。よくあるごはんとしてのお粥以外にも、甘いスイーツのようなお粥や、奄美大島の“冷やし小豆粥”のように冷たいお粥もおいしいですよ

生米から作るのが正解と思いこんでいましたが、ごはんから作るお粥もあると聞き、一気に身近な存在に。スイーツや冷たいお粥もぜひ食べてみたい!




やってみて! おすすめのお粥の食べ方


さっそくお粥が作りたくなってきたところで、これからお粥を楽しんでみようかなと思っている方に向けて、鈴木さんイチオシの食べ方を教えてもらいました。

ひとつが、お米の違いによる食べ比べ! お米の品種によって味が大きく変わるのもお粥の魅力で、実はお粥にしたほうが湯気にお米の香りがよくのるのだそう。

「お米の食べ比べも、お粥のほうが香りやねばりの違いがよくわかります。普通の白米の食べ比べよりも味に違いが出るのでおすすめですよ」


そして、もうひとつがレトルト粥を使った「かゆなべ」。レトルトの白粥に、中華だしと魚やお肉、野菜などを入れて食べ進めるお鍋です。食べるごとにお粥に具材のうまみが染みわたり、どんどんおいしくなるのだそう。まさに粥フォンデュ! レトルトで簡単に作れるのもうれしいですね。

▼詳しい作り方はこちら
粥鍋のレシピ おかゆでしゃぶしゃぶ!レトルト粥でたのしむ毋米粥
https://okayuworld.com/recipe/kayunabe/


「お粥好き?」から「どのお粥が好き?」にしたい


鈴木さんのお話を聞き、お粥の印象も大きく変わってきましたが、世間では薄味なもの、病気のときに食べるものといったイメージがまだまだ根強い……。鈴木さんは一年前に“研究中”から“お粥研究家”となり、もっとお粥のポジティブな面を広めていきたいと、お粥の啓蒙活動にさらに力を入れています。


「日本では生まれて初めて食べるのがお粥で、体が弱ったときに食べるのもお粥。人生の最初と最後にお粥を食べるんです。だからこそ、人生の途中でもお粥をもっと楽しんでもいいですよね。

これからお粥研究家として世の中のお粥のイメージをもっとポジティブにしていきたいです。お粥がひとつの料理の選択肢となって、“どの”お粥が好き? って会話ができるようになったらうれしいですね!」

想像以上に自由で柔軟で優しい世界が広がっていたお粥。日々に少し疲れたら、お粥をじっくり作ってみるのもいいかもしれません。好きな食材と合わせて、オリジナル粥を考えてみるのも楽しそう。

今回ご紹介いただいたおすすめの食べ方も参考に、あなただけのお粥ライフを楽しんでみてはいかがでしょうか?



お粥研究家お気に入りの道具たち


最後に、お粥作りに欠かせない鈴木さんお気に入りの調理道具や器を紹介いただきました。



鈴木さんが愛用しているのはジオ・プロダクトの厚手のふた付き鍋。

「この鍋は、おいしくできる、お粥向きというところ以外にも、ネジを使わない作りになっている&フタの段差がなめらかな作りになっていることで、洗い物がすっごく楽だというところもあります。無水調理もできるし、伝導率もよくて保温性もあるのにそんなに重くなく、とても便利ですよ」

土鍋を使うこともあり、こちらはとろみがよく出ます。ちなみに、おいしいお粥作りにかかせないのは「対流」だそう。


お気に入りの器は、栃木県の三毳山(みかもさん)の土で作られた「みかも焼」。

「荒々しい切り出し感と色味の素朴さが食材と馴染むんですよね。食材ってまんまる! とか、まっすぐ! っていうものはないはずで、だから『みかも焼』のゆがんだ感じやゴツゴツした感じ、そういう飾らなさが食材と合わせた時に馴染むのかなと思います」

また、食べる際は、鍋→大きな器→食べる用の小さな器、という取り分け式がおすすめとのこと。お粥を食べているうちにサラサラとした食感になってしまうことがあると思いますが、それは唾液に含まれるアミラーゼ(消化酵素)によってでんぷんが分解されてしまうことが原因。取り分け式であれば、シャバシャバになることなく、お粥を最後までおいしくいただけます。


おかゆワールド.com
https://okayuworld.com/
鈴木かゆさん インスタグラム
https://www.instagram.com/kayu_szk/
鈴木かゆさん Twitter
https://twitter.com/kayu_szk


取材:編集部
鈴木かゆさん撮影:齋藤 葵

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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