まだ間に合う! 田植え前に再確認したい土づくり・圃場整備の4つのポイント

春の農作業が本格化する4〜5月。育苗や機械の準備に追われるなかで、「圃場の準備はこのままでよいだろうか……」と気にかかる場面もあるのではないでしょうか。田植えが近づくほど、「今から手を入れても遅いかな……」と判断に迷いがちです。

実際、田植え後に「水が抜けにくい」「苗の活着にムラがある」「作業機が動かしにくい」といった小さな違和感が見えてきて、その後の管理負担につながることもあります。

ですが、今の時期に大切なのはやれていないことを後悔したり無理に作業を増やすことよりも、今の圃場の状態を整理・把握しておくこと。1年後を見据えて、田植え前に押さえておきたいポイントを、現場の視点からチェックリストとしてまとめてみました。



田植え前の準備が作業に与える影響


田植えは、限られた期間に多くの工程が重なる作業です。苗の仕上がり、天候、水の管理、機械の段取りなどが複雑に関係するため、事前の準備がその後の作業の進み方に影響します。

田植え後の圃場で見られるトラブルのなかには、苗の活着のばらつき、田面の水深の不安定さ、作業機の走行しにくさ、代かき後の水の動きにくさなど、事前の圃場条件が関係しているケースもあります。

忙しい時期はこうした課題の確認を後回しにしがちですが、その結果として補植や水管理の手間が増えることもあります。

今のうちに圃場の状態をひと通り確かめておくことで、作業の見通しを立てやすくする一助になります。

田植え前に確認したい圃場準備チェックリスト


では、今年の田植えを迎える前に、自分の圃場で見落としている箇所がないかをチェックしてみましょう。

□ 1. 土壌と施肥の状態を把握できているか


多忙な時期は、例年通りの施肥設計で進めることも多いものです。ただ、前年の収穫状況や作型によって、圃場の条件は少しずつ変わることがあります。

この時期に改めて整理しておきたいのが、今年の土壌条件と施肥のバランスです。過去に行った土壌診断結果や施肥の履歴、元肥の量や種類、圃場ごとの土質や収量傾向といった情報を並べてみるだけでも、今年の圃場の判断材料になります。

農林水産省は、主要作物の土壌診断基準を示しており、土壌の状態を踏まえた施肥管理の考え方を整理しています。 (参考:都道府県施肥基準等|農林水産省

今から設計を大きく変えるのが難しくても、現状を把握しておくことで、その後の追肥や水管理の判断をしやすくなります。

□ 2. 排水・水管理に不安要素はないか


圃場管理のなかでも、特に作業性に影響しやすいのが排水の状態です。思うように進まないと、代かきや田植えのタイミングが読みづらくなり、作業日程の組み立てに苦慮することになります。

確認としては、明渠(表面排水溝)が埋まっていないか、排水口や水口に詰まりがないか、暗渠の出口周辺に異常がないか、といった点が挙げられます。

冬の間に土砂や植物残渣がたまっていることもあるため、排水口まわりを見ておくだけでも、水のトラブル解決につながります。大規模な改修ではなく、いずれも短時間で見られますので、できる範囲だけでも確認しておきましょう。

□ 3. 田面は均平状態を維持できているか


田面に高低差があると、苗の活着や水管理だけでなく、機械の走行性にも関わります。また、水深が安定しにくくなり、植え付け深さのばらつきの原因にもなります。

今できることとしては、圃場の中で凹凸が目立つ場所、水がたまりやすい場所などを把握すること。そして、今年対応する範囲と来年以降に回す範囲を整理しておくこと。これで今後作業すべき優先順位が見えやすくなります。

均平作業を徹底しようとすると、時間もコストもかかります。そのため、今年は影響が出やすい場所を優先するという考え方も、現場に合った選択肢の一つです。

□ 4. 畦畔・圃場周辺の最低限の整備ができているか


畦畔の整備は、水管理のしやすさや作業の安全性にも関わる部分です。

畦畔の崩れ、水口まわりの雑草、通路のぬかるみやすさなどは、日々の見回りや機械の出入りに影響します。こうした箇所があると、作業そのものよりも、移動や確認に時間がかかってしまいます。

すべての畦畔を同じ水準で整えるのではなく、水口の周辺や機械が出入りする場所など、作業頻度の高い場所から優先して見ていくほうが、作業の段取りがスムーズに進められるでしょう。



作業を抱え込みすぎないための方法


上記4つのチェックポイントの中に万全ではない部分があったとしても、圃場条件や経営規模、作業者の人数によっては、すべて自分で行うのが難しいことも。そのような場合には、リスクになりそうなポイントだけ外部へ委託するといった考え方もあります。

人員も時間も足りない中で大切なことは、どの作業を自分で担い、どの作業を分担したほうが無理が少ないかを判断することです。体力、時間、天候リスクまで含めて考えると、一部を分けて進めるほうが経営全体の見通しにつながることもあります。

小さな確認が、その後の管理を支える


田植え前の準備は、必ずしも大きな作業ばかりではありません。今年の圃場がどのような状態にあるかを確認し、今できることとできないことを割り切る判断も必要かもしれません。

これまで挙げた土壌や施肥の状況、排水や水口の状態、田面の凹凸、畦畔の使い勝手。こうした項目を一度ひととおり確認しておくだけでも、今年最も忙しい時期の判断が楽になるはずです。

経験に基づいた見方を土台にしながら、今年の圃場を改めて見渡してみる。田植え前の小さなチェックの積み重ねが、今年の農作業に少し余裕を持たせることにつながります。


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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