「米粉をもっと気軽に使ってみて」米粉マイスター・平沢あや子さん【食の達人インタビュー】

私たちがまだ知らない食の魅力を聞く「食の達人インタビュー」シリーズ。今回は、SMART AGRIで米粉や玄米粉を使ったレシピが好評の料理家・米粉マイスターの平沢あや子さんです。

平沢さんは、2023年2月末、赤坂に焼き菓子テイクアウト専門店「ahoui.(アウィー)」をオープン。スコーンや米粉を使ったシフォンケーキなど、こだわりの焼き菓子を提供しています。

そんなお店にお邪魔し、米粉の魅力や料理家として大切にしていることなどをうかがいました。



焼き菓子のテイクアウト専門店をオープン


──本日はお店にお邪魔しました。ビル1階の少し奥まったところにあって、隠れ家のようでほっと一息つけるお店ですね。


「将来的にのんびりできるカフェをやりたいなと思っていたところ、ちょうどこの場所が空いていたのでオープンしました。お店には1人で立っていますし、機械も1つしかないので、ひっそりゆったりとやっています」



──今日はシフォンケーキとクッキーが並んでいますね。どれもおいしそうです。


「日替わりでシフォンケーキやスコーン、クッキーなど3~4種類の焼き菓子を用意しています。お菓子は営業中にも焼いて、少しずつ増えていきますよ。コーヒーとカフェラテも提供しているので、セットで買って行かれる方が多いですね」

──焼き菓子専門店ですが、こだわりはありますか?

「焼き菓子って、卵、油、牛乳、お粉とシンプルな素材が多くて、シフォンケーキもスコーンも分量が変わるだけ。シンプルだからこそ、シフォンケーキは米粉を使い、他のお菓子も添加物をほぼ入れないで、きび糖を使用したりして体に優しく作っていますよ」



▲ロゴ入りのカップも素敵。店名の“ahoui.(アウィー)”はフランス語で軽い相槌を意味しているそう


もっと気軽に使ってほしい! 米粉の魅力とは?


──米粉マイスターの資格をお持ちの平沢さん。お店のシフォンケーキにも米粉を使われていますが、米粉の魅力はどんなところにありますか?

「小麦アレルギーの方が食べられるのはもちろん、米粉は小麦よりも消化にいいので、胃の負担が少ないのうれしいですね。一番は何といってもダマができないから、振るう必要がなくてラクです!」

──ダマができないのはうれしいですね!

「そうなんです。中でもお菓子類が失敗なく使えるので好きですね。小麦粉の代わりとして考えてもらって大丈夫ですし、変わりなく作れます。お菓子って混ぜすぎてはダメなレシピもあったりしませんか? そういう時にも米粉が使いやすいです」

──他の粉類との違いはあるのでしょうか?

「仕上がりとして、小麦粉はさっくりですが、米粉はしっとりもっちりとなります。パン作りは仕上がりが全く違った感じになるので注意が必要ですが、お菓子なら小麦と変わりなく使えるので初心者の方にもおすすめです!」

▲「ahoui.」の米粉シフォンケーキをいただきましたが、小麦とは違ったふわふわもちもち食感にびっくり
──そもそも米粉マイスターになるきっかけは何かあったのでしょうか?

「もともとは友人のお子さんが小麦アレルギーだったこともあり、一緒に勉強してみようとなったのがきっかけでした。

ただ、米粉は今でこそパンやお菓子、レシピ本もたくさん出ていますけど、そのころはどうしてもアレルギーを持っている方だけが対象という感じで、まだそんなに知られておらず、おいしいイメージがなかったんですよね」

──たしかにアレルギーをお持ちの方が代替品として使用しているようなイメージでした。

「米粉をもっと広めるためにも、アレルギーの方だけでなく、みんなが日常的に食べるものとして米粉を使いたくて……。

熊本に米粉に力を入れている熊本製粉さんという製粉メーカーがありまして、そこで米粉のイベントを開催したときも、アレルギーの方だけではなく、グルテンフリーが大好きという人もいれば、生活に米粉を取り入れたいという人もいたり。本当にいろんな人が集まったんです」

──普段から米粉を取り入れたいという方がたくさんいらっしゃったんですね。

「そうなんですよ。そこで私も、卵や牛乳も使って、そこに粉類として小麦粉の代わりに米粉を使う、そんなレシピを紹介しています。そのほうが誰でも取り入れやすいですよね。

最近はスーパーでもお菓子用やパン用など種類がたくさんあります。ぜひ気軽に取り入れてみてほしいですね」



レシピも食卓も“シンプル”に


──続いて平沢さんご自身のお話もお聞きできればと思いますが、このお仕事をされるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

「もともとは駅の窓口業務をしていたのですが、小さいときから料理が好きだったのもあり、フードコーディネーターという資格があるのを知って学校に通い始めました」

──駅で働かれていたとは意外でした!

「そうなんです(笑)。学校には仕事をしながら週1ぐらいで通っていました。

その後、結婚で退職し、子育ても落ち着いたころに、フードコーディネーターの資格もあるし、料理で仕事ができたらと本格的に始めました。ちょうど料理ブロガーが流行っているときだったので、ブログをコツコツと続けていたらお仕事のお話をいただくようになりました」

──フードコーディネーターのお仕事はどんなことをされているのですか?

「レシピ制作が多いですね。 調理器具に同梱するレシピを作ることも多いです」

──SMART AGRIでも多くのレシピを紹介いただいていますが、平沢さんのレシピは手順が簡潔なのもうれしいです。すぐできそうなのでやってみようと思えます。

「実はそれを目指しています! 自分でもそうなんですが、工程が少ないほうが気軽に作れますよね。長いと読むだけで大変ですし……。材料も身近なもので作れるように心がけてます。買ってくるとなるとまたそこでハードルが上がってしまうので」

──作る前から躊躇してしまいますね(笑)。

「私自身もめんどくさがり屋なので(笑)。できるだけ簡単においしいものが作れるほうがいいなと思っています」

──レシピのお写真も綺麗ですよね。意識されていることはありますか?

「特に意識せず、工程はキッチン、出来上がりはテーブルの上で自然光で撮るくらいで、“自分の好きな感じ”です。

テーブルコーディネートも前はいろいろ並べていたのですが、ごちゃごちゃとするよりはシンプルに、が私には合っていると感じています」

新米がもっとおいしくなるご飯のお供!かんたん「大葉味噌」のレシピ より
──料理を引き立てるような器も素敵です。

「料理の撮影で自分が用意する時もあるので器は結構持っていますが、置き場に困るので最近は厳選してます(笑)。

家にある普段使う食器はシンプルに全部白ですね。白がやっぱり一番選びやすいですし、柄があるものといってもちょっと凹凸があるくらいで。使いやすいので気にいってます」




お米は毎日おうちで精米


──最後に、普段の食卓のお話もお聞きしたいのですが、平沢さんはやはりお米派ですか?


「お米が好きです! 田舎の実家から送ってもらうのですが、昔ながらの天日干しで作っているお米でして。農家さんが昔からやっているわけではなく、昔のお米が食べたくてわざわざ昔ながらの方法を始めたそうです」

──機械乾燥が主流の中、天日干しのお米ですか!

「やっぱり香りが違っておいしいですね。玄米のまま送ってもらって、毎回食べる分だけ家で小さな精米機を使って精米してます。息子が2人いるんですが、1人1回に1合以上食べるので毎日精米してますね(笑)。息子たちもお米で育ったのでお米が大好き。白いお米だけで食べていますよ」

──お家で精米もされているんですね! 

「実はお米専用の冷蔵庫もあるので、精米後はそこで保管しているんです。鮮度もおいしさも保たれますよ」

──お米専用の冷蔵庫まであるなんて、炊飯もこだわられていますか?

「ルクルーゼや土鍋などを使って、ガスで炊くと香りがやっぱりいいですね。炊飯器よりもちょっと手間はかかりますが、10分火にかけて10分蒸らす、で出来るので、意外とラクで簡単です。もちろん時間がない時は炊飯器も使いますよ!」

──炊飯器も使われるとお聞きして、ほっとしました(笑)

「無理はせず、使い分けていきたいですよね」




※※※

平沢さんのこれまでのレシピ記事はこちらから読めます。米粉や玄米粉を使ったレシピの他、たまごかけごはんアレンジや玄米+味噌汁のかんたんだけど栄養満点な献立など、シンプルでラクにできるレシピをぜひ試してみては。

また、平沢さんのお店「ahoui.」のお菓子のラインナップは日替わりとなるので、Instagramをチェックしてから行ってみてくださいね。

焼き菓子テイクアウト専門 ahoui.(アウィー)
住所:東京都港区赤坂三丁目10-6 LuLud AKASAKA 1階 (THE TABACCOさん奥)
赤坂見附駅出口10 徒歩2分
赤坂駅1番出口 徒歩5分
営業時間:11:00頃〜16:00
OPEN:月、火、木,金
公式Instagram
https://www.instagram.com/ahoui_cafe/

取材:編集部
平沢あや子さん撮影:齋藤 葵

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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