KSASコンバイン×乾燥機連携でコメの品質を均一化──株式会社RICEBALL(後編)

秋田県大仙市の株式会社RICEBALLは、70haを超える水田で稲作をしながら、そのコメを使ったおにぎりの製造と販売を自社の直営店「ONIGIRI ICHIGO」で手掛けている。場所は東京・代官山と兵庫県は阪神電鉄の沿線などにある計7店舗。

着実に店舗を広げてこられたのは味、とくにコメに自信があるから。株式会社クボタの「KSAS(クボタ スマート アグリシステム)」に対応したコンバインを乾燥機と連動させ、一定品質以上のコメを安定して供給している。


選別機のふるいは2mm、コンバインでのタンパク値は6%以下に

同社のおにぎりには他社にはない特徴がいくつもある。ひとつは米穀選別機で2mmのふるいにかけている点。これだけ大きな網目にすると歩留まりは低くなる。ただ、おにぎりにしたときのおいしさが違うという。


「とくに冷めたときにはっきりわかる。他社のおにぎりよりおいしい」と鈴木貴之社長。ふるい下のコメは1.9mmで再び選別し、通常の主食用米として出荷する。

ほかの特徴を挙げれば、品種は自社生産の「あきたこまち」。さらにタンパク値はKSASコンバインで収穫した時点で6%以下にしている。タンパク値の多寡は言うまでもなく食味に影響し、低いほどうまいとされている。

乾燥機でのばらつきをなくす

では、タンパク値が6%以下のコメをおにぎり屋に安定的に出荷するにはどうすればいいのか。ここで登場するのがKSASだ。


前回紹介した通り、KSASに対応したコンバインは「食味&収量センサー」を内蔵し、現状では収穫と同時に田1枚当たりの水分率とタンパク値の平均値がクラウドで管理できるようになっている。それらのデータはコンバインの操縦席前の画面に表示されるほか、オペレーターが持っているスマホやタブレット、事務所のパソコンなどからも閲覧できる。

RICEBALLはクボタからの依頼で、このデータを乾燥機と連動させる試験を重ねてきた。RICEBALLが所有する乾燥機は5基。稲刈り時期には何台ものコンバインが稼働する中、各乾燥機のもみの充填率、水分率、タンパク値が、タブレットやスマホでリアルタイムでわかるようになっている。


すると何ができるか。全体の作業を取り仕切る統括責任者は、事務所のパソコンで5基の乾燥機の中身の状態を確認。同時に、田から乾燥機に収穫物を運搬中のコンバインを操縦する従業員に対し、いずれの乾燥機に投入させるかを指示できるのだ。

KSASに対応したコンバインで刈り取ったばかりだから、社員の誰もがその荷台にあるもみの水分率とタンパク値は把握できている。統括責任者はそのタンパク値を見て、ほぼ同じタンパク値や水分率の乾燥機に入れるように指示すればいいわけだ。タンパク値がほぼ同じになるなら品質が安定するし、水分率がほぼ同じなら乾燥時間が少なくて済む。


鈴木社長は今後、おにぎり屋の店舗数は現状のままに維持しながら、代わって店舗当たりの売上を増やしていくことを検討している。具体的には各店舗で予約注文を受け、おにぎりを企業の食堂などに卸していく。KSASを使いながら、安定的に品質の良いコメが提供できるのではないかと考えている。

<参考URL>
株式会社RICEBALL
株式会社クボタ
KSAS クボタ スマートアグリシステム


KSAS対応コンバイン「DYNAMAX ER6120」
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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